区分マンションの経営を考えている人は、ランニングコストの一つである修繕費積立金について知っておく必要があります。
本記事では修繕積立金について詳しく説明します。修繕積立金の相場や適正価格の求め方を知り、納得した上で毎月きちんと支払うようにしましょう。
マンション経営の修繕積立金とは
マンション経営の修繕積立金とは、マンションの修繕工事に備えて毎月積み立てておくお金です。修繕積立金は建物全体にかかわる修繕費および建物の資産価値、機能的価値の維持という目的で徴収されるため原則区分マンションの所有者であるオーナー負担になります。
区分マンションのオーナーの場合、積立金は区分所有者全員で構成され管理組合に支払います。
修繕積立金の徴収方式には「段階増額積立方式」と「均等積立方式」の2種類があります。「段階増額積立方式」は段階的に増額していく方式で、「均等積立方式」は将来的に必要な修繕工事費の合計金額から按分し、当初から一定額を徴収していく方法です。
近年建築されたマンションにおいては「段階増額積立方式」が多い傾向にあります。
共益費・管理費との違い
修繕積立金は共用部分に使われることから、共益費・管理費と混同される機会が多い項目です。
しかし、修繕積立金が大規模な修繕に活用される一方で、共益費・管理費はマンションの日常的な維持管理のための費用を指します。
具体的な共益費・管理費の用途は下記のとおりです。
- 共用部分の水道代や電気代の支払い
- 共用部分の清掃費
- エレベーターの定期検査
- 害虫駆除や樹木剪定の費用など
よって、管理費は入居者が日常的に使用する共用部分の管理などの費用のため、入居者負担になります。
管理費に修繕積立金が含まれている場合、修繕積立金については区分マンションのオーナーに負担になります。
マンション経営の修繕積立金の相場
毎月徴収される、修繕積立金の相場はいくらなのでしょうか。また、どのようにして毎月の積立金が算出されるのかを説明します。
毎月の修繕積立金の相場
国土交通省の調査によると、1戸あたりのマンション修繕積立金の平均は、月額11,243円(平成30年度)です。
ですが、平成27年以降に建てられた新築・築浅のマンションは6,654円程度、築4~9年のマンションは9,244円、築9~14年のマンションは11,227円と修繕積立金が値上がりしているのが分かります。
出典:国土交通省「マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」(2018年)
修繕積立金はどうして高くなっていくの?
築年数が経つほど修繕箇所が増えたり修繕が大規模になるため、マンションの修繕積立金は新築よりも古いマンションのほうが高くなる傾向にあります。
1960年代後半〜1970年代まで続いたマンションブームの影響から、近年は老朽化したマンションが目立ち、修繕積立金の平均額が上昇しています。
修繕積立金の適正価格の求め方
国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、マンション修繕積立金の目安となる計算方法が定められています。
同資料による修繕積立金の算出方法は下記のとおりです。
(算出式)Y=AX+(B)
Y:購入予定のマンションの修繕積立金の額の目安
A:専有床面積当たりの修繕積立金の額(下表※)
X:購入予定のマンションの専有床面積(㎡)
( B:機械式駐車場がある場合の加算額 )
※A:専有床面積当たりの修繕積立金の額の一覧
階数・建築延床面積 | 平均値(月) | 該当物の2/3が包含される幅(月) | |
15階未満 | 5,000㎡未満 | 218円/㎡ | 165円~250円/㎡ |
5,000〜10,000㎡ | 202円/㎡ | 140円~265円/㎡ | |
10,000㎡以上 | 178円/㎡ | 135円~220円/㎡ | |
20階以上 | 206円/㎡ | 170円~245円/㎡ |
引用元:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」
「1平方メートルあたり218円」とすると、50㎡の部屋なら10,900円、70㎡の部屋なら月額15,260円が修繕積立金の適正金額となります(機械式駐車場の部分を除く)。
補足として駐車場における維持管理・修繕工事費、駐車場使用料について管理費や修繕積立金と区分して場合や機械式駐車場の修繕工事費を駐車場使用料収入で賄っている(賄う予定)場合は「機械式駐車場がある場 合の加算額(B)」を加算する必要はありません。
マンション購入時に注意すべき修繕積立金のポイント
マンションの購入を検討する際は、修繕積立金に目を向ける必要があります。
余計な積立金を支払わないためにも、適正な積立金額を徴収しているマンションかどうか見極めるポイントを紹介します。
安すぎる場合は要注意
修繕積立金が安いマンションは毎月の支出を抑えられるため、魅力的ではありますが、相場より安い場合には注意が必要です。
というのも、積立金額が安すぎると、将来的に費用が不足する可能性があるからです。費用が不足すれば、積立金の値上げは避けられません。
また、値上げされない場合は必要な工事ができなくなります。その結果、マンションの安全性が損なわれ資産価値が落ちてしまう可能性があります。
修繕積立金が安いというだけで、マンションの購入を判断するのは避けましょう。
修繕計画に沿った金額かどうか
修繕積立金は、長期修繕計画によって金額が決まります。
長期修繕積計画を確認することで、どのような修繕工事が予定されているのか、なぜ工事が必要なのかといったことをチェックして、計画の妥当性を判断することができます。
計画の妥当性を判断したうえで、今の積立金額で足りるのか、今後増額される可能性はあるかといったことが推測できます。
修繕積立金が高額すぎる場合も低額すぎる場合も、注意が必要です。低すぎる場合は値上がりの可能性があり、高すぎる場合は修繕目的以外に使用されている可能性があるため、購入を再検討したほうがいいでしょう。
積立金滞納の有無
中古マンションの購入で注意すべき点が「売主が修繕積立金を滞納していた」というケースです。その場合、支払い義務は買主に継承されます。
もちろん、滞納の有無は「重要事項」として購入時に説明が義務づけられており、決済の際に売却代金から精算されます。
ですが、中には「入居後に修繕積立金として管理組合から多額の支払い請求がきた!」というケースも稀にあります。
余計な積立金を支払うはめにならないよう、マンションを購入する前に積立金滞納の有無は確認しておきましょう。
マンション経営で修繕積立金を支払うメリット
中には、修繕積立金を払いたくないと感じる人もいるでしょう。この章では修繕積立金を支払うメリットを紹介します。
経費として計上できる
区分マンションのオーナーは修繕積立金は経費として処理することができます。
原則、修繕工事が行われたときに会計処理を行いますが、将来の修繕のみに利用される一般的な修繕積立金であれば、支払ったタイミングで経費計上できます。
経費として計上することで、所得税や住民税などの節税効果が見込めます。
安定したマンション経営
修繕積立金を支払うことにより、安定したマンション経営が可能です。修繕積立金は、適正なマンション経営を行ううえで欠かせないお金です。
必要な時に適切な箇所を修繕することにより、入居者にとって快適な場を提供することができれば高い入居率をキープできます。
通常、建物の劣化に伴い空室が目立ってくると、家賃価格の値下げを強いられますが、高い入居率を保てているのであれば家賃を下げる必要もありません。
売り時を考えやすい
修繕積立金を支払うことにより区分マンションの売却時期を計ることができます。
マンションの売却に適した時期というのは大規模修繕が行われる前です。修繕後は、修繕積立金の値上がりが予想されます。
修繕積立金を支払う際に、必要な金額について明記している長期修繕計画を確認できます。
長期修繕計画では修繕工事のタイミングや想定される費用など、マンションを将来にわたって維持していく展望を具体的に記載されています。この長期修繕計画を確認することで修繕のタイミングを知ることができます。
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マンション経営で必要な修繕の種類
マンションを安全に運営していくうえで大事な修繕積立金ですが、具体的にはどういった修繕にあてられるのでしょうか。ここでは修繕の種類について詳しく説明します。
大規模修繕
大規模修繕とは、建物や施設の長期間にわたる修復や改修を指す言葉です。
建物の老朽化や劣化が進んでおり、通常の定期修繕やメンテナンスでは対応しきれないような大規模な工事や修繕が必要な場合に行われます。
大規模修繕は、建物全体または一部の構造や設備の改修、更新、強化を目的として行われます。
大規模修繕は、建物の安全性や快適性を維持するために重要です。修繕の計画や費用、工期の調整などは、専門の建築業者や管理会社と協力して行われます。
以下が大規模修繕の具体的な修繕箇所です。
- 外壁の塗装
- 柱補強工事
- 給排水管の清掃や交換
- 防水工事
- 駐車場やフェンスなどの外構
老化予防修繕
建物の劣化や損傷を未然に防ぐために行われる修繕のことを指します。通常、定期的に行われる予防的なメンテナンスや点検活動を含みます。
予防修繕の目的は、建物や施設の長寿命化や安全性の確保、将来的な大規模な修繕や修理の費用を抑えることです。
劣化や損傷が進行する前に早期に発見し、修繕や補修を行うことで、建物の価値を維持し、経済的な効果をもたらすことが期待されます。
将来的なトラブルや費用の増大を防ぐために重要です。建物のオーナーや管理会社は、定期的な点検やメンテナンススケジュールを立て、予防修繕を適切に実施することが求められます。
- シロアリの点検・駆除
- 外壁の劣化調査
- 耐震調査
原状回復
入居者が退去した後、部屋を入居時の状態に戻すことを「原状回復」といいます。
原状回復時の修繕にかかる費用ですが、経年劣化や通常消耗においては原則オーナー負担となります。室内の破損、改造などが入居者の責任による場合は、入居者の負担になります。
- 壁紙・フローリングの張替え
- ハウスクリーニング
原状回復費については修繕積立金から補うのではなく専有部分の修繕は所有者が行うことになっています。
破損個所の修繕
物件そのものや付属の設備に不具合が発生した場合の修繕を指します。給湯器やエアコンの修理や交換、突発的災害や事故による修繕等が当てはまります。
基本的には不具合が生した際に修理・交換を行いますが、設備の耐用年数や交換時期の目安を把握しておきましょう。
破損箇所の修繕においてもマンションの共用部以外の専有部分においては区分マンションのオーナー負担になります。
具体的な修繕箇所と費用相場
ここでは具体的な修繕箇所と費用相場について詳しく説明します。
外壁の塗装
外壁の塗装は、外壁の素材と面積によって費用が異なります。
フッ素塗料 約4,000円/平方メートル
光触媒塗料 約5,000円/平方メートル
柱補強工事
柱補強工事の費用は、どれだけ金具を入れるか、既存の柱がどれだけ傷んでいるかによって大きく変わりますが、施工期間も長くなりますので、約100万円からが相場となります。
給排水管の清掃や交換
給排水管の修繕費用についての目安は次の通りです。
配管更新工事 約40万円〜/1戸あたり
配管更生工事は、別名ライニング工事とも呼ばれています。配管に樹脂を流し込むことで新しいパイプ管を作り劣化を防止する工事です。短期間で内装を壊さずに工事できる点が特徴です。
配管更新工事は、新しい配管を設置する工事です。古い配管をむき出しの状態にしてから交換するため、外壁や内装を壊さなくてはなりません。
防水工事
雨漏りを防ぐためには屋根の防水工事が必要です。防水工事にかかる費用は、工事の方法によって異なります。
防水塗装(ウレタン塗装)約3,500円/平方メートル
防水塗装(FRP塗装)約7,000円/平方メートル
駐車場やフェンスなどの外構
駐車場やフェンスなど外構の修繕については、修繕計画を立てる必要があります。
工事内容にもよりますが、駐車場の再舗装ですと
シロアリの点検・駆除
1匹でもシロアリを見つけたら、早めに点検して駆除することが大切です。
シロアリ駆除(毒餌セット) 約5,000円/平方メートル
外壁の劣化調査
外壁の劣化調査には打診調査と赤外線調査の2種類があります。
打診調査とは、壁の表面を打診棒と呼ばれる棒で叩き、音の違いで外壁材の浮きを調査する方法です。赤外線調査は、壁を赤外線カメラで撮影し、壁の温度変化で浮きやひび割れ、剥離がないかを検査する方法です。
調査方法によって値段が異なります。
赤外線調査 1㎡あたり約120~350円
耐震調査
耐震調査は、建物の構造によって異なります。
鉄骨造(延床面積が1,000㎡~3,000㎡) 約1,000円/㎡~3,000円/㎡
鉄筋コンクリート造(延床面積が1,000㎡~3,000㎡) 約1,000円/㎡~約2,500 円/㎡
壁紙・フローリングの張替え
壁紙の張替えは広さで費用が異なります。
8畳 4.6万円〜5.6万円
フローリングの場合は
8畳 10~20万円
ハウスクリーニング
業者にハウスクリーニングを依頼した場合の費用について紹介しておきます。
1DK、1LDK 30,000〜40,000円
2DK、2LDK 30,000〜70,000円
3DK、3LDK 50,000〜85,000円
4DK、4LDK 70,000〜10万円
マンション経営で修繕積立金を支払わないとどうなる?
区分マンションのオーナーである限り、修繕積立金を払い続けなければなりません。
マンションの修繕積立金を滞納した場合、管理組合から督促状が届きます。滞納が長期間続き、悪質と捉えられた場合、物件自体を差し押さえられ競売物件として売りに出されてしまいます。
どうしても積立金の支払いが難しい場合は、管理組合に相談することで期日などを伸ばしてもらえる可能性があります。
少しでも多くのキャッシュフローを残したいオーナーにとって、毎月の修繕積立金は決して小さな支出ではありませんが、安全かつ入居者が絶えないマンション経営を行うためには、適切な金額を毎月積み立てる必要があります。
マンション経営を考えている人は修繕費積立金もしっかり視野に入れて、資金計画を立てるようにしましょう。