ただし、自治体によっては予算の都合で制度自体を設けていないケースもあります。また、支給条件を満たしてなかったり、決まった手続きを行っていなかったりする場合も補助金は利用できません。
本記事では、空き家解体で補助金の利用を検討されている方に対して、補助金制度の概要や支給額の目安、手続き上の注意点について解説しています。

ファイナンシャル・プランナー(一級FP技能士・CFP®)、住宅ローンアドバイザー。大手金融機関に入行後、10年超勤務。ファイナンシャル・プランナーとして独立後は、幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプランなどの個別相談・セミナー講師・執筆などを行っている。
岩永 真理 公式ホームページ
空き家解体の補助金は自治体から支給される
冒頭でも解説しましたが、空き家解体のための補助金は自治体から支給されます。
地域の安全維持が目的とされる
補助金制度の目的として、
- 倒壊の危険性が高い古家を除却し地域の安全を守る
- 放置された空き家を除却し地域の景観や治安を守る
があります。
空き家は、放置し続けると、古くなることで倒壊したり、自然発火や放火などで火災の原因になったりして、地域の安全が損なわれるリスクある存在となります。よって、解体費用を補助することで除却を促し、安全確保につなげているのです。
以下は空き家解体でよくある補助金制度の種類ですが、いずれも住環境悪化させる空き家が対象とされています。
▼空き家解体でよくある補助金制度の種類
補助金制度の種類 | 概要 |
---|---|
老朽危険家屋解体撤去補助金 | 倒壊の危険性が高い家屋を除却するための補助金制度 |
都市景観形成地域老朽空き家解体事業補助金 | 都市の景観を損ねる空き家を除却するための補助金制度 |
空き家解体撤去助成金 | 空き家の解体費用を補助する制度 |
補助金の財源は国や地方公共団体
補助金の財源は、国や地方公共団体から支給されています。
自治体によっては制度自体がないケースも
補助金は自治体により支給されますが、自治体によっては制度自体を設けていないこともあります。
実際に補助金が使えるかどうかは、空き家を管轄する自治体の公式ホームページから概要を調べておきましょう。
私の家の解体費用はいくら?
空き家解体の補助金の上限は100万円
空き家解体の補助金の上限は100万円が目安です。ただし、自治体によって異なりますので、建物が所在する自治体に確認してください。
一般的に解体工事にかかった費用の一定割合か、または上限金額が定められているので、お近くの自治体の制度を確認するのがおススメです。
自治体によって上限が異なる
以下は各自治体の空き家解体補助金の上限額の事例です。自治体に応じて上限にバラつきがあることがわかります。
自治体名 | 制度名 | 上限額 |
長野県長野市 | 老朽危険空き家の解体工事補助金 | 100万円 |
福岡県芦屋町 | 芦屋町老朽危険家屋等解体補助金制度 | 100万円 |
熊本県天草市 | 老朽危険家屋等除却促進事業 | 50万円 |
福岡県飯塚市 | 飯塚市老朽危険家屋解体撤去補助金制度 | 50万円 |
東京都西東京市 | 木造住宅耐震改修等助成制度 | 30万円 |
空き家解体補助金は自治体ごとに設けられている制度なので、上限も自治体ごとに決められている点、解体工事費の一定割合以内などその他の条件がある点に注意してください。
必ずしも上限が支給されるわけではない
前述したとおり、必ずしも上限まで支給されるわけではなく、
- 解体工事にかかった費用の一定の割合
- 自治体が規定する基準額(面積基準坪単価に延べ床面積をかけた金額など)
- 上限額
のいずれかのうち、「最も低い金額」が支給金額に設定されていることが多いです。
例えば、名古屋市の空き家解体補助金の場合以下のいずれか低い金額の3分の1を助成します。(上限額40万円)
- 対象住宅を除却する費用
- 対象住宅の延床面積に1平方メートル当たり9,600円を乗じた額
空き家解体補助金のよくある支給条件
制度の内容は自治体によって異なりますが、よくある支給条件には以下のようなものです。
▼空き家解体補助金のよくある支給条件
- 条件①1年以上住んでいない空き家である
- 条件②現耐震基準を満たしていない
- 条件③倒壊の危険性が高いほど老朽化している
条件①1年以上住んでいない空き家である
空き家解体補助金の条件としてまず挙げられるのは、「空き家であること」です。
空き家の定義は空き家等対策特別措置法によって法的に定められており、更に国土交通省の指針によると以下に該当する場合です。
▼空き家の定義
- 1年以上住んでいない、使われていない家
- 人の出入りがなく電気・ガス・水道などの使用がなされていない状態にある
また、空き家のなかでも、「特定空き家」と自治体から指定された空き家は基本的には補助金の支給対象になりやすいといえます。
「特定空き家」とは、空き家対策の推進に関する特別措置法によって次の状態が認められる空き家のことです。
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
条件②現耐震基準を満たしていない
次に、現耐震基準を満たしていない空き家も補助金の支給条件になることがあります。
現行の耐震基準は地震に耐えることができる構造の基準で、1981年(昭和56年)5月31日までに建築確認で適用されていた基準を「旧耐震基準」(震度5強程度でも倒壊しない)、その翌日以降に適用される基準を「現耐震基準」(震度6強~7程度でも倒壊しない)といいます。
条件③倒壊の危険性が高いほど老朽化している
空き家が倒壊の危険性が高いほど老朽化している場合も補助金の対象となり得ます。
老朽化の判断基準は、特定空き家等のほかに住宅地区改良法に規定する「不良住宅」に該当するものがあります。
実際の判定は、補助金申請後に自治体の職員による現地調査で行われます。専門家による判定が必要な点に注意しましょう。
次のツールでは解体費用の金額を無料で概算できます。ぜひご活用ください。
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空き家解体の補助金の事例
空き家解体の補助金の支給額と条件について解説しましたが、実際の制度の内容は、どのようになっているのでしょうか?
本章では、空き家解体の補助金の支給額と条件をわかりやすく解説しています。
▼空き家解体の補助金の事例
- 東京都杉並区の「老朽危険空き家除却費用の助成制度」
- 静岡県浜松市の「浜松市空き家等除却促進事業費補助金」
- 大阪府大阪市の「空き家の解体やリフォームに使える補助制度」
- 広島県あきたか市の「空き家解体事業補助金」
東京都杉並区の「老朽危険空き家除却費用の助成制度」
東京都杉並区の「老朽危険空き家除却費用の助成制度」は、老朽化が著しく、倒壊の危険性の高い空き家を除却・解体する場合、対象となる工事費用の一部を区で補助しています。
制度名 | 老朽危険空き家除却費用の助成制度 |
支給金額 | 除却工事費の80%、または150万円のいずれか低い額 |
支給条件(一部) |
|
静岡県浜松市の「浜松市空き家等除却促進事業費補助金」
静岡県浜松市の「浜松市空き家等除却促進事業費補助金」では、老朽化した危険な空き家の増加を抑制するため、除却費用の一部を補助しています。
制度名 | 浜松市空き家等除却促進事業費補助金 |
支給金額 | 解体費用の3分の1(最大50万円) |
支給条件(一部) |
|
参考:静岡県浜松市公式_浜松市空き家等除却促進事業費補助金について
大阪府大阪市の「密集住宅市街地整備のための補助制度」
大阪府大阪市の「密集住宅市街地のための補助制度」では、幅員4m未満の狭い道路に面する昭和25年以前に建てられた木造住宅を解体する場合、解体費用の一部を補助します。
火災で燃え広がる危険性が高い密集市街地の防災性の向上を図るため、「対策地区」と「重点対策地区」を設定し、各種補助制度を実施しています。
制度名 | 密集住宅市街地整備のための補助制度 |
支給金額 |
|
支給条件(一部) |
|
参考:大阪府大阪市公式_密集住宅市街地整備のための補助制度について
広島県あきたか市の「空き家解体事業補助金」
広島県あきたか市の「空き家解体事業補助金」では、老朽化した不良な空き家を解体する費用の一部を補助しています。
制度名 | 空き家解体事業補助金 |
支給金額 |
|
支給条件(一部) |
|
参考:広島県あきたか市公式_空き家解体事業補助金制度について
空き家解体で補助金を利用するための手続き上の注意点
ここまで空き家解体の補助金制度について解説してきましたが、利用する際に注意したい手続き上の注意点がいくつかあります。
把握していないと補助金自体が利用できなくなってしまうこともあるので、しっかりと確認しておきましょう。
受け取れるのは工事終了後
補助金を利用する際に注意しなければならないのは、補助金や助成金を実際に受け取れるのは工事完了後であり、解体費用は一旦全額自己負担する必要があるということです。
補助金や助成金は、解体工事が終わって、解体証明書や解体費用の領収書を行政が確認して初めて給付されます。
そのため、最終的には補助金や助成金で解体費用の一部を賄うことができますが、最初は全額自分で支払う必要があることを念頭に置いて資金繰りを行うことが重要です。
申請は工事前に必ず行う
空き家解体補助金の申請は解体工事前に必ず行いましょう。
この順序を間違えて申請前に着工してしまうと、建物の状態が把握できないまま解体されることになってしまい、行政による建物状態確認ができず自動的に補助金給付対象からは除外されます。
予算に上限がある
空き家解体補助金には予算(年度内の支払い総額)が設定されており、予算内に収まれば支給対象となりますが、予算を超えてしまった場合は支給されないことがあるため注意しましょう。
また、支給は先着順によって決まります。
補助金制度の予算は4月の年度始めに新しくなることが多いため、解体工事を年度始めに計画する等、予算枠がある時期に補助金の申請を行うようにしましょう。
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