マンション経営と聞くと、一室を所有して経営する区分マンション経営を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、中にはマンションを一棟ごと経営することをお考えの人もいることでしょう。
この記事はマンション一棟経営をお考えの方に向けて、マンション経営にかかる費用やその内訳、ローンの審査基準・返済計画や一棟マンション経営で得られる収入についてご紹介します。一棟マンション経営を始める前にぜひご活用ください。
一棟経営だけでなく、区分マンション経営を含めた初期費用や維持費用について知りたい方は、こちらの記事を御覧ください。
一棟マンション経営にかかる費用は?
マンション経営には一棟経営と区分経営の2種類があり、一棟経営する場合は区分経営よりもはるかに多くの費用がかかります。その総費用はおよそ数千万円~数億円です。
その中で、一棟マンション経営にかかる費用は、大きく分けると初期費用と維持費用の2種類があります。そして、初期費用に関しても建築費とそれ以外にかかる費用の二つに分けられます。
資金計画を立てるためには、どの費用のことも正しく理解しておく必要があります。次の章より、建築費から順に説明していくためぜひご参考にしてください。
一棟マンション経営の初期費用
一棟マンション経営の初期費用は建築費とそれ以外の諸費用に分けられます。本章ではそれぞれについて詳しく解説しています。
一棟マンションの建築費
一棟マンションの建築にかかる費用は、「坪単価×延床面積」で求めることができます。坪単価は構造によって異なりますが、一般的にマンションは鉄筋コンクリート造(RC造)か鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)で建てられることが多いです。それぞれの坪単価は以下の通りです。
- 鉄筋コンクリート造(RC造):83万円~108万円
- 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)96万円~125万円
この計算で出た金額に、付帯工事などが追加で10%~20%ほど上乗せされた値が一棟マンションの建築費になります。そして、マンション経営にかかる初期費用のうち9割がこの建築費にあたります。
また、マンション経営を始めるにあたり不動産投資用ローンを借りる人が多くいると思います。その際、建築費の1割~3割は自己資金を用意しておく必要があり、その他をローンで借り入れることになります。
一棟マンションの経営にはまとまった自己資金が必要です。一棟経営を考えている人は、マンション経営に投資できる自己資金の額を把握しておきましょう。
一棟マンション経営の初期費用(建築費以外)
マンション経営にかかる初期費用のうち、建築費以外のものの解説をしていきます。以下がその他の初期費用となります。
- 仲介手数料
- 登記費用
- 不動産取得税
- 火災保険料
- ローンの手数料
- 申請手数料
1つずつ順番に見ていきましょう。
仲介手数料
新規入居者が決まったら、不動産会社に支払う手数料として仲介手数料が必要です。一般的には家賃の0.5か月分程かかります。
宅建業法によって仲介手数料の上限が決まっていて、それは以下の通りです。
- ①不動産会社が受け取れる仲介手数料は、オーナーと入居者合わせて家賃の1カ月分が上限。
- ②建物がアパートやマンションなど居住用の場合、賃貸オーナーと入居者の片方から受け取れる仲介手数料は家賃の0.5カ月分が限度。
- ③仲介の依頼までに承諾を得ていた場合は、片方から0.5カ月を超える金額を受け取ることが可能。
登記費用
マンションを建築した場合、建物表題登記と所有権保存登記を行う必要があり、ローンを借り入れる場合は抵当権設定登記もしなければなりません。
そして、所有権保存登記と抵当権設定登記を行なう際は登録免許税がかかります。所有権保存登記は課税標準額に、抵当権設定登記には借入金額にそれぞれ税率の0.4%を乗ずることで算出できます。
司法書士や弁護士に頼むと手間を省くことができますが、その分料金は高くなります。司法書士に頼む場合は、20万円~40万円程用意しておくと良いでしょう。
不動産取得税
マンションを一棟建築すると、不動産取得税がかかります。不動産取得税は、固定資産税評価額×3%の税率で求めることができます。
実は、この不動産取得税の計算に用いられる税率は本来であれば4%です。3%の軽減税率が適応されるのは令和6年の3月31日までとされているため、注意しましょう。
火災保険料
一棟マンション経営をするのであれば、入居者だけでなくオーナーも火災保険に入ることになります。なぜなら、ローンを借り入れるのに火災保険への加入が条件とされることが多いためです。
火災保険は火災の他に、洪水や落雷といった自然災害もカバーしており、マンション経営のリスクを減らすことができます。また、必須ではないものの、火災保険と一緒に地震保険にも加入する人が増えています。
保険金額は建物の構造と建物評価額、保険適用の範囲によって決まります。マンションの場合、耐火性能の高い鉄筋コンクリート造であることがほとんどであるため、構造t系には保険料が安くなります。
ローンの手数料
金融機関の不動産投資ローンを利用し、マンションの建築費用を借り入れる場合はローンの事務手数料が発生します。
これには定率型と定額型の2種類あり、定率型は借入金額に1%~2%を乗じた金額が事務手数料となります。一方で、定額型は一律およそ5万円~10万円に設定されています。
ローンの事務手数料は借り入れる金額とどちらの「型」を選ぶかによって変わるため注意しましょう。
申請手数料
マンションを建てる際、建築基準法を順守して設計されていることを確認するため、自治体や検査機関から建築確認申請というものを受ける必要があります。
これにはそれぞれ着工前の確認申請手数料、工程途中の中間検査手数料、竣工後の完了検査手数料といった手数料が発生します。
それぞれの段階や床面積によって手数料が変わるため、確認することをおすすめします。
一棟マンション経営にかかる維持費用
マンションを経営していくうえでは維持費用が発生します。維持費用としては以下があげられます。
- 修繕費
- 管理費
- ローン返済費
- 税金各種
修繕費
マンションの資産価値を保つためにも、定期メンテナンスや設備の故障の修理などの修繕費がかかります。
また、入居者の退去後には原状回復のためのリフォームやクリーニングにも費用が必要になります。これらにかかる費用は部屋や設備の状況にもよりますが、家賃収入の5%~7%を目安としましょう。
10年~15年に一度は大規模修繕が必要となるため、修繕積立金を積み立てておくことが大切です。
管理費
一棟経営される場合は、管理会社に管理を頼んでしまうことをおすすめします。管理会社はマンション管理のノウハウが非常に豊富です。
日々の清掃や管理業務だけでなく、住民同士のトラブルなどにも対応してくれます。
管理会社に払う管理費は、一般的には家賃収入の5%~10%程が目安とされています。
ローン返済費
一棟マンション経営をするとなると、かなり大きな額の投資になります。自己資金だけでは難しいため、ローンを組まれる方がほとんどでしょう。
ローンの返済費は契約の種類によって変わります。基本的には早く多く返すほうがローンの返済費を抑えることができます。
税金各種
マンションを購入すると、固定資産税、所得税、住民税など各種税金がかかってきます。固定資産税は評価額×1.4%で求めることができます。所得税や住民税などは、それぞれ所得や住む地域によって異なります。
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エリア | 愛知県 |
一棟マンション経営のローン審査基準
一棟マンションの建築を検討している人は、ローンの借入を考えていると思います。そのため、本章ではローンの審査基準について紹介します。
本人の属性
不動産投資ローンの審査では本人の属性も審査基準になります。本人の属性というと、年収や勤務先などが当てはまります。
年収は借入可能額に影響します。年収が高いほど返済能力も高いとみなされるため借入可能額が増えます。加えて貯金も確認されるため、年収が高く貯金が多い人ほど審査に有利になります。
また、勤務先についても確認されます。資本金が多いなど規模の大きい会社に勤めている、勤続年数が長く安定性が高い、といった場合は審査で有利になります。
不動産の収益性
不動産投資ローンは物件を担保にして融資をするため、その物件の収益性も借入可能額に影響します。それは収益性が高いほどローンの返済が淀みなく行なえると判断されるためです。
この際注意が必要なのは、判断されるのは不動産の時価ではなくあくまで収益性であるという点です。時価が高くて購入時の資産価値が高かったとしても、収益性が低い場合は評価も低くなります。
不動産ローンでは本人の属性よりも不動産の収益性が重要視されることも多いため、属性の評価が低くても収益性の高さが評価されれば審査で有利になることがあります。
本人の返済履歴
本人の過去のローン返済歴なども審査基準の一つとなります。
ローンの返済履歴の他にはカードの支払いやスマホ料金の滞納など、細かい部分までチェックされることも多いです。滞納の履歴があると信用が下がるため、審査が不利になり借入可能額が下がることがあります。
また、現在組んでいるローンの数も確認され、借入金が多い人は信用度が低いとみなされて借入可能額が下げられることもあります。
ローンの返済計画を立てるときのポイント
ローンの返済計画を立てるときは、返済期間・金利タイプ・返済方法の3つが重要なポイントになります。本章ではそれぞれについて解説しています。
返済期間が決まる要素
ローンの返済期間は、「建物の法定耐用年数」と「ローン完済時の年齢」の二つの要素によって決まります。
法定耐用年数は建築するマンションの構造によって決まり、鉄筋コンクリート造の場合は47年なので、47年以内が返済期間の目安となります。
また、団体信用生命保険に加入する場合は最終返済時の年齢が75歳~82歳となるように返済期間が設定されます。団体信用生命保険とは、ローンの契約者が死亡した場合に保険金が支払われ、それにより残債を返済できるというものです。
二つの金利のタイプ
不動産投資ローンには「固定金利」と「変動金利」の2種類があります。固定金利は借入期間中に適用される金利が固定されているもので、変動金利は借入期間中に適用される金利が変動するものです。
固定金利にも二つ種類があり、一つは契約から完済まで金利が変動することのない全期間固定金利型と、もう一つは一定期間は変動せず期間が過ぎると変動金利に切り替わる固定金利期間選択型です。
また、契約から金利が一定ではなく、金融情勢によって金利が変動するのが変動金利タイプです。市場金利が上がると返済総額も増えますが、逆に市場金利が下がると返済額も下がります。最終的な返済額の見込みを立てることが難しいところが特徴です。
二つの返済方法
ローンの返済方法にも2種類あり、それは元利均等返済と元金均等返済の二つです。元利均等返済は初年度から完済まで毎月一定の返済額である返済方法で、元金均等返済方式は毎月一定の元金に加えて残高に応じて発生した利息を支払う返済方法です。
元利均等返済は無理のない返済計画を立てることができ、修繕費などの費用の貯蓄に回す金額を考えやすくなります。ただし、元金と利息を併せて毎月均等に返済するため、返済当初は元金部分の減りが遅く、最終的な返済総額が増えてしまいます。
元金均等返済方式はローンを返済する分利息も減るため、最終的な返済額を比較的に減らすことができます。ただ、返済開始後すぐは返済額が大きくなるため、審査基準が厳しめになっています。
一棟マンション経営の家賃収入
年収から年間の支出を差し引いた額が手元に残る金額であり、それを所得、もしくはキャッシュフローと言います。
一棟マンション経営と区分マンション経営の一番大きな違いは、得られる所得の違いと言っても過言ではないでしょう。本章では一棟マンション経営の家賃収入について解説しています。
平均年収
国内における不動産経営全体の平均所得は540万年であり、一棟マンション経営の平均年収は700万円~1,200万円と言われています。
物件の規模によって年収は変動しますが、不動産所得の平均取得を超えるオーナーが多くいます。
ただし、一棟マンションは建築費が非常に高額になるうえ、初期費用や維持費用もかかります。そのためキャッシュフローを得るためには、それらのコストやローン返済費などの支出を上回る収入を確保し続ける必要があります。
家賃収入の計算方法
一棟マンション経営のオーナーの主な収入である家賃収入について、計算方法は以下の通りです。
- 家賃収入=1戸当たりの賃料×マンションの戸数×稼働率
- 1戸当たりの賃料:10万円
- マンションの戸数:18戸
- 稼働率:18戸中15戸が入居中
- 1ヶ月の家賃収入=10万円×18戸×6分の5=150万円
- 年収=150万円×12ヶ月=1,800万円
上記のように月収と年収を計算することができますが、この額がそのまま手元に来るわけではないことに注意しましょう。
手取りの計算方法
実際に手元に来る所得は、上で計算したものから月々のローン返済費や維持費用など、諸費用を引いたものとなります。
- 年間所得=年間収入−年間支出
所得は上記の計算式で求めることができます。単純な収入が多くても、支出が想定よりも高額になるのはよくあることです。そのため、予め利益を考えるときは所得で計算するようにしましょう。
具体例
月々のローン返済額が20万円だとした時に、上記の月収の場合は、手取の月収と年間所得は以下のように計算できます。
- 手取り月収=150万−20万円−諸費用=130万円−諸費用
- 年間所得=130万円×12ヶ月−年間支出=1,560万円−年間支出
管理費や修繕費などの諸費用の中には、築年数が経つにつれて費用が高くなるものあります。そのため、一棟マンション経営を始める際は、予め綿密なシミュレーションが必要になります。
費用を知って適切な資金計画を立てよう
ここまで、一棟マンション経営に関する費用についてご紹介してきました。
マンション一棟を建築するのにかかる費用はもちろん、そのほかにも様々な費用がかかります。建築が高額な分、他の費用が低く見えてしまいますが、1つ1つの費用を見れば同様に高額なことがわかります。
マンション一棟を経営するのにかかる費用を知り、適切に資金計画を立てられるようにしましょう。また、土地活用としてのマンション経営をお考えの方は、一括比較がおすすめです。