遊休地の活用方法として、駐車場経営が注目されています。
駐車場経営はアパート・マンション経営のような賃貸経営と比較して初期費用が抑えられるメリットがある一方で、税金負担が大きいことがデメリットとして挙げられます。
しかし、駐車場経営ではどのような税金がどれくらいかかるのかを知らない人がほとんどなのではないでしょうか。この記事では、駐車場経営でかかる税金の種類や節税ポイントについて詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
駐車場経営をする際のコツやかかる費用、収入の目安などは以下の記事をご覧ください。
駐車場経営とは
駐車場経営とは土地に駐車場を作り、その利用料を収入として得る土地活用方法の一つです。駐車場経営が他の土地活用方法と比較すると、初期費用が安く手軽に始めることができます。管理の手間が少なく、土地の形を選ばないところも魅力です。
一方で、駐車場は住宅用地ではないため税制上は更地と同じ扱いになり、固定資産税や都市計画税などの節税効果がないことに注意しましょう。加えて収益性に関しても賃貸経営などに比べたら低いことや、立地による影響を受けやすいことなどもデメリットです。
そんな駐車場経営ですが、その種類は利用者への駐車場の貸し方の違いで、月極駐車場とコインパーキングの二つに分けられます。
月極駐車場は契約の期間を一ヶ月単位とするもので、収容可能台数によって月当たりの収入上限が決まります。契約者がいれば安定した収入が得られますが、空きがある場合は利用者を獲得するための工夫をする必要があります。住宅地や飲食店がオフィス街などで需要があります。
コインパーキングは契約の期間を時間単位とするもので、料金設定を周辺のコインパーキングと差別化することで稼ぐことができます。月極駐車場よりもコインパーキングの方が儲かる可能性が高いですが、設備などを用意しなければならない分初期費用が高くなります。駅前や大型商業施設の近くなどで需要があります。
駐車場経営でかかる税金と計算方法
まず、駐車場経営にかかる税金を解説します。駐車場経営でかかる税金は、大きく6種類に分かれます。「固定資産税」「都市計画税」「消費税」「所得税」「相続税」「個人事業税」の6種類です。
この6種類の税金について、「どういった税金なのか」「どのように計算するのか」を解説していきます。
固定資産税
固定資産税とは、毎年1月1日の時点で土地や家屋などを持っている人に対して市町村が課税する税金のことです。借りた土地で駐車場経営するときには固定資産税はかかりませんが、自分が所有する土地の場合は必ずかかります。
駐車場のある土地にかかる固定資産税は以下の計算式で求めることできます。
- 固定資産税=課税標準額×1.4%
課税標準額とは税率を乗ずる金額のことです。建物の場合、固定資産税評価額と課税標準額は一致します。土地の場合、住宅用地については課税標準額が最大6分の1となる特例がありますが、駐車場は住宅用地に当てはまらないためこの特例の適用対象外です。固定資産税は1年分を4期に分けて納付します。
また、駐車場経営で使う設備に対しても固定資産税が課されることがあります。具体的には、コインパーキングに設置した料金収受機やアスファルト、車止めなどの機器、舗装、街灯やフェンスなどがその対象です。このようなものを償却資産と言い、償却資産にかかる固定資産税を償却資産税と呼びます。償却資産税は設備の取得費の合計が150万円を超えると課されるものです。
償却資産税は以下のように計算できます。
- 償却資産税=課税標準額×1.4%
固定資産税についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
都市計画税
都市計画税は、1月1日時点で市街化区域内に駐車場を持っている場合に課税されます。
市街化区域とは、市街化を活性化する地域のことで、住宅街や商業施設などがあるエリアのことをいいます。市街化区域は、建物を許可なく建築できるのが特徴です。都市計画税は固定資産税と一緒に納税します。
都市計画税は以下の計算式で求めます。
- 都市計画税=課税標準額×0.3%
都市計画税は固定資産税と同様に、住宅用地の場合は課税標準額が減額される特例があり、最大3分の1になります。ただしこれも固定資産税と同様、駐車場は住宅用地ではないためこの特例は適用されません。
消費税
消費税は商品や製品の販売や、サービス提供に対して課税される税金のことです。税金の納付は事業者が行いますが、負担するのは消費者です。土地の貸付は基本的に非課税取引です。ただし、課税対象となるかどうかは駐車場の運営方法によっても異なります。
青空駐車場は非課税ですが、駐車車両の管理をしたり、有料駐車場として使うための土地の整備や、建物、フェンス、区画などの設置をした場合には、消費税の課税対象です。なお、消費税の納付義務が生まれるのは課税期間の基準期間の売上高が1,000万円を超える事業者です。駐車場収入が1,000万円を超えない場合には、納税義務はありません。
消費税は以下のように計算します。※税率は10%(消費税率7.8%と地方消費税率2.8%の合計)です。
- 消費税=課税取引額×10%(消費者負担)
所得税
所得税とは、個人が所得を得た場合に課税される税金のことです。所得とは、1月1日から12月31日までの1年間のすべての収入から必要経費を差し引き、一定の税率を掛けて算出したものから所得控除額を差し引いたもののことです。
所得税がいくらになるかについては、駐車場経営の種類や規模によって異なります。駐車場経営を行った場合の所得税は次のように計算します。
- 所得税=(駐車場の収入金額-経費)×税率-所得控除
所得税の税率は以下の通りです。
課税所得金額 | 税率 |
195万円以下 | 5% |
195万円超 330万円以下 | 10% |
330万円超 695万円以下 | 20% |
695万円超 900万円以下 | 23% |
900万円超1,800万円以下 | 33% |
1,800万円超 4,000万円以下 | 40% |
4,000万円超 | 45% |
税率は所得金額によって異なります。累進課税制度をとる日本では、所得が多くなるほど税率が高くなっているのが特徴です。
駐車場経営の所得には2種類あり、所得区分によって控除が異なります。
区分は月極駐車場かコインパーキングかによっても決まります。駐車場経営の所得区分は通常「不動産所得」か「事業所得」のどちらかに当てはまります。所得区分による控除の違いや経営種類との関係について解説します。
不動産所得
不動産所得とは主に、土地・建物などの不動産の貸付による所得のことを言います。つまり、アパート経営やマンション経営などで得る家賃収入がこれに当てはまります。
駐車場経営において不動産所得か事業所得かの判断ポイントは、「土地そのものから収益を得ていると判断できれば不動産所得」、「土地上の設備を管理・運営することで収益を得ているなら事業所得」、といったようになります。
つまり、月極駐車場経営では設備の管理や運営をして収益を得ているわけではなく、土地そのものだけで収益が完結しているため不動産所得となります。
事業所得
事業所得とは、事業を営んでいる人のその事業から発生する所得のことで、先述した通り、駐車場経営においては土地上の設備を管理・運営することで収益を得ている場合にみなされます。
駐車場経営で事業所得とみなされることにおいて最も重要なのは、「管理人が常駐していること」です。管理人が常駐していることで管理責任があると判断され、事業所得となります。
そのため、24時間の管理体制などがついているコインパーキング経営の場合、事業所得であるとされます。ただし、コインパーキング経営でも駐車場が無人経営の場合は不動産所得に該当する点には注意しましょう。
所得区分の違いによる控除の違い
不動産所得と事業所得はともに給与所得などとの損益通算や青色申告が可能ですが、不動産所得の方が要件が厳しくなっています。
不動産所得の駐車場経営の場合、およそ50台以上を運営しているか、駐車場が建設物であることが事業的規模とみなされる要件ですが、事業所得の場合は具体的な規定はありません。
不動産所得の場合は事業的規模でないと青色申告の65万円の特別控除が認められず、簡易通簿による10万円の特別控除のみとなってしまいます。
相続税
相続税とは財産を相続した際に課される税金のことで、駐車場経営の場合、駐車場のある土地を相続した場合に相続人に課されることになります。
相続税の計算については、以下のような手順を踏みます。
- 相続財産の総額を計算する
- 総額から非課税財産を差し引く
- そこから基礎控除額を差し引く※
- 課税遺産総額を相続人分で按分する
※基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
課税遺産総額を相続人分で按分すると相続人個人の財産が確定します。そうしたらあとは以下の速算表に当てはめて相続税額を計算することができます。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1000万円以下 | 10% | – |
3000万円以下 | 15% | 50万円 |
5000万円以下 | 320% | 200万円(10人分) |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1700万円 |
3億円以下 | 45% | 2700万円 |
6億円以下 | 55% | 4200万円 |
6億円超 | 55% | 7200万円 |
相続税は財産の価値の総額から求めるため、駐車場のある土地の価値を求めることが相続税額を計算することに繋がります。
駐車場の経営方式は大きく分けて3種類あり、相続税評価額の計算方法が異なるため相続税の額も変わります。経営方式は以下の通りです。
- 自主経営方式
- 管理委託方式
- 一括借り上げ方式
経営方式は、駐車場の経営と管理業務をおこなう主体が誰になるのかということを表しており、支出となる管理費用が異なります。
自主経営方式・管理委託方式の場合
自主経営方式・管理委託方式は、駐車場の建設費用は土地オーナー自身が支払う経営方式のことです。
土地所有者が自ら設備等の費用を負担して貸駐車場を経営していることになるので、貸駐車場の土地の相続税評価額自用地の評価額と同じ額になります。
自用地の評価の場合の相続税評価額は、敷地面積に路線価を乗ずることで求められます。路線価とは、国税庁が定める1㎡あたりの土地評価額のことです。
一括借り上げ方式の場合
一括借り上げ方式は、駐車場会社に土地を貸し出し建設から駐車場会社に任せる方式です。
駐車場の利用者(賃借人)の費用で駐車場設備を建設することを認めるような契約の場合は、雑種地の賃貸借扱いとなります。この場合の相続税評価額は、自用地の相続税評価額から賃借権価額を引いた額となります。
<参考>国税庁HP:No.4627 貸駐車場として利用している土地の評価
駐車場経営にかかる相続税の計算に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
地域によってかかる個人事業税
個人事業税とは、個人が事業を営んだ場合に課税される税金です。個人事業税は事業に対して課税される税金ですが、個人事業税の対象となるかどうかは課税者である都道府県が決めます。
自分では個人事業税の対象にならないと思っていても課税対象になっていたり、事業の内容がわからないときには都道府県から事業内容の問い合わせがあることもありますので注意しましょう。
個人事業税は次の方法で計算します。
- 収入金額-必要経費=利益
- 利益-各種控除額=個人事業税の所得額
- 個人事業税の所得額×5%(標準税率)※=個人事業税
駐車場経営には、様々な税金がかかりますが、調べてみると「実際にどの程度の税負担があるのか」や「より節税効果の高い土地活用方法があるのでは」など様々な疑問が出てくるかと思います。
駐車場経営の具体的な節税効果や税負担を知るには、複数の企業から経営プランを取り寄せて比較してみるのがおすすめです。しかし、一つ一つの企業から経営プランを取り寄せるのは手間がかかります。
そこで、複数企業から一括で資料請求することができる土地活用比較サイトの利用がおすすめです。1分程度のかんたんな質問に答えるだけで、複数企業から資料を取り寄せて経営プランを比較することができます。企業によっては、「実際の節税効果シミュレーション」や「より節税効果の高い土地活用方法の提案」をしてくれる場合もあります。
\建築費は?初期費用は?/
活用事例:円阿弥4丁目第2大栄駐車場

収入から税金を引いたらどれくらいの利益が残る?
駐車場経営にかかる各種税金についての説明をしてきましたが、実際に収入から税金を差し引いくとどれくらいの利益が残るのでしょうか。
賃料や課税標準額などが以下の条件の時の年間の利益について計算していきます。
- 月の賃料:10万円
- 課税標準額:3,000万円
- 市街化区域
- 経費:50万円
- 年間の収入
- 固定資産税額
- 都市計画税額
上記の年間収入から固定資産税・都市計画税を引くと、120万円-(42万円+9万円)=69万円と計算できます。
このことから、所得税は以下のようになります。
これらを踏まえると、年間の利益は以下のように計算できます。
年間の利益を17万500円と計算することができましたが、これは設備にかかる費用やランニングコスト、諸経費などを考慮していない点には気を付けましょう。
駐車場経営でかかる税金を節税できるポイント
駐車場経営にはさまざまな税金が課されますが、事前に対策を講じることである程度は節税できます。駐車場経営で節税できるポイントについて解説します。
駐車場のために整備している場合の特例
相続した土地で駐車場経営する場合には検討したいことがあります。それは、駐車場をアスファルト塗装することです。更地の土地をアスファルトで塗装すると、小規模宅地等の特例の適用対象となり、土地の評価額を50%減額することも可能になります。
また、駐車場の経営をするなら、住宅用地の特例を受けられるかどうかをよく確認しておきましょう。それだけで収入に大きな違いが生まれます。
青色申告特別控除の適用
青色申告特別控除は、青色で確定申告を行う方へ適用される控除のことです。
この青色申告特別控除を適用させるにはいくつかの条件があり、最高控除額は65万円です。
青色申告特別控除において65万円の適用を受けるには下記の4つの条件があります。
- 雑所得として区分されていないこと
- 不動産所得に区分されている場合は事業的規模と認められていること
- 仕訳帳や総勘定元帳を電子計算によって作成すること
- 確定申告書や損益計算書などをe-Taxを使用して提出すること
駐車場経営においては、この4つの条件を全て満たしている場合にのみ65万円が適用がされます。雑所得では青色申告が認められていないためそもそも控除を受けることができません。
また、駐車場経営で得た収益が不動産所得として区分されているが、2を満たしていない場合は10万円の控除となり、2を満たしているが3と4を満たしていない場合は55万円の控除となります
事業所得として区分されている場合は、3と4をクリアすることで65万円の控除が受けられます。
一括償却資産
先のアスファルト塗装で減免を受けられるのは、相続時の対策です。基本的に固定資産税は節税できないと考えた方がよいでしょう。多くの人が取れる節税手段は、一括償却資産ということになります。
償却資産とは土地や建物以外で、事業に使っている資産のことです。駐車場経営なら、外灯や表示灯、看板などが該当します。150万円以下の資産は固定資産税ゼロとなりますので、この制度を上手に活用しましょう。
たとえば、1個10万円の外灯を30個購入したときにかかる費用は300万円です。このとき300万円で計上すると固定資産税の対象となってしまいますので、1つの資産を10万円以上20万円未満に抑えて計上します。さらに費用計上する全体の費用を3年に振り分ければ、通常よりも節税効果を期待できます。
住宅用地内での駐車場経営
住宅用地において固定資産税の軽減が適用されるというのは既にご紹介した通りです。では、相続した土地が家屋付きで、その敷地にて駐車場経営を始める場合はどうでしょうか。
この場合、家屋は壊さず残りの敷地で駐車場経営を始めると、特例を適用させることが可能です。しかし、住居用地かどうかは土地所有者ではなく各市町村の判断になるため、家屋の形態によっては税額軽減を受けられない可能性もあります。
また、住宅用地として認めてもらうために新しく住宅を建築することは大きなコストがかかってしまいます。固定資産税は節税できますが、結果的に建築費用でマイナスになってしまいますので、注意が必要です。
より節税効果の高い土地活用方法や、駐車場経営方法を知るには、複数の企業から経営プランを取り寄せて比較してみるのがおすすめです。しかし、一つ一つの企業から経営プランを取り寄せるのは時間も労力もかかります。
そこで、複数企業から一括で資料請求することができる土地活用比較サイトの利用がおすすめです。
1分程度のかんたんな質問に答えるだけで、複数企業から資料を取り寄せて経営プランを比較することができます。場合によっては、「実際の節税効果シミュレーション」や「より節税効果の高い土地活用方法の提案」をしてくれる企業もあります。
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駐車場経営でかかる税金を学んでから始めよう
駐車場経営は、アパートやマンション経営に比べてリスクが低いため人気のある土地活用方法です。しかし、この記事で解説したように、駐車場経営も事業として行う以上、さまざまな費用や税金がかかります。
税金のことを知っているのと知らないのとでは、収益に大きな違いが生まれます。中でも所得税の区分については、自分で判断するのは危険です。間違って申告してしまうと、脱税が疑われてしまうこともあります。
不安があるときは、自分ですぐに調べる癖をつけておくと同時に、一緒に駐車場経営を進める会社にすぐに聞くようにしましょう。
記事のおさらい