マンション経営を行う上で車の利用が欠かせない場合が存在しますが、車は経費として計上可能なのでしょうか。
本記事では車が経費として認められる範囲や減価償却の計算方法に加え、注意点などを詳しく説明します。
マンション経営で車は経費になる?
マンション経営において車は経費になります。車の購入費用はもちろんのこと、ガソリン代や車の修理代金など車に関する費用も経費になります。
とはいえ、車に関する費用が全てがマンション経営の費用になるとは限りません。1章では車に関する費用についてどのように考えていけばいいのかを説明します。
プライベート利用と区別する家事按分
マンション経営で経費となるのは、マンション経営に直接関係ある車に関する費用に限ります。
ですが、車に関連する費用はマンション経営の経費とプライベートの費用を細かく区別することが難しいです。
そのような場合は「家事按分(かじあんぶん)」の考え方を取り入れます。家事按分とは、かかった費用をマンション経営に関係した割合とプライベートで使用した割合に分けて計算する方法です。
たとえば、1週間に3日、賃貸管理会社やマンションの往復に車を使用した場合、週のうち7分の3利用で約4割はマンション経営事業に関する面目で車に乗っているということになります。
仮に年間のガソリン代が30万円とすると約4割を経費として計上することができるので経費の費用は約12万円になります。
マンション経営で車が経費として認められる範囲
ここではマンション経営に関係する車の費用について、具体的にどのような費用が経費として認められるのかを紹介します。
車の購入費用
車の購入費用はマンション経営の経費になります。
マンション経営のみの利用で購入する場合、減価償却で全額経費としての計上は可能です。
ですが、マンション経営以外にプライベートで利用する場合には「家事按分」という方法で計上します。
マンション経営のために車を使用したことを証明できる領収書などを保存しておきましょう。
保険料
車を購入すると「自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)」に加入します。車の所有者は必ず加入することが法律で義務付けられています。
自賠責保険に関しても、マンション経営における費用として一部を経費として計上が可能です。
税金
車を所有している人は以下の税金が課せられます。
- 自動車税 / 軽自動車税
- 自動車重量税
- 環境性能割
- 消費税
これらの税金に関しても一部マンション経営の経費になります。
車検費用
車を所有している人であれば、誰もが受けなければならない車検に関しても一部経費として計上できます。
新車の場合は、新車として登録してから最初の車検は3年経過時、以降は車齢にかかわらず2年ごとに車検を受けるように定められています。
費用の目安は軽自動車であれば「6万円~12円」普通車で「7万円~20万円」になります。
車の修理代
マンション経営に利用している車が故障した際、その修理代もマンション経営の経費の範囲内になります。
ですが、プライベートでも私用している車の場合、マンション経営に関する用事で利用していた際に起きた事故を原因とする場合の修理代のみが対象となります。
ガソリン代
例えば、自宅からマンションへの往復にかかったガソリン代など、マンション経営に関係する用事で移動した分の距離に該当するガソリン代については経費になります。
マンションへの走行距離をカーナビなどの履歴に残している場合は、「使用量」で判断することも可能です。
駐車場代
マンション経営に関する用事で車を利用し、その際にかかった駐車場代は経費として計上可能です。
例えば、管理会社に出向く際に利用した駐車場料金や、投資物件の内覧の際に出向いた先での駐車場代。旅行などのプライベートで車を利用した際の駐車場料金は対象外です。
車に関する設備にかかる費用
カーナビや、ドライブレコーダーなど健全なマンション経営を運営するうえで必要な正当な理由がある場合は経費として認められます。
マンション経営における車の減価償却
車などの固定資産の取得にかかった費用の全額をその年の費用とせず、耐用年数に応じて配分し計上することを減価償却といいます。
減価償却を計算する方法には、定率法と定額法があります。原則的に法人は定率法を用いて処理し、個人事業主は定額法を用いて処理するように定められています。
それぞれの計算方法の違いや実際の計算例を説明します。
定額法
「定額法」とは、毎年同額を計上していく方法です。具体的な計算方法は「車の取得価額×定額法の償却率」となります。
ただし、事業年度の中途において車を購入した場合や私用でも車を利用している場合は家事按分を採用し「車の取得価額×定額法償却率×車を使用した月数÷事業年度の月数」で計算されます。
参考:償却率の早見表
新車の場合
250万円の新車を購入して、定額法で減価償却した時の減価償却費
250万円×0.167(耐用年数6年)×12/12=417,500円
中古車の場合
耐用年数が4年の中古車を250万円で購入して、定額法で減価償却した場合の減価償却費
250万円×0.250×12/12=625,000円
- 中古車における耐用年数の考え方
法定耐用年数は新車(6年)を基準にしており、中古車の耐用年数を知りたい場合は次の計算式に当てはめて算出します。
<法定耐用年数の全部を経過している中古車>
法定耐用年数×20%
<法定耐用年数の一部を経過した中古車>
法定耐用年数 − 経過年数 + 経過年数×20%
定率法
「定率法」とは、取得した資産の未償却残高に、一定の償却率を乗じて毎期減価償却費を計上していく方法です。
定率法を利用して減価償却費を計上する場合の具体的な計算方法は、初年度の場合「車の取得価額×定率法の償却率×車を使用した月数÷事業年度の月数」
2年目以降は「(車の取得価額−減価償却累計額)×定率法の償却率×車を使用した月数÷事業年度の月数」となります。
どちらの計算方法でも、残存価額が備忘価額である1円まで減価償却していきます。
新車の場合
250万円の新車を購入して、定率法で減価償却した時の減価償却費
250万円×0.333(耐用年数6年)×12/12=832,500円
中古車の場合
耐用年数が2年の中古車を200万円で購入し、定率法で減価償却した場合の減価償却費
200万円×1.000×12/12=2,000,000円
経費計上のポイントと注意事項
ここではマンション経営において、車を経費として計上する際の注意点を紹介します。
領収書はきちんと保管・整理しておく
駐車場代やガソリン代など、マンション経営に関連した車の出費が生じた際は領収書を貰うことを忘れずに注意してください。
さらには、白色申告の場合は5年、青色申告の場合は10年間、領収書の保管義務があります。
税務署から要請があった際に、速やかに提出できるよう日頃から整理しておきましょう。
日時や距離の記録を取っておく
マンション経営に関連した車の「使用量」の根拠となる記録を残しておく必要があります。
例えば、賃貸管理会社やマンションへの往復、税理士や弁護士との打ち合わせへの移動で車を利用した場合はカーナビなどで実際に移動した日時や距離の記録を取っておきましょう。
後から見返すことで確定申告時に、私用利用と事業利用での按分がしやすくなります。また、税務署から要請があった場合にこれらの記録は実際にマンション経営の事業用として私用した根拠として提出が可能です。
経費の目安は全体の30%
マンション経営に関係する利用と私用利用を明確に区分でき、根拠となる記録などがあればそのまま経費として反映することができます。
ですが、毎回記録を取っておく、領収書の保管が困難な場合もあります。そういった場合は車に関する費用全体の30%程度であれば税務調査で否認される可能性が少ないとされています。
まとめ
マンション経営において車を経費として計上する場合、車の購入費用や自動車税、ガソリン代など、車にかかる費用の経費計上が可能です。
ですが、事業用と私用で使い分ける必要があり、マンション経営で使う分のみを経費計上する必要があります。
マンション経営初心者は経費に関する範囲が曖昧な場合が多く、誤申告を避けるためにも専門家に相談することをおすすめします。