解体費用の勘定科目は目的に応じて仕分けが異なる

解体費用の勘定科目は目的に応じて仕分けが異なる

解体費用の勘定科目を教えて!

解体費用は目的に応じて勘定科目が異なります。

目的が建物の撤去なら固定資産除却損建替なら建設仮勘定原状復旧なら修繕費が適切な勘定科目となります。

▼解体費用の勘定科目

目的勘定科目
建物の撤去固定資産除去損
建替建設仮勘定
現状復旧修繕費

本記事では、解体費用の勘定科目と仕訳のルール、節税対策に役立つ確定申告の進め方などをご紹介します。

解体工事をご検討中の方は、予算として解体費用がいくらになるか把握しておきましょう。以下のツールでは、ご自宅の解体費用を自分で見積ることができます。ぜひご活用下さい。

▼解体費用の基礎知識について知りたい方はこちらの記事をご確認ください。

家の解体費用の相場はいくら?金額の決まり方まで解説

解体費用の発生と仕分けの流れ

まずは確定申告における仕訳のルールと、勘定科目の内容・考え方について解説しましょう。

解体費用の発生と仕訳までの流れは、以下の通りです。

▼解体費用の発生と仕分けの流れ

  1. 取引が発生
  2. 取引が「資産」と「費用」のどちらに属するか決める
  3. グループで使う勘定科目を決める
  4. 金額を計算して記帳

まず、取引が発生したら、「資産・負債・費用・収益」のうち、どのグループに属するか判断し、各グループに割り振ります。

各グループには決まった勘定科目が用意されており、各勘定科目の中から選ぶことで仕訳できます。

勘定科目は取引の目的に応じて決まり、目的が建物の撤去なら固定資産除却損建替なら建設仮勘定原状復旧なら修繕費となります。

ご自宅の解体をご検討中の方は、以下のツールから解体費用がいくらか自分でシミュレーションしてみましょう。

私の家の解体費用はいくら?

解体費用の勘定科目の4グループ

解体費用の勘定科目には「資産・負債・費用・収益」の4つのグループがあります。

主要勘定科目内容
①資産現金、預金、売掛金、建物など
②負債買掛金、未払金、預かり金、借入金など
③収益売上高、雑収入など
④費用商品仕入高、給料、旅費交通費、消耗品費など
取引が発生したら、どの勘定科目に該当するかチェックしましょう。

「資産」の勘定科目では、現金や有価証券に加えて、土地・建物・備品などの資産価値があるものが増加・減少した際に使用します。

「負債」の勘定科目では、金融機関からの借入金や未払金などの「負の資産」の増加・減少で使用します。

「収益」の勘定科目ではアパート・マンションの家賃収入などの売上高を計上する際に使用し、費用勘定は事業に関わる経費を計上した際に使用する性質を持ちます。

このうち建物の解体費用が属するグループは、「費用」もしくは「資産」のいずれかとなります。

費用勘定と資産勘定の区別に関しては、次項で詳しく解説します。

解体費用の勘定科目は工事の目的で決まる

解体費用を費用計上するか、もしくは資産計上するかは解体工事の目的によって異なります。

建物を取り壊し解体費用が発生するケースには、主に以下の2つのパターンが挙げられます。

  • 建物の撤去が目的の場合
  • 建て替えが目的の場合

各目的ごとに勘定科目の選び方を解説しましょう。

建物の撤去が目的の場合

古い建物を解体後、新しい物件を新築する予定がない場合には、解体費用は「固定資産除却損」の勘定科目を使い、費用として仕訳を行います。

固定資産除却損とは、建物や土地などの固定資産を処分する際に発生した費用を指します。

たとえば、100万円の帳簿価格が残っている建物を、更地にするために、解体費用500万円を現金で支払った場合には、次のように記帳します。

借方金額貸方金額
固定資産除却損600万円現金500万円
建物100万円

なお、解体工事は通常の取引で頻繁に発生するものではないため、「特別損失」または「営業外費用」に分類されます。

建て替えが目的の場合

建物の建て替えを目的に解体工事を行う場合には、解体費用は新築する建物の取得費用の一部とみなされます。

つまり、解体費用がそのまま建物の資産価値として計上される形です。

この場合に使用されるのは、資産グループの「前払金」と「建物」という勘定科目です。

具体的な仕訳例として、500万円の解体費用で古い建物を取り壊し、新築費用が1,000万円の建物へ建て替えた場合、まず解体費用を支払った際に以下のように記帳されます(支払いは全て現金とします)。

借方金額貸方金額
前払金500万円現金500万円

新しい建物を建築した際の仕訳は、以下の通りです。

借方金額貸方金額
建物1,500万円現金1,000万円
前払金500万円

建物の撤去のみの場合は費用グループの「固定資産除却損」の勘定科目、建て替えの場合は資産グループの「前払金」「建物」の勘定科目を使うことを押さえておきましょう。

節税対策になる解体費用の勘定科目の選び方

解体費用はその年の経費として、費用勘定での一括計上が可能なため、所得を圧縮して所得税の負担を軽減することができます。

ただしその年の利益が少ない場合には、費用勘定で計上しても節税効果が薄くなってしまうこともあります。

ここでは解体費用の勘定科目の選び方について、節税対策の観点から見ていきましょう。

ポイントとなるのは以下の4つの考え方です。

  • 単年の利益が大きい場合は「費用」計上
  • 損益通算・純損失の繰越控除も考慮する
  • 将来の利益が見込まれる場合は「資産」計上
  • 減価償却が節税になる理由

それぞれ詳しく解説します。

単年の利益が大きい場合は「費用」計上

解体工事を実施した年の利益が平年よりも多く、所得が高額になる場合には、経費計上することで大きな節税メリットが得られます。

この場合の解体費用は、「費用」グループの勘定科目である「固定資産除却損」で計上します。

損益通算・純損失の繰越控除も考慮する

その年の利益がほとんど発生していない場合には、一括で経費計上することで赤字決算となるケースもあるでしょう。

その場合には、青色申告で確定申告している方であれば「損益通算」や「純損失の繰越控除」が利用可能です。

損益通算とは、不動産所得の赤字を給与所得などの他の所得と相殺できる仕組みです。

純損失の繰越控除は、その年の赤字を翌年以降の3年間にわたり繰り越せる制度です。

損益通算により他の所得と相殺しても赤字が残る場合に利用できるのが、純損失の繰越控除となります。

解体費用が高額となり、その年の確定申告が赤字になる場合にも、費用計上したことでデメリットが生じるわけではない点を押さえておきましょう。

将来の利益が見込まれる場合は「資産」計上

新築アパートなどに建て替えて、将来に利益が見込まれる場合には、資産計上することで大きな節税メリットが受けられます。

解体費用を「前払金」「建物」として資産計上した場合、耐用年数に応じて古い建物の解体費用を少しずつ経費計上します。

たとえば、解体費用を含めた取得価格2,200万円の木造アパートの場合、22年にわたり100万円ずつ経費計上するといったことも可能です。

解体費用を複数年に分割して経費計上することで、長期間にわたる利益をその年ごとに圧縮できるメリットがあります。

減価償却が節税になる理由

前項で解説した方法で経費計上することを「減価償却」と呼びます。

減価償却は、固定資産の取得費用を一括で経費計上するのではなく、法定耐用年数に定められた年数に分割して経費計上することを指します。

木造アパートの法定耐用年数は22年のため、2,200万円の建物は毎年100万円ずつ、22年にわたり経費計上が可能になります。

なお、減価償却は土地に適用することができないため、古家付き土地を購入して解体工事を行う場合などはご注意ください。


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個人の確定申告における解体費用の勘定科目

個人が、所有する自宅や賃貸物件を解体する場合、解体後に新築の賃貸物件を建てるケースもあれば、自宅用に転用してご自身で住むケースなども考えられます。

各ケースでは経理処理上、使用すべき勘定科目が異なるため、ここでは個人の確定申告における解体費用の扱いについて、それぞれのケースを解説します。

自宅を解体する場合

自宅として使用していた家の解体工事を行う場合、更地にした土地の使用目的には以下の3つのパターンが考えられます。

  • 自宅解体後の土地を譲渡・売却するケース
  • 自宅解体後に賃貸物件を新築するケース
  • 自宅解体後に自宅を新築するケース

土地の譲渡・売却を行うケースでは、不動産所得の経費にはなりませんが、譲渡所得の経費(譲渡費用)に含めて計上することが可能です。

これは、解体費用は譲渡する土地の取得のために発生した費用とみなされることが理由です。

自宅を賃貸物件に建て替える場合には、解体費用は家事費として扱われ、不動産所得の経費としては認められないのが通例です。

ただし賃貸併用住宅を解体した場合には、解体費用の一部が経費として認められます。

古い自宅を新築の自宅に建て替える場合も、解体費用は経費としては認められません。

賃貸物件を解体する場合

賃貸物件を解体する場合の解体費用の扱いに関しても、以下の3つのパターンで解説しましょう。

  • 賃貸物件解体後の土地を譲渡・売却するケース
  • 賃貸物件解体後に賃貸物件を新築するケース
  • 賃貸物件解体後に自宅を新築するケース

賃貸物件を解体して更地の土地を譲渡・売却するケースでは、自宅の解体と同様に、譲渡所得から控除する譲渡費用に含めることが可能です。

賃貸物件を新築に建て替える場合には、不動産所得の経費として全額計上が可能です。

その場合には前述の通り、解体工事の際には解体費用を「前払金」として計上し、新築時に「建物」の取得費用に含めて仕訳を行います。

賃貸物件を解体後、自宅に建て替える場合には、原則として経費計上は認められません。

ただし、老朽化や災害により倒壊の危険性がある建物の場合、解体費用を経費計上できるケースもあります。

解体費用の勘定科目に迷う場合は税務署に相談を

解体費用の仕訳で使用する勘定科目は、費用グループの「固定資産除却損」または資産グループの「前払金」「建物」を使用します。

費用計上した場合には単年の節税効果が大きくなる一方で、資産計上をした場合には長期的な節税効果がある点を押さえておくと良いでしょう。

また、自宅を賃貸物件に立て替える場合や、賃貸物件を自宅に建て替える場合などは、それぞれのケースで経費計上ができるかどうかが判断されます。

賃貸併用物件の解体・建て替えなど、勘定科目や仕訳について不明な部分が出てきた際には、管轄の税務署に問い合わせましょう。

なお、解体後の土地の収益化を考えている方は、「イエウール土地活用」もご利用ください。イエウール土地活用は、業界大手10社から土地活用プランを一括で取り寄せられるサービスです。ご希望の予算や収益性に応じた土地活用プランを選べるため、まずは無料の土地活用診断をお試しされてはいかがでしょうか。

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