老朽化したアパートを建て替える場合、家賃収入がストップする時期が発生するほか、立ち退き料や解体費用などのコストが必要になります。
これらの費用は、確定申告でアパート経営に必要な経費として計上することが可能です。
ただし、アパートを建て替えて自宅を建てる場合や、土地を売却する場合などは経費として認められないケースがあるため注意が必要です。
本記事では、賃貸アパートを建て替えた年の確定申告の手続きと、経費算入できる費用、そして確定申告での注意点について解説します。
アパートの建て替え費用を経費として確定申告するには?
賃貸アパートの建て替え費用は、原則として経費に計上して確定申告をすることが可能です。
ただし、アパートを解体した後の土地を、賃貸アパート以外の用途で使う場合には、経費として認められない可能性があります。
経費に計上できるかどうか、判断するポイントは以下の3点です。
- 賃貸アパートを再建築する場合
- 自宅を建てる場合
- 土地を売却する場合
それぞれ解説します。
賃貸アパートを再建築する場合は経費になる
古い賃貸アパートを解体し、新しい賃貸アパートを再建築する場合には、確定申告時に建て替え費用を経費計上することが可能です。
賃貸アパートに限らず、戸建てやマンションを建てる場合も同様です。
アパート経営の収益は不動産所得とみなされ、賃料収入からアパート経営に必要な経費を差し引いた金額が、課税対象の金額となります。
そのため賃貸住宅を再建築して、継続して不動産事業を行う場合には、建て替え費用はアパート経営に必要な経費として認められます。
自宅を建てる場合は経費にならない
賃貸アパートを解体した土地を、自宅用など別の用途で使用する場合には、建て替え費用の経費計上は難しくなります。
事業用ではなく生活用に土地を使うための建て替え費用は、家事費(生活費)の一部とみなされるためです。
賃貸アパートの建て替え費用は、再建築する物件によって経費計上が認められるかどうかが決まる点に注意しましょう。
土地の売却では譲渡費用に計上できる
賃貸アパートを取り壊し、更地にした土地を売却する場合にも、不動産所得の確定申告では経費計上できません。
ただし、不動産の売却益は譲渡所得となり、譲渡費用として建て替え費用を計上することは可能です。
つまり、売却金額から建て替え費用を差し引いて、譲渡所得を申告できます。
なお、譲渡費用として計上できる費用には、不動産会社に支払う仲介手数料や印紙税なども挙げられます。
アパート解体後に土地を売却する場合には、不動産所得の経費ではなく、譲渡所得の譲渡費用として計上することを押さえておきましょう。
アパートの建て替えにかかる費用と経費になるケース
アパートの建て替え費用には、主に以下の4種類が含まれます。
- 立ち退き料
- 資産損失
- 解体費用
- 新築費用
それぞれの費用を確定申告する際のポイントを解説しましょう。
立ち退き料
建て替えるアパートに入居者が残っている場合には、立ち退き料を支払って立ち退きを求める必要があります。
立ち退き料の相場は、家賃の約6ヶ月分です。
この立ち退き料の中には、引っ越し先の初期費用や引っ越し費用なども含まれます。
立ち退き料は、賃貸アパートを再建築する場合に経費計上ができるほか、自宅を建てる場合にも経費計上が可能です。
土地を売却する場合には、譲渡費用として認められます。
資産損失
資産損失とは、賃貸アパートの建物や設備のうち、減価償却資産が残っている状態で取り壊した際の未償却残額を指します。
減価償却がされていない資産が残っている状態、つまり建物や設備の価値が残っている状態で解体した場合の損失額が、資産損失相当額です。
築浅の物件ほど資産価値が残っているとみなされ、解体によって失われてしまう資産価値が大きくなります。一方で築古の物件では、ほとんど資産価値が残っていないとみなされ、資産損失相当額は少なくなります。
なお、減価償却が行われるのは建物の法定耐用年数までとなっており、木造アパートの耐用年数は22年、鉄骨造は19年〜34年、鉄筋コンクリート造は47年です。
そのため、築23年の木造アパートを解体した場合には、建物の資産損失はゼロとなります。
資産損失相当額は、賃貸アパートを再建築する場合に経費計上できるほか、自宅を建てる場合にも経費計上が認められています。
土地を売却する場合には、譲渡費用として計上することが可能です。
解体費用
古い賃貸アパートの解体費用は、建物の構造により1坪あたり4万円〜9万円程度が相場となります。
木造・鉄骨造・RC造(鉄筋コンクリート造/Reinforced Concrete Construction)の1坪あたり解体費用は、以下の通りです。
- 木造:4万円〜6万円
- 鉄骨造:7万円〜8万円
- RC造:8万円〜9万円
上記の坪単価にアパートの延べ床面積を掛けると、解体費用の目安がわかります。そのため2階建てや3階建ての建物になるほど、解体費用は高額になります。
解体費用は、賃貸アパートを再建築する場合は経費計上が可能ですが、自宅を建てる場合には家事費とみなされ経費計上はできません。土地を売却する場合には、譲渡費用に含めることができます。
▼解体費用の基礎知識について知りたい方はこちらの記事をご確認ください。
新築費用
賃貸アパートの新築にかかる費用は、建物の構造により1坪あたり56万円〜125万円が相場です。
各構造別の坪単価は、下記の通りになります。
- 木造:56万円~75万円
- 鉄骨造:83万円~110万円
- 鉄筋コンクリート造:83万円~110万円
- 鉄骨鉄筋コンクリート造:96万円~125万円
これらの坪単価に、新築するアパートの延べ床面積を掛けると新築費用を概算できます。
建物の階数が多いほど新築費用は高額になります。
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アパートを建て替えた年の確定申告で注意すべきポイント
アパートを建て替えた年の確定申告では、不動産所得が赤字になる可能性が高くなるほか、立ち退き交渉が延びて、建て替え時期が予定よりも遅延することも考えられます。
ここではアパートの建て替えに伴う確定申告の注意点として、以下の4つを解説します。
- 契約書や領収書を必ず保管する
- 赤字の場合にも必ず確定申告をする
- 立ち退き交渉は速やかに行う
- 不明点は専門家に相談する
契約書や領収書を必ず保管する
アパートの建て替え費用にまつわる関係書類は、紛失しないよう確実に保管しておきましょう。
解体工事の契約書や領収書、立ち退き料の明細がわかる書類などを用意しておくことで、確定申告をスムーズに進めることが可能です。
書類の紛失や経費の計上漏れが発生すると、不動産所得が本来よりも高額になり、納めるべき税金も増加してしまいます。
効果的な節税対策のためにも、契約書や領収書などの書類はまとめて保管しておくことが大切です。
赤字の場合にも必ず確定申告をする
アパートを建て替えた年の確定申告では、賃料収入が減少し、経費が増加することで、不動産所得がマイナスになる可能性も高くなります。
その年の収支が赤字の場合、確定申告は義務ではありません。しかし不動産所得の赤字は、その年の給与所得や事業所得など他の所得との合算(損益通算)ができます。
つまり、不動産所得が赤字の場合でも確定申告をすることで、不動産所得のマイナス分を、他の所得の金額から差し引き、納めるべき所得税を節税できるメリットが得られるのです。
給与所得を得ている方であれば、確定申告により払い過ぎた所得税の還付を受けられることもあります。
赤字を3年間繰り越せる「純損失の繰越控除」
また、その年に損益通算できる所得が他にない場合にも、「純損失の繰越控除」により、赤字を3年間繰り越すことが可能です。
たとえば建て替え後の新築アパートで大きな賃料収入が発生し、所得税が高額になりそうな場合でも、前年の赤字と相殺することで不動産所得を抑えることができ、節税につながります。
その結果、建て替えた年に確定申告をしなかった場合と比較して、高い節税効果を得られる可能性が出てきます。
税金に関する正しい知識や情報を確認し、その年の収支が赤字の場合にも確実に確定申告を行うことが大切です。
立ち退き交渉は速やかに行う
アパートの建て替えに伴って、入居者の立ち退き交渉が必要になる場合には、建て替えが決定したら速やかに交渉に入ることが大切です。
不動産所得を含む所得税の確定申告は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に発生した所得をもとに計算します。
そのため立ち退き交渉が難航し、アパートの建て替え時期が後ろ倒しになった場合、経費計上のタイミングが翌年になる可能性も出てきます。
経費計上ができず、その年の所得税が思わぬ金額になってしまわないよう、アパートの建て替えに伴う赤字を損益通算で相殺したい場合には、速やかに立ち退き交渉を行いましょう。
立ち退き交渉は、少なくとも立ち退き期日の6ヶ月前には入居者に申し入れ、もし資金に余裕がある場合は、早く退去してもらえる入居者には立ち退き料を上乗せして交渉するとスムーズです。
不明点は専門家に相談する
本記事で解説してきた通り、アパートの建て替え費用には経費として確定申告できるケースとできないケースがあります。
その年の赤字を、損益通算や純損失の繰越控除を利用して節税につなげたい場合などは、税理士などの専門家にアドバイスをもらいながら確定申告を進めることをおすすめします。
正しい確定申告の進め方を相談したい場合には、所轄の税務署に問い合わせることも可能です。
アパートを建て替えた年の確定申告は経費・損益通算で節税を
アパートの建て替え費用は、建物を解体した後の土地をどう利用するかによって、経費計上ができる場合とできない場合があります。
建て替え費用には、立ち退き料・資産損失・解体費用に加えて新築費用も必要になるため、それぞれの費用相場を押さえておくことも大切です。
確定申告について不明点がある場合や、効果的な節税方法について相談したい場合には、専門家の力も借りましょう。
なお、アパートの建て替えに伴い、駐車場経営や太陽光発電など、さまざまな土地活用も検討している方は、「イエウール土地活用」で土地活用プランを取り寄せてみてはいかがでしょうか。
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記事のおさらい