「福祉施設で土地活用したら地域貢献になりそうだけど実際どうなの?」、「福祉施設で土地活用するイメージが全然湧かない」
土地活用をお考えの方は、福祉施設に興味がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、アパート経営などに比べてニッチな活用方法であることからこのようなお悩みを持たれている方も多いかと思います。
本記事では、福祉施設経営の需要や仕組み、種類などの基礎的な知識について詳しくご紹介します。
その他、土地活用のアイデアについて詳しくは以下の記事もご覧ください。
土地活用としての福祉施設経営とは
福祉施設経営とは土地を福祉事業者に貸し、事業者からの地代が収益となる土地活用です。施設利用者が介護保険加入者の場合は、利用料の9割が各自治体から介護報酬として事業者へ支払われることが特徴です。
経営方法については3つありますが、一般的なのは土地のみを貸す方法と土地の建物両方を貸す方法です。土地だけを貸す方法は、更地から初期費用をかけることなく福祉施設として土地活用を始めることもできます。土地と建物を貸す方法は、高額な建設費用がかかるためまとまった資金が必要となります。
土地活用で福祉施設経営を行う仕組みは以下の通りです。
福祉施設の経営方法
ここでは、福祉施設の3つの経営方法について詳しくご紹介します。
土地を業者に貸す
土地活用として福祉施設を経営する際、最も一般的なのは土地を業者に貸す方法です。
介護事業者などに土地を貸して、毎月発生する土地の賃料を得るというものです。 自分で建物を建てる必要がないため、初期費用を抑えられるのが大きなメリットと言えます。土地さえあれば始められるため、初期費用をかけずに始めることも可能です。
ただし、収入は福祉施設の経営によるものではなく、あくまでも賃料のみとなります。そのため、収益が低い点はデメリットと言えます。また、福祉施設として土地を貸す場合は事業用定期借地権となります。最低でも10年以上50年未満で初回契約を結び、その間は土地を自由に使えないので注意してください。
土地活用における借地について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
自分で福祉施設を建設する
福祉施設を土地オーナが建てて経営する方法もあります。この場合、建物の所有権が土地オーナとなることが大きな特徴です。
福祉施設を建設した後は、自ら経営する方法と介護事業者に建物を貸す方法があり、一般的なのは建物を介護事業者に貸す方法です。介護事業者に一括で借り上げてもらうことで、経営を事業者に任せることができます。
また、一括借り上げではリースバック方式がとられることが多いようです。リースバックとは、事業者土地の所有者に建設協力金を支払って土地オーナーが建物を建て土地と共に貸す方法です。建設協力金は融資なので月々の賃料から相殺されます。
一方、自ら経営する場合は設備や入居者・スタッフ募集など一から全て行う必要がありますので、いわゆる起業となります。経営を開始できるまでには数億円かかり、時間もかかることから個人で始めることはあまりありません。
リースバック方式について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
空き家を福祉施設に改修する
土地にある既存の建物を改修して、福祉施設にする方法もあります。もともとある建物を利用するため、自費で福祉施設を建てるよりも初期費用を抑えることが可能です。
ただし、小規模であっても福祉施設のオーナーであることに変わりないため、経営知識が求められます。また、一口に福祉施設と言っても有料老人ホームのような大きな施設から、デイサービスのような小さな施設など規模や種類はさまざまです。それぞれの施設の合わせた改修が必要になるため、建築業者選びが難航するケースが予想されます。
空き家を福祉施設に改修する場合は、土地オーナーがお金を投資し、事業者が改修・経営を行うといった方法もあります。この方法は土地貸しや一括借り上げよりも費用がかかる可能性がありますが、経営を事業者に任せることができるためリスクの低い方法といえるでしょう。
福祉施設は需要のある土地活用なのか
福祉施設は、高齢化や障がい者人口は増加している日本において需要が強まっている土地活用です。これは、実際に事業所数が全国的に増加傾向にあるということからも分かります。
2019年と2020年の各事業数の推移を見てみましょう。
<引用>[厚生労働省]:[障害福祉サービス等事業所・障害児通所支援等事業所の状況]
福祉施設には、有料老人ホームやサ高住、グループホームなどいくつありますが、ほとんどの事業所数が増加していることから福祉施設への需要の高まっていることが分かります。
このように、福祉施設で土地活用を始めることは収益はもちろん、地域社会に貢献できるという特徴があるといえるでしょう。
福祉施設と似た土地活用には介護施設があり、こちらの活用方法についても同じことが言えます。
所有する土地でどのような土地活用種別が良いのか迷ったときは複数の土地活用プランを一括請求・比較できるサービスを使うことをお勧めします。イエウール土地活用なら、複数のプランを比較して収益性の高い土地活用方法を見つけることができます。
\建築費は?初期費用は?/
福祉施設で土地活用するメリット
年々ニーズが増加している福祉施設は、今後、有力な土地活用の候補になることが予想されます。ここでは、土地活用法として福祉施設を経営するメリットをいくつか紹介しましょう。
知識やノウハウが必要ない
福祉施設経営では、事業者に所有する土地や建物を貸し出す方法をとるため、業者に管理を任せることができます。そのため、福祉経営の知識やノウハウを持っている必要はありません。
過去の運営実績がある事業者に任せることで、安心して土地活用を始めることができます。
オーナーの負担が軽いため、管理業務に関する手間や時間を避けたい場合や、経営経験のない人にとっては大きなメリットと言えるでしょう。
社会に貢献できる
福祉施設経営なら、社会貢献にもつながります。高齢者に安心安全な暮らしを提供できることは、大きなやりがいにもつながるでしょう。
さまざまな土地活用法がある中で、特に福祉施設経営は、昨今の少子高齢化社会の要求を満たす社会貢献度の高い活用法です。
所有している土地付近に福祉施設がない場合や、施設はあっても定員オーバーで入居できない高齢者がいる場合などは、福祉施設を経営することで困っている人たちの受け皿になることができます。
また、介護施設経営は、高齢化社会の要求を満たすだけではありません。地域への貢献度も高いことから、結果的にはオーナーの社会的信用の向上にもつながります。
安定した収入が得られる
安定した収入が得られる点も、福祉施設経営のメリットのひとつです。少子高齢化に伴って福祉施設の需要は増加しているため、入居者が決まると長期的に安定した収入が見込まれます。
これは、福祉施設が20年以上の長期にわたる契約が一般的であるためです。
また、土地の賃料は空室ができても保証されるため、一定額の家賃収入を得ることが可能です。
立地が悪い土地を活用できる
福祉施設の場合、入居者の生活が施設内で完結することが多いため、交通の便や利便性はあまり重視されません。そのため、付近に駅や学校、スーパーなど日常生活に必要な施設が整っていない住環境でも始められることが大きなメリットと言えます。
また、住宅やマンション・アパートなど、建設制限がある市街化調整区域でも、法律上、例外規定に当たる福祉施設であれば建設しやすいという特徴があります。
賃貸住宅としては活用が難しい、市街地から離れた土地でも、福祉施設経営を検討することができるでしょう。
福祉施設に向いている土地については、本記事の5章で詳しく解説しています。
福祉施設で土地活用するデメリット
福祉施設経営はメリットの多い土地活用法ですが、一方でいくつかのデメリットも存在します。経営に失敗しないためにも、所有する土地の状況や、初期費用に関するデメリットなどを事前に把握しておきましょう。
地域によっては同業者が多い
地域によっては同業者が多く、建設の規制が行われるケースもあります。福祉施設は、国や自治体の補助金制度が利用できることから、施設が同エリアに集中するケースがあるのです。
対象施設が増えると、自治体が財政難を回避するために建設の総量規制が行われます。規制がかかると、その地域に施設を建設することができません。
高齢者の増加によって福祉施設の需要が高まっているとは言え、同エリアに施設経営を希望する同業者が増えることで、空き部屋の増加につながることもあります。
供給過多になると 倒産する会社が出る可能性も考えられます。場合によっては、経営が立ち行かなくなるケースも皆無ではないため、将来起こりうるリスクについても、しっかり見極めることが大切です。
駅近のエリアは経営に向かない
福祉施設は、何より住環境が重要視されるのが一般的です。入居者が安心して暮らせるよう、駅のほかにもスーパー、学校、また複合娯楽施設など、賑やかな場所から離れた土地が適しています。
日常生活に必要な施設が整った住環境は、アパート・マンション経営にこそ適していますが、福祉施設の経営に適しているとは言えません。
逆に、郊外の広い土地を所有している場合は、福祉施設経営に有利と言えます。
出口戦略を建てるのが難しい
高齢化に伴い福祉施設需要は高いものの、仮に経営に失敗した場合は手詰まりになるケースもあります。
一度撤退すると、経営に失敗したというイメージがつき、買手が見つかりにくい傾向があるのです。そのため、売却による資金の回収ができない可能性も皆無ではありません。
また、福祉施設は構造上の理由から、建物を福祉施設以外の目的で利用しにくい点もデメリットです。
高額な初期費用が必要になる
介護施設は、国の基準を満たして建設する必要があるため、賃貸物件よりも初期費用が高額になる傾向があります。
特に、特殊な設備を必要とする有料老人ホームや、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などの入所型は、小スペースの訪問型介護施設よりも高額な建設費が必要です。
また、依頼する建設会社によっても建設費用は異なることもあり、福祉施設の建設にはまとまった資金や長期の借入が必要となります。
福祉施設経営に向いている土地
ここでは、どのような土地が福祉施設に向いているのか詳しくご紹介します。
閑静なエリアにある土地
福祉施設の入居者にとって、住まい環境は施設を選ぶ上で大切なポイントです
その理由としては、福祉施設の入居者は通勤や通学、買い物などを行う必要がないためです。
このような背景から、福祉施設が駅近や都市部にあることはそれほど重要ではありません。むしろ、自然が多くあり騒がしくない環境の方が福祉施設に適した立地です。
ただし、デイサービスなど利用者が居住しない福祉施設では交通アクセスが重要となります。そのため、福祉施設による土地活用を検討するときは、土地や福祉施設の特徴を把握しておくとよいでしょう。
土地活用の立地について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
道路沿いにある土地
道路沿い、いわゆるロードサイドにある土地は福祉施設に向いている土地といえます。
特に、デイサービスなどの通所施設やサ高住ではロードサイドであるかは大切なポイントです。
その理由としては、これらの福祉施設は外部からの利用者が見込まれるためです。
デイサービスであれば、スタッフが利用者の自宅との往復する必要があり、サ高住であれば併設されている介護事業所や医療施設を利用する方が訪れます。
駅から近くなくとも、車やバスなどでアクセスしやすい立地であるとより多くの方に利用してもらえる機会も高まります。
ロードサイドでの土地活用について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
100坪以上の土地
多くの福祉施設では、ある程度広い土地が必要となります。
有料老人ホームやサ高住など、利用者の居住スペースが必要となる福祉施設では最低でも300坪や500坪ほどの土地が必要です。
一方で、デイサービスなどは居住スペースを作らない場合も多く、70坪ほどの土地でも建てることができます。
福祉施設といってもその種類はいくつかありますが、100坪を目安としていただけると良いかと思います。100坪以上ある土地であれば、福祉施設としての活用の幅が広がるでしょう。
所有する土地でどのような土地活用種別が良いのか迷ったときは複数の土地活用プランを一括請求・比較できるサービスを使うことをお勧めします。イエウール土地活用なら、複数のプランを比較して収益性の高い土地活用方法を見つけることができます。
\建築費は?初期費用は?/
活用事例:カフェスタイルを取り入れた 次世代型デイサービス





エリア | 茨城県 |
土地面積(㎡) | 1623.18 |
延べ床面積(㎡) | 403.8 |
茨城県水戸市にカフェのような斬新なデザインの「山水苑デイサービス千波」が完成しました。茨城県で高齢者向け施設を複数経営する社会福祉法人山水苑のご担当者さまにお話を伺いました。
「デイサービスは今回で3ケ所目です。他の場所でカフェ風デザインのデイサービスを始めたところ、大変好評でしたので、のんびりお茶を飲んで、お風呂に入ってリラックスできる、カフェや日帰り温泉のようなデイサービスを作ろうと考えました」。
デイサービスの利用を勧められる方の中には、「まだ自分には必要ない」と、通うのを嫌がる方もいらっしゃるそうです。“通いたくなる施設”が、運営のカギになります。
「従来の福祉施設とは異なる新しいデザインにすると共に、実用性も追及しました。特に、利用者が長く過ごすデイルームは、なるべく広く開放的な空間にしたいと考えました。ミサワホームの木質パネル工法により、デザイン性の高い設計ができ、柱や梁で遮られることのない大空間を確保することができたので、大変満足しています」。(ミサワホーム株式会社の土地活用事例)
福祉施設の種類
土地活用で始められる福祉施設の種類には、以下のように6つあります。
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- 健康型有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- グループホーム
- デイサービス
次項では、それぞれの福祉施設について詳しくご紹介します。
有料老人ホーム
有料老人ホームは、福祉・介護施設のなかでも最も一般的な施設であり、その棟数も多いです。
また、介護付き・住宅型・健康型と別れており、それぞれ入居対象者は異なります。。
これらの主な違いは、介護サービスの有無です。介護付きは文字通り介護サービスを提供し、健康型は自立できる方を対象として施設であるため介護サービスはついていません。住宅型は、その中間であるといえます。
有料老人ホームとして土地活用を行う場合、建物規模が大きくなることから500坪や600坪ほどの土地が必要となります。
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)は、マンションのような集合住宅において安否確認や生活相談サービスを提供している福祉施設です。
多くの場合、建物の一階部分には介護事業所などが併設されています。
入居対象者は、自立できる方から要介護状態の方までと幅広く、有料老人ホームほど細かく分けられていません。
サ高住経営では、自治体から補助金が出ることからサ高住で土地活用は投資を行う方も増えてきおり、注目の福祉・介護施設の一つであるといえるでしょう。
グループホーム
グループホームは、5人~9人ほどのグループで共同生活を行うとともに、生活支援サービスを提供している福祉・介護施設です。
認知症の方などに適した施設として注目されており、症状の改善につながるとして期待されています。
グループホームは少人数制であることから、有料老人ホームやサ高住と比べて大きな建物を必要としません。そのため、100坪や200坪程度の土地でも始めやすいといえます。
デイサービス
デイサービスは、日帰りで生活支援サービスを提供している福祉・介護施設です。利用者がスタッフの送迎で施設まで通うことから、通所介護施設とも言われます。
多くのデイサービスでは、レクリエーション等も用意されており、心身共に充実した生活を送れるようなサポート体制が整っています
デイサービスは、日帰り施設であることから福祉・介護施設のなかでは最も小さいスペースで始めることができるため、100坪以下の土地で福祉・介護施設を検討している方におすすめです。
福祉施設の経営に適した土地かを見極めよう
福祉施設経営の大きなメリットは、社会貢献や長期的に安定した収入を得られる点です。
また、土地や建物を貸すだけで土地活用を始めることができるため、経営経験やノウハウがなくても福祉施設経営を始めることが可能です。
ただし、福祉施設を検討する際には福祉施設建設に適した土地であるかをよく見極めることが大切です。立地や土地の広さに合った施設を選択するのが、福祉施設経営を成功させるカギと言えるでしょう。
他にも土地活用方法を知りたい方は以下の記事をご覧ください。