土地活用を検討する際に、特に注意が必要なのが、都市計画法で定められている「用途地域」の規制です。
用途地域によっては、建築可能な建物の種類に制限があったり、建物の高さに上限があったりします。
本記事では、土地活用における法規制の基礎知識と、用途地域を踏まえた活用方法をご紹介します。
都市計画法「用途地域」による土地活用の規制について
用途地域とは、13種類の区分ごとに建築可能な建物が規制され、住環境の保護と商工業の利便性を高めるために、さまざまな制限が設けられた地域です。
都市計画法によって規定され、土地活用の際には必ず把握しておくべき法規制です。
都市計画法とは?
「用途地域」を定めている都市計画法では、日本全国の土地を、以下の3つに区分しています。
- 都市計画区域
- 都市計画区域外
- 準都市計画区域
「都市計画区域」は、日本の国土のうちの約25%を占める区域で、全人口の9割以上の人が住んでいます。
都市計画法による計画的な街づくりが必要な地域で、建築基準法による建ぺい率・容積率の制限や接道義務が発生します。
一方、人の居住に適さない山地などの「都市計画区域外」では、これらの制限はなく、用途地域も定められていません。
なお都市計画区域外でも、自由に建物を建ててしまうと都市計画に影響が出る「準都市計画区域」では、用途地域が定められ、建築基準法も適用されます。
そして、都市計画区域の中には、さらに次の3つの区分があります。
- 市街化区域
- 市街化調整区域
- 非線引き区域
これらのうち、原則として土地活用のために建物を立てることができるのは「市街化区域」です。「市街化調整区域」は主に農地などが該当し、用途地域も設けられていません。「非線引き区域」は、上記2つのどちらにも分類されていない地域を指します。
用途地域の13種類とは?
市街化区域に定められている「用途地域」には、次の13種類の区分があります。
土地活用を考える上では、ご自身の持つ土地がどの用途地域に該当するのかを知り、建築できる建物の種類を把握しておくことが大切です。
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
- 第二種中高層住居専用地域
- 第一種住居地域
- 第二種住居地域
- 準住居地域
- 田園住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
- 工業地域
- 工業専用地域
「第一種低層住居専用地域」から「田園住居地域」までの8つは住居系の用途地域で、「近隣商業地域」「商業地域」の2つが商業系の用途地域、「準工業地域」「工業地域」「工業専用地域」の3つが工業系の用途地域となっています。
それぞれの用途地域についての詳しい解説は後述します。
用途地域における建築規制は「建築基準法」で定められる
各用途地域における建築可能な建物は、「建築基準法」によって細かく定められています。
中でも「第一種低層住居専用地域」「第二種低層住居専用地域」「田園住居地域」の3つの用途地域では、建築物に10mまたは12mの『絶対高さ制限』が設けられているため注意が必要です。
このような地域はマンションやビルの建築がほぼ不可能となるため、土地の活用方法も限られてきます。
用途地域以外に押さえておきたい建築物規制
土地活用において、押さえておきたい建築物の規制には、他にも下記のような種類があります。
- 建ぺい率
- 容積率
- 日影規制
- 斜線制限
- 防火地域・準防火地域
建ぺい率は、敷地を真上から見た時の建物の面積の割合で、容積率は、敷地に対する延べ床面積の割合です。
用途地域によって、建ぺい率・容積率の上限が定められており、建築できる建物の高さや階数に制限があります。
日影規制・斜線制限は、全く日のあたらない住宅が生まれないよう、いずれも建物の高さを規制したものです。
防火地域・準防火地域は、繁華街などの建物が密集している場所で、建物の耐火性・防火性について規制しています。
このように建物を建てるにあたっては、さまざまな規制の中で行う必要があるため、最終的には専門家の力を借りながら活用方法を考えることになります。
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住居系の用途地域と建てられる建築物
ここでは、先述した住居系の用途地域の8種類(第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・第一種中高層住居専用地域・第二種中高層住居専用地域・第一種住居地域・第二種住居地域・準住居地域・田園住居地域)について解説します。
住居系の用途地域では、後に行くほど規制が緩くなる傾向にあります。したがって、最も厳しい規制が設けられているのが「第一種低層住居専用地域」で、店舗・事務所・宿泊施設の建築がすべて禁止されています。
一方で「準住居地域」では、そのすべてが建築可能です。厳しい規制のある用途地域ほど土地活用の難易度は高まりますが、周辺環境が良好になるため、一概に不利になるとは言えません。
建てられる建築物の種類と具体例
国土交通省の「都市計画の土地利用計画制度の仕組み」によると、住居系の用途地域で建てられる建築物は下記の表の通りです。
住宅 | 店舗 | 事務所 | 宿泊施設 | 娯楽施設 | 学校等 | 工場・倉庫 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
第一種低層住居専用地域 | ◯ | × | × | × | × | △ | × |
第二種低層住居専用地域 | ◯ | △ | × | × | × | △ | × |
第一種中高層住居専用地域 | ◯ | △ | × | × | × | ◯ | × |
第二種中高層住居専用地域 | ◯ | △ | △ | × | × | ◯ | △ |
第一種住居地域 | ◯ | ◯ | ◯ | △ | △ | ◯ | △ |
第二種住居地域 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | △ |
準住居地域 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | △ |
田園住居地域 | ◯ | △ | × | × | × | △ | △ |
(引用元:国土交通省「都市計画の土地利用計画制度の仕組み」令和3年7月)
住居系の用途地域では、戸建てやアパート・マンションの建築が可能なため、住宅を貸し出すことで収益を上げることができます。
閑静な住宅街として計画されている地域では、居住環境が良好で、借り手が決まりやすいメリットもあります。
他にも介護施設の建築や、駐車場経営、トランクルーム経営なども選択肢に入ってきます。
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活用事例:活用法を明確化し、 地域貢献と 長期安定経営を両立。



エリア | 千葉県 |
土地面積(㎡) | 2569 |
延べ床面積(㎡) | 2292 |
工法 | 重量鉄骨造 |
そこで、ミサワホームでは「10の資産活用」をご説明し、土地の色分けからスタート。さらにミサワホームグループの介護実績を評価いただき、地域貢献できるサービス付き高齢者向け住宅を建築することに決定しました。
オーナー様のご希望で、落ち着いた雰囲気にこだわり、残した園芸用地は入居者の借景になるように配慮。敷地内にはポケットパークや、バーベキューテラスを設けるなど、入居者が楽しく過ごせる住宅が完成しました。(ミサワホーム株式会社の土地活用事例)
商業系の用途地域と建てられる建築物
続いて、商業系の用途地域には、先述のように「近隣商業地域」「商業地域」の2つがあります。
「商業地域」の方が「近隣商業地域」よりも規制が緩く、住宅を含めたさまざまな建築物を建てることが可能です。
近隣商業地域においては、「キャバレー、料理店、個室付浴場等」の建設は制限されます。また、危険性の高い工場はいずれも建築することができません。
建てられる建築物の種類と具体例
商業系の用途地域で建てられる建築物は、下記の表の通りです。
住宅 | 店舗 | 事務所 | 宿泊施設 | 娯楽施設 | 学校等 | 工場・倉庫 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
近隣商業地域 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | △ | ◯ | △ |
商業地域 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | △ |
(参照:国土交通省「都市計画の土地利用計画制度の仕組み」令和3年7月)
商業系の用途地域では、基本的に土地活用の制限はなく、広い土地面積のアパートやマンションの建築も可能です。
店舗やオフィスビルももちろん、ホテルやタワーマンションの建築にも活用できます。人気が高く地価も高い傾向にある一方、固定資産税も高額になるため、土地活用には慎重な検討が必要です。
工業系の用途地域と建てられる建築物
最後に、工業系の3つの用途地域、「準工業地域」「工業地域」「工業専用地域」について解説します。住居系・商業系の用途地域とは異なり、後に行くほど規制が厳しくなることが特徴です。
建てられる建築物の種類と具体例
工業系の用途地域で建てられる建築物は、下記の表の通りです。
住宅 | 店舗 | 事務所 | 宿泊施設 | 娯楽施設 | 学校等 | 工場・倉庫 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
準工業地域 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | △ | △ | △ |
工業地域 | ◯ | ◯ | ◯ | × | △ | △ | ◯ |
工業専用地域 | × | △ | ◯ | × | △ | △ | ◯ |
工業系の用途地域は、工場のための地域として区分されているため、住宅・商業施設の建築制限が厳しくなります。
「工業専用地域」以外では、戸建てやアパート・マンションなどの建築は可能ですが、事業用地として賃貸・売却する方法が現実的となるでしょう。
土地活用を検討している方は、イエウール土地活用で複数企業から土地活用プランを取り寄せ、比較することが可能です。
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用途地域の調べ方は?規制のかかる土地かを確認する方法
ご自身の所有する土地の用途地域は、不動産会社に問い合わせることで簡単に調べられます。
自治体の窓口でも確認することができるほか、市区町村の「都市計画図」をインターネット上で検索してみると、色分けされた用途地域の地図を公開していることもあります。
なお、2種類の用途地域にまたがる土地の場合は、より面積が大きい方の規制が適用されます。
規制を踏まえて土地活用を成功させるポイント
最後に、用途地域の規制を踏まえて土地活用を成功させるポイントについて解説します。
規制だけでなく、賃貸需要も確認する
用途地域は、あくまでも建築可能な建物を決める規制です。
実際の土地活用で、収益化ができるかは別の問題として考える必要があります。特に、賃貸のアパート・マンション・戸建てを建築する場合には、その地域に賃貸需要があるかを十分に確認する必要があります。
さまざまな規制や、賃貸需要を調べる際には専門家の力が必要になることも多いため、「イエウール土地活用」で、その土地にあった土地の活用方法を調べるのがおすすめです。
周辺地域の雰囲気を見る
都市計画法や建築基準法に知見が明るくなくても、周辺地域を観察することで大まかな規制や需要を予測することができます。
たとえば、周辺に高さのあるアパートやマンションが建っていない場合には、「第一種低層住居専用地域」「第二種低層住居専用地域」などに該当する可能性も高まるでしょう。
地形や広さを考慮して土地活用をする
土地活用では、土地の形状や面積も重要な要素です。
一般的に正方形や長方形などの「整形地」ほど価値が高く、活用の幅が広がります。一方で、三角形や台形などの「不整形地」は、価値が低く活用の難易度も高まる傾向にあります。
地形や広さをもとに活用方法を考えることも大切です。
土地活用の際に注意したい、その他の代表的な法規制
土地活用の際に注意したい法規制には、他にも多くの種類があります。代表的なものをまとめると、以下の通りです。
規制 | 規制内容 |
---|---|
農地法 | 農業生産の安定のため農地以外の利用を制限 |
宅地造成等規制法 | 崖崩れや土砂災害防止のため宅地造成を制限 |
都市緑地法 | 良好な都市環境のため緑地の保全を推進 |
砂防三法(砂防法・地すべり等防止法・急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律) | 土砂災害防止のため掘削や立木竹の伐採を制限 |
土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律 | 土砂災害が発生する恐れがある土地の開発を制限 |
生産緑地法 | 将来にわたって農緑地を残すため、30年の営農義務と建築・造成の制限 |
森林法 | 森林保全・生産力の向上のため伐採・造成を制限 |
自然公園法 | 自然の風景地の保護のため工作物の建築を制限 |
これらの法規制がある地域に土地を所有している場合、土地活用にあたっては、自治体からの許可が必要なケースもあります。
土地と建築物の規制を考慮した土地活用を
これまで解説したように、土地活用を検討する際には、所有している土地にどのような規制があるかを調べることが大切です。
建築物や土地に関する規制は、用途地域以外にも数多く存在しています。そのため、土地活用を始める際には、専門家に相談すると安心です。
「イエウール土地活用」では、現在所有している土地などの価格はもちろん、適正な土地の活用方法なども把握することができます。
自分の土地はどのような需要があるか、どのように活用するかんでいる人は、まずお気軽にご相談ください。