区分マンション経営を検討している人は、「利回りの相場はどれくらいなのだろう。」という疑問を持っていることが多いでしょう。
そのため、本記事では区分マンション経営について基本から、利回りの相場や物件選びのコツ、利回りが変動する要因などについて解説しています。
区分マンションの利回り相場と最低ライン
区分マンションの表面利回りの相場は5%~7%で、最低限の利回りは約3%です。
ただし、区分マンションの利回りは、地域や物件の種類によって異なります。それぞれの相場について見ていきましょう。
都心の区分マンション
「不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家 ( けんびや ) 」の『収益物件 市場動向四半期レポート』によると、2021年の1月~3月の都心の区分マンションの利回りは7%となっています。
都心部に位置する区分マンションは、需要は高いですが物件価格が高いため利回りは比較的低めになることがあります。しかし、交通の便が良く、周辺に商業施設や観光スポットがある場合は特に人気があるため、売却を考えて都心の区分マンションを選ぶのはおすすめです。
地方の区分マンション
「不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家 ( けんびや ) 」の『収益物件 市場動向四半期レポート』によると、2021年の1月~3月の信州・北陸の区分マンションの利回りは、17.37%となっています。
地方に位置する区分マンションは、都心部に比べて物件価格が安いため利回りが高くなる傾向があります。地域によっては成長が見込まれる場合もあり、将来的な価値の上昇が期待できることもあります。
新築の区分マンション
新築の区分マンションの利回りは2%から4%程度が一般的とされることがあります。
新築の区分マンションは設備や建物の状態が良く、入居者にとって魅力的な点が多いため、通常は比較的高い価格で取引されます。そのため、利回りは一般的に低めとなることがあります。
中古の区分マンション
一般的に中古の区分マンションの利回りは5%から10%程度が目安とされることがあります。
中古の区分マンションは新築に比べて価格が比較的抑えられている場合が多いため、利回りが高めになることがあります。
中古物件は建物の経年劣化があるため、リフォームや修繕費用が必要な場合がありますが、適切な物件選びと管理により、高い利回りを期待できることもあります。
理想の利回りは?
都心部の区分マンションの理想的な表面利回りは、築20年くらいまでなら4%~5.5%ほど、築20年を超えた物件であれば6%~8%程度です。
一方で、地方の区分マンションは利回りの平均を考えること自体をあまりお勧めしません。なぜなら空室のリスクが都心部よりも高く、満室を前提とした表面利回りを見ても、都心部より利回りが高くなるのは当然であるため参考にならないのです。
マンション経営に慣れた人たちは実質利回りを基準にしますが、諸経費・税金なども考慮する必要があるため初心者には難しいでしょう。
区分マンションの利回り
区分マンションの利回りは、不動産投資を考える際に重要な指標となります。利回りは投資した資金に対して得られる収益率のことを指し、以下の2つのタイプがあります。
表面利回り
表面利回りは、物件の年間家賃収入を物件の購入価格で割って計算します。以下の公式で求めることができます。例えば、年間家賃収入が100万円で物件の購入価格が1,000万円の場合、表面利回りは(100 ÷ 1000)× 100 = 10% となります。
実質利回り
実質利回りは、物件の年間家賃収入から経費や維持費を差し引いた実際の収益を物件の購入価格で割って計算します。具体的な経費には管理費、修繕費、税金、空室リスクなどが含まれます。以下の公式で求めることができます:
例えば、年間家賃収入が100万円で経費が20万円、物件の購入価格が1,000万円の場合、実質利回りは(100 – 20) ÷ 1000 × 100 = 8% となります。
実質利回りは表面利回りよりも現実的な利回りを示す指標であり、実際に得られる収益を考慮した評価が行われます。投資物件の選定においては、実質利回りの観点から検討することが重要です。
区分マンション経営の利回りが変動する要因
本章では、区分マンション経営の利回りが変動する要因について解説します。
立地
区分マンションの立地は不動産の価値と賃料に大きく影響を与えます。一般的に都市の中心部や商業地域、交通の便が良い場所にある物件は高い需要があり、家賃も高く設定できます。
また、近くに学校や病院、ショッピングモールがあったり、公共交通機関へのアクセスが良かったりする場所も需要があります。
逆に、遠隔地や治安の悪いエリアは、需要が低く家賃も高く設定できないため、それにより利回りが下がる可能性があります。
家賃収入
家賃収入は区分マンションの所有者が得る主な収益源です。高い家賃を得るためには、市場において競争力のある魅力的な物件条件と価格設定が必要です。
市場調査を行ない、同様の物件の家賃相場を把握することが大切です。また、テナントの選別と良好な管理が安定した家賃収入を確保することに役立ちます。
購入価格
区分マンションの購入価格が利回りに直接影響を与えます。低価格で物件を購入できれば、それほど利回りが高くなります。
ただし、安価な物件は品質や立地条件が悪いことがあるため、リスクを注意深く評価することが必要です。
運営コスト
区分マンション経営の運営コストには、管理費・修繕積立金・不動産税・保険料などがあります。これらのコストが利回りに影響を与えます。
適切な予算管理が必要であり、予想外の修繕費用やコスト増加を最小限に抑えることが大切です。
金利
不動産投資のための融資を受ける場合、借入金利は利回りの大きく影響を及ぼします。低金利の場合は融資のコストが低くなり、利回りが向上する可能性があります。
金利は市場の金利環境や借入条件に応じて変動するため、常に市場に気を張っておくようにしましょう。
市場需要と供給
特定の地域や市場における需要と供給のバランスは、家賃収入と利回りに影響を与えます。需要が供給を上回る場合、家賃を高く設定することができ、利回りを向上させることができます。
また、物件の所在地の将来の成長見通しが不動産価値と家賃に影響を与えます。計画されている新しいインフラ、企業の進出、地域の発展が見込まれる場所は長期的な利回り向上の可能性が高いです。
区分マンションの選び方
区分マンション投資がうまくいくかいかないかは、マンションの選ぶ方によって決まります。
区分マンションを選ぶ際に意識することは以下の通りです。
- 利回りで選ぶ
- 立地で選ぶ
- 築年数で選ぶ
- 総戸数で選ぶ
- 室内の広さで選ぶ
- 法律の観点で選ぶ
- 建築的観点で選ぶ
それぞれ解説します。
利回りで選ぶ
まず物件を判断する材料として、その物件の利回りが相場や属性に対して低すぎないか、高すぎないかを確認しましょう。
低すぎる場合は物件を購入しても赤字になる可能性が高く、高すぎる場合はその物件に過去何か事故があったか賃料を割高で入居しているなどのリスクを背負った物件かもしれません。
多くの場合、利回りは物件概要書の目立つ部分に記載されています。
立地で選ぶ
長く安定した収益を得たい人には首都圏の区分マンションを選ぶことをおすすめします。需要が安定していて空室のリスクが低いため、投資初心者でも成功しやすいのです。
一方、地方の場合はある程度不動産投資の経験を積んでいて、マンション経営の運用に時間を避ける人でないと難しいでしょう。
また、物件が駅の近くにあるか、物件の周りに生活関連施設があるかなど、生活のしやすい立地という点でも重要になることを覚えておきましょう。
築年数で選ぶ
新築物件は銀行から融資を受け易くしばらく修繕費用も掛からないため、自己資金に自信のない人にはおすすめです。
最初は人気があり空室リスクが低いため、初心者でも運用に手間がかかりません。新築の時点で知識と経験を積み、長期的にシミュレーションすることにより中古物件になったあとのリスクにも対応できるでしょう。
中古物件の場合は利回りが高いため、ハイリスクハイリターンを求めるなら良いでしょう。過去のデータから利回りを算出できたり物件の状態を見て修繕計画を立てられたりなど、不動産投資の経験があってある程度の知識と分析力を持った人におすすめです。
総戸数で選ぶ
区分マンションを購入する際は、そのマンション一棟自体の総戸数によっても判断できます。総戸数が少ない物件では管理修繕のコストが割高になります。
区分マンションの所有者が支払うものなので、当然その所有者が多ければ多いほど一人一人の負担が減るのです。また、戸数が少ないと結果的に管理組合が機能しない状態になり、外観の良し悪しにも影響する可能性もあります。
つまり、総戸数の多い物件は資産価値の高い物件であると言えます。
室内の広さで選ぶ
部屋の広さもマンションを選ぶ際の重要な判断基準です。いくら単身向けのワンルームと言えど、狭すぎる場合は競争力がなく厳しい物件となるでしょう。
最低でも20㎡は欲しいところで、設備が新しかったり間取りが広かったりするほど競争力は上がります。ただし、40㎡以上の部屋になると家賃と入居者ニーズがずれてしまい空室になってしまうかもしれないため注意しましょう。
法律の観点で選ぶ
当然ですが、法律に違反しているような物件は避ける必要があります。違法物件は銀行の融資が付きづらく、もしついたとしてもかなり高金利であるため投資の効率が悪いです。
違法物件への対策としては、確認済証が出ているかどうかを判断することです。これは物件の建築前にその建築計画が建築基準法に適しているかを示したものです。
殆どの物件はこれを取得しているため、ない物件には手を出さないようにしましょう。因みに検査済証については取得していない物件も多く、無くても問題ありません。
建築的観点で選ぶ
その物件が入居者のニーズを捉えた建築物かどうかという点が重要です。
例えば、部屋の内装は綺麗か、エレベーターは導入されているか、オートロックが設置されているかなど、これらの要素は入居者によっては必須だったり必要なかったりするような設備であるため、見極めることが必要です。
これらは物件概要書に記載がないことも多いため、その場合は物件を紹介してくれた担当者に設備に関して確認してみると良いでしょう。
利回りが高くても注意すべき物件
利回りを考慮することは重要ですが、それだけで全てを決めてしまうのは危険な行為です。それは、利回りが高くても成功するとは限らない物件が存在するためです。
利回りが高くても注するべき物件とは、空室リスクが高かったり売却が困難になったりする物件のことです。
売却が困難になることが予想される物件は、最初から購入しないことが賢明です。区分マンション経営はそもそも売却で得られる利益ありきで始めるものであるため、売却できないマンションではただの負債になってしまいます。
空室率が高い物件
利回りが高くても、空室率が高い物件は家賃収入が見込めないため赤字になりかねません。空室率の高い物件はそれなりの理由があり、リスクも高いため購入しないようにしましょう。
空室率が高くなる原因としては、以下のことが挙げられます。
- 設備が充実していない
- 物件に魅力がない
- 周辺の競合物件に負けている
- 家賃や敷金・礼金が高い
- 入居者の募集が不足している
上記のような状態の場合空室率は高くなり、その物件を扱っている管理会社を信頼できるかどうかも判断することができるでしょう。
土地の場所が良くない物件
駅から離れた場所や地方にある物件は、物件の価格が低くなるため利回りが高くなりますが、入居付けが困難になるため入居率の面で不安があります。
何かの理由がありその場所の賃貸需要が高い場合は別ですが、基本的に区分マンションを購入する場合は都心や駅近の物件を選ぶことが無難です。
旧耐震基準で建てられている物件
1981年6月に耐震基準に大幅な見直しが行われました。そして見直しの前に建てられた物件、つまり旧耐震基準の物件は融資がつかないため売却が難しくなります。
旧耐震基準であるため築古ということになり、購入価格が低く利回りは高くなりますが、耐震性や耐久性に不安があるため入居付けにも困難します。
しかし、旧耐震基準の物件でも管理状況が良好な物件もあり、耐震補強工事を行なっているマンションもあるため、旧耐震物件というだけで選択肢から外すのは早いということは覚えておきましょう。
家賃が相場よりも高い物件
マンション経営に不慣れな人は、表面利回りにとらわれて相場よりも高い家賃の物件を購入してしまうことが多いです。特定の層を狙った設備や環境などの付加価値のついた物件であれば入居者が入るかもしれませんが、基本的には相場よりも高いと空室が埋まらい物件になってしまいます。
また、新築時から家賃を変えずに数十年経った場合、その家賃は新築当初の価値に適した金額なので、当初と同様の家賃で入居付けをすることは難しいのです。
家賃が相場よりも高かったり新築当初から変わらなかったりする物件は、一度退去者が出ると新しく入居者を確保することが難しくなります。
管理状態の悪い物件
見るからに古かったり汚かったりするような管理状態の悪い物件は、当然購入してはいけません。
管理状態の良し悪しは表面利回りには出ないので数字ではわかりませんが、視覚で得た情報で修繕積立金などの管理が満足にできていないことを確信できます。
区分マンションの場合は管理組合や管理会社が建物の管理や修繕を行なうため、物件を購入してから修繕などを自身で行なうというのも、かなりのコストと時間をかけることになります。
管理費や修繕積立金が過剰に高い物件
管理費や修繕積立金が過剰に高い場合、その分売却価格を下げて高利回りに見せている物件である可能性があります。管理費などが高すぎると売却時の価格を下げなければならないため、注意しましょう。
しかし、修繕積立金が安すぎる物件にも注意が必要です。いつか積立金が足りない状況に陥った時に、全体的に積立金の値上げが発生する可能性があります。
そうなった場合毎月の支払いが増えて売却がしづらくなってしまいます。マンション購入の際は、管理費・修繕積立金のバランスが良い物件を選びましょう。
利回りが低くても検討できる物件
利回りが高くても注意するべき物件の特徴を紹介しましたが、本章では逆に利回りが低くても検討するべき物件の特徴を紹介します。
立地条件が良い物件
賃貸需要が高かったり、都心部や駅近にあったりするような立地条件の良い物件は、利回りは低くなってしまうことが多いですが購入を検討できる物件です。
上記のような物件は資産価値が落ちにくく、空室も発生しにくいです。そのため、家賃を下げずに済むことが多く、安定した収入を見込むことができます。
つまり、立地条件の良い物件はローリスクローリターンの物件となります。
築浅の物件
築浅に物件は基本的に物件価格が高くなり、賃貸需要も高くなります。そのため、利回りは低くなってしまいますが、空室のリスクも低くなります。
ただし区分マンション経営の場合、築年数よりも前述した立地条件のほうが重要な要素になります。地方の新築より都市部の築古物件のほうが長期的にリスクは低くなり、賃貸需要も高いパターンがあります。
まとめ
区分マンションは日本の不動産市場で人気のある投資対象です。利回り相場は地域や物件の種類によって異なりますが、中古物件は高い利回りが期待できる傾向があります。
投資を検討する際には、将来性や周辺環境などを考慮して慎重に選定することが大切です。