土地活用の一環として、ビルの建設を考えている人は、実際の建設費がいくらになるのか気になるところでしょう。
本記事では、ビル建設費の相場と共に、建設費の計算方法を紹介します。また、ビル建設による土地活用ならではの特徴や、ビル建設にかかる費用シミュレーション例も解説します。
【階数別のビル建設費の目安】
階数 | 鉄骨造(S造) | 鉄筋コンクリート造(RC造) | 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) |
---|---|---|---|
3階建て | 1億7,664万円 | 2億544万円 | 2億3,232万円 |
4階建て | 2億3,552万円 | 2億7,392万円 | 3億976万円 |
5階建て | 2億9,440万円 | 3億4,240万円 | 3億8,720万円 |
6階建て | 3億5,328万円 | 4億1,088万円 | 4億6,464万円 |
7階建て | 4億1,216万円 | 4億7,936万円 | 5億4,208万円 |
8階建て | 4億7,104万円 | 5億4,784万円 | 6億1,952万円 |
9階建て | 5億2,992 | 6億1,632 | 6億9,696 |
10階建て | 5億8,880万円 | 6億8,480万円 | 7億7,440万円 |
30階建て | 17億6,640万円 | 20億5,440万円 | 23億2,320万円 |
40階建て | 23億5,520万円 | 27億3,920万円 | 30億9,760万円 |
(建築面積:64坪、鉄骨造:92万円/坪、鉄筋コンクリート造:107万円/坪、鉄骨鉄筋コンクリート造:121万円/坪で試算しています。)
ご自身の土地に建てられるビルの建設費の見積もりをしたい方は、以下のフォームからご依頼ください。大手建築会社の建築プランを一括で取り寄せられます。
その他、土地活用方法について詳しくは以下の記事もご覧ください。
ビル建設費の相場
ビルの建設費は、「坪単価×建築するビルの延べ床面積(坪)」の計算式で概算できます。
この章では、ビルの構造と種類、地域という3つの観点をもとにビル建設費の坪単価について解説します。
ビルの構造別の坪単価
ビルの建設費の坪単価は、より丈夫な構造で建築するほど高くなる傾向があります。以下は、国土交通省が発表している「建築着工統計調査」をもとに建設費の坪単価の平均額を計算したものです。
- 鉄骨造(S造):約92万円/坪
- 鉄筋コンクリート造(RC造):約107万円/坪
- 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造):約121万円/坪
参考:国土交通省「建築着工統計調査(2023年)」
※上記の建築坪単価は過去のデータから算出した平均額です。個別のケースにおいては、必ず見積をお取りください。
ビルの建設費を概算したい場合は、坪単価と建築するビルの延べ床面積をかけ合わせましょう。
たとえば、建ぺい率80%、容積率500%の80坪の土地に、建築制限の上限いっぱいの規模でビルを建てるなら、1フロア64坪の6階建てのビルが建築できます。建築費の目安を計算すると、以下の通りです。
- 鉄骨造(S造):3億5,328万円
(92万円/坪×64坪×6階) - 鉄筋コンクリート造(RC造):4億1,088万円
(107万円/坪×64坪×6階) - 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造):4億6,464万円
(121万円/坪×64坪×6階)
ビルの種類と坪単価相場
ビルの建設費は、建築するビルの種類(用途)によっても坪単価が異なります。なぜなら、ビルの種類や高さによって、建設するビルに求められる耐震性や設備が異なるからです。
そのため、同じ広さの土地にオフィスビルとテナントビルを建てるのとでは、坪単価が異なります。
一般的なオフィスビル
企業が入居する、10階建て位までの一般的なオフィスビルの構造別の坪単価相場は以下の通りです。
ビルの構造 | 坪単価相場 |
---|---|
鉄骨造(S造) | 80~100万円/坪 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 90~110万円/坪 |
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) | 100~120万円/坪 |
オフィスビルは、ワンフロア全体を企業に貸し出すために、柱を減らすなど構造の設計を工夫して建設します。そのため、次に紹介するテナントビルよりも建設費がかさみやすく、坪単価相場が高くなっています。
テナントビル(雑居ビル)
店舗や企業の事務所など様々な業種のテナントが入居するビルの構造別坪単価は以下の通りです。
ビルの構造 | 坪単価相場 |
---|---|
鉄骨造(S造) | 75~90万円/坪 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 70~85万円/坪 |
オフィスビルと比べて、衛生上・防火上の制限が大きい一方で、小規模な建物が多いため、坪単価相場が比較的安くなっています。
高層オフィスビル
数十階建ての超高層オフィスビルとなると、一般的なオフィスビルよりも強固な構造で建築する必要があるため、建設費が高騰します。
個人がオーナーとなって高層オフィスビルを建設するケースは稀ですが、以下に坪単価相場をご紹介します。
ビルの構造 | 坪単価相場 |
---|---|
鉄骨造 | 100~120万円/坪 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 110~130万円/坪 |
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) | 120~160万円/坪 |
地域による建築費相場の違い
ビルの建設費は、建てる地域によっても坪単価が異なります。
以下は、一部の都道府県ごとの構造別坪単価を表にしたものです。
鉄骨造 (S造) | 鉄筋コンクリート造(RC造) | 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) | |
---|---|---|---|
北海道 | 66万円 | 77万円 | 129万円 |
宮城県 | 71万円 | 77万円 | 82万円 |
東京都 | 117万円 | 124万円 | 110万円 |
神奈川県 | 85万円 | 74万円 | 67万円 |
愛知県 | 66万円 | 89万円 | 152万円 |
大阪府 | 81万円 | 85万円 | 128万円 |
広島県 | 85万円 | 100万円 | 65万円 |
福岡県 | 66万円 | 86万円 | 137万円 |
出典:「令和3年度 建築着工統計調査 都道府県別、構造別/建築物の数、床面積、工事費予定額」(国土交通省)を参考に編集部が作成
※建築坪単価は一例です。個別のケースにおいては、必ず見積をお取りください。
都道府県別の建設費では、都心部に近づけば近づくほど坪単価が高くなっていく傾向があります。
鉄骨造(S造)の坪単価をみてみると、東京都では117万円/坪、福岡県や北海道では66万円/坪となっており、都心部の方が坪単価が高くなっています。
なお、神奈川県のSRC造の坪単価が低かったり、広島県のRC造の坪単価が高いのは十分にデータが取れなかったことが考えられます。
ビルの建設費は、土地に建てられるビルの規模に大きく左右されます。
ご自身の土地でどのようなビルが建てられるか、費用の目安がいくらぐらいになるのかは、複数の建築会社のプランを取り寄せて比較して調べてみましょう。以下のフォームから、ビルの建設費を一括見積できます。
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ビル建設による土地活用の特徴
ビルを建設して経営することは、マンションなどの賃貸住宅経営と比べると、共通点も異なる点もあります。
ここではビル建設による土地活用の特徴について詳しく説明します。
- 収益性の高い賃貸経営ができる
- スケルトン私が主流
- 建設協力金方式を利用できる
- 景気の影響を受けやすい
- 相続税対策もできる
収益性の高い賃貸経営ができる
ビル経営は、賃貸住宅経営よりも賃料を高く設定できるため、より多くの収益を期待できるというメリットがあります。
三鬼商事のオフィスマーケットによると、東京のオフィスビル平均賃料は19,741円/坪(2023年10月時点)になっています。
以下は主要都市の賃料相場(円/坪)になります。
【主要都市のオフィスビル賃料相場(円/坪)】
東京 | 大阪 | 横浜 | 名古屋 | 福岡 |
---|---|---|---|---|
19,741円 | 11,954円 | 12,615円 | 12,300円 | 11,499円 |
仮に東京で3階建て、各階60坪ほどの事務所が入るビルを経営したとすると、想定賃料は以下の通りです。
毎月、約355万円ほどの賃料収入が得られます。(※必要経費などは除く)
また、ビル経営は一般的な賃貸経営と比べて空室率が低い傾向にあります。
三鬼商事のオフィスマーケットによると、東京でのオフィスビルの空室率は6.1%(2023年10月時点)となっています。
国土交通省が公表している「平成30年住宅・土地統計調査の集計結果(住宅及び世帯に関する基本集計)の概要」によると賃貸物件の全国的な空室率は18%程度です。
空室率が少ない理由に、ビルなどの大きな規模のものになると、デベロッパーやゼネコンと相談して建てることになりますが、賃貸需要がないエリアにはビルを建築することはありません。よって必然的に空室率は低くなります。
- ビル経営はマンション経営と比べて空室リスクが低く、高い賃料収入を得られるため、高い収益性を見込める事業であるといえるでしょう。
ただし、ビル経営を始めるにあたっての初期費用は、他の土地活用と比べても高額です。建築費用だけでも数億円以上かかります。
また、ビル建設にかかる費用だけでなく、定期的なクリーニング、トイレや給湯室・エレベーターといった共用部のメンテナンス、設備の故障、緊急時の対応など、ビル維持・管理のランニングコストにも多額の費用がかかります。
収益性の高いビル経営ですが、必要資金も高額であるとを心得ておきましょう。
ビル経営に関しては、以下の記事もご参考になります。
スケルトン渡しが主流
ビル建設では、床・壁・天井の内装や設備が何もない「建物の躯体だけの状態」(=スケルトン渡し)で建設工事が完了となります。
オーナー側で内装工事を行わないことで、ビルに入居する企業や店舗が内装を自由にレイアウトできます。このような理由から、ビル建設時にはスケルトン渡しが一般的になっています。
つまりビルの建設では、マンションを建てる場合と異なり、内装の仕上げや設備設置の工事費用や工期がかかりません。
- とはいえ、ビル建設は外装の仕上げ等に費用がかかるため、マンションよりも坪単価が安くなることはありません。
建設協力金方式を利用できる
ビルを建設して経営するには、オーナー自身がローンなどによって資金を調達して出資する以外に、企業の建設協力金方式によってビルを建てるという方法もあります。
建設協力金とは、建築予定のビルの借主が貸主(土地のオーナー)に預託する金銭のことです。
建設協力金方式では、ビル建設にかかる費用の全部または一部を、完成後に入居予定の企業や開発計画の事業者であるデベロッパーが無利息または低金利で貸し付けてくれるため、土地の所有者は費用負担を抑えながらビルを建設できます。
また、建設後のビルは協力金を預託した企業が借り上げるため、オーナーがテナント探しをしなくてもよいというメリットもあります。
協力金は、テナント賃料の支払いと相殺しながら、賃貸契約期間中に返済していきます。
建設協力金方式を活用すれば、オーナー個人で資金調達するのが難しい場合でも、好立地の土地に大規模なビルを建てて経営しやすくなります。
景気の影響を受けやすい
ビル経営は、テナントが入居している間は安定した賃料収入を得られる事業です。
しかし、入居しているテナントの企業やお店の業績は、常に景気の影響を受けています。そのため、テナントから賃料収入を得るビル経営も、必然的に景気の影響を直接受けやすいといえます。
テナントの業績が悪化した場合、賃料の支払いが遅れたり、退去が発生するケースがあります。昨今の新型コロナウイルス流行時のように、商店が営業自粛を余儀なくされると、複数のテナントが一斉に退去する恐れもあります。
不景気が原因で一斉退去になると、代わりに入居してくれるテナント探しも難航します。一方、賃貸マンションやアパートは、不景気の中でも住居は必要とされるため、景気の影響で一斉退去が起きる心配はありません。
このように、ビル経営は景気変動によるリスクが比較的高い事業でもあるといえます。
相続税対策もできる
ビル経営でも、マンション経営のように相続税の節税対策ができます。
例えば、オフィスビルとして使用されている土地は、「貸家建付地」として区分されるため、更地のまま相続するよりも、土地の相続税評価額が2割前後(※)下がります。
建物の相続税評価額は、固定資産税評価額に基づきますが、新築の建物の固定資産税評価額は一般的に建築コストの約6割程度(※)であると言われていて、現金のまま相続するよりも評価減できます。
(※減額割合は、物件によって異なります。)
ビル経営を長期間に渡って経営する予定の場合や、今後、親族などに相続する可能性も視野に入れている場合は、減税効果があると言えるでしょう。
ただし、テナントビル・オフィスビルは住居用建物ではないので、土地に対して固定資産税や都市計画税の減税措置を受けることはできません。土地にかかる固定資産税は、更地同様の金額になることに注意しましょう。
ビル建設費シミュレーション
ビルの建設費は、坪単価×延べ床面積で概算することができます。また、構造によって坪単価が異なり、規模の大きい建物を建てようとすると建築費が高額になります。
たとえば、延べ床面積が600坪、鉄骨造のオフィスビルを建設する場合、600坪×110万円/坪=6億6,000万円と建設費を概算することができます。
- 建ぺい率と容積率
ビルの建設費を概算するときには、建ぺい率と容積率も考慮する必要があります。
建ぺい率と容積率は、都市計画法で定められた13種類の用途地域によって決められています。
建ぺい率とは、建築物の建築面積の敷地面積に対する割合のことで、1フロアに確保できる最大の面積となっています。建ぺい率が大きければ、1フロア当たりの面積を広く確保することができます。
また、容積率とは、延べ床面積の敷地面積に対する割合のことで、容積率が高ければ高いほど、建物の階数を増やすことが可能になります。
ビルを建設するときには、これらの規制に気を付ける必要があります。
オフィスビルの場合
ここでは、鉄筋コンクリート造6階建てのオフィスビルの建設費をシミュレーションしていきます。
階層:6階建て
土地の広さ:80坪
建ぺい率:80%
容積率:500%
諸費用:建設費の10%
- 1フロアの面積:80坪×80%=64坪
- 延べ床面積の合計:64坪×6階=384坪
- 容積率の上限:80坪×500%=400坪
そして、この坪数を用いて、建設費を求めると以下のようになります。
- 本体価格:158万円/坪×384坪=6億672万円
- 諸費用:6億672万円×10%=6,067万円
- 建設費:6億672万円+6,067万円=6億6,739万円
※建設費はあくまでシミュレーションです。必ず見積をお取りください。
雑居ビルの場合
ここでは、鉄骨造4階建ての雑居ビルの建設費をシミュレーションしていきます。
階層:4階建て
土地の広さ:70坪
建ぺい率:80%
容積率:400%
諸費用:建設費の10%
- 1フロアの面積:70坪×80%=56坪
- 延べ床面積の合計:56坪×4階=224坪
- 容積率の上限:70坪×400%=280坪
そして、この坪数を用いて、建設費を求めると以下のようになります。
- 本体価格:57万円/坪×224坪=1億2,768万円
- 諸費用:1億2,768万円×10%=1,267万円
- 建設費:1億2,768万円+1,267万円=1億4,035万円
とはいえ、ビルの建設費は各々の状況によって大きく違います。むしろ、条件が違えば実際にかかる建設費は今回ご紹介したものと全く違うものとなるでしょう。
そこで、ビルを建設する可能性があるなら実際に建築会社に相談しプランを作成してもらうことが大切になります。大手建築会社が作成したプランには、建設費用はもちろん収支も記載されていますので、ビルの建設を検討するためのファーストステップとなります。
イエウール土地活用なら、複数の大手建築会社の見積もりを一括請求することができますので、一番建設費が低くなるプランを見つけることもできます。
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ビル建設費を抑える方法
ビル建設費はとても高額です。少しでも建設費を抑えたいのであれば、一社だけでなく複数の建設会社に見積もりを取り、比較して建設会社を決めることです。
建設会社によっては、同じ条件でビルを建てるにも関わらず、建設費用に数千万円以上の差が生じることもあります。
とはいえ、複数の建設会社に見積もりを取るのは大変です。そこでおすすめなのが、イエウール土地活用の建設費見積もりサービスです。
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