アパート経営の事業計画書、書き方ひとつで融資額が変わる理由

「同じ土地、同じ年収なのに、なぜ隣の人は希望額まで借りられて、自分は減額されたのだろう」。アパート経営を始めようとして事業計画書の作成に取りかかったものの、何をどう書けば審査担当者に納得してもらえるのか分からず、手が止まっている方へ向けた記事です。
「埼玉県さいたま市(郊外)在住の40代・男性(2026年6月)」
『相続した実家の土地でアパート経営を考え、事業計画書を作り始めたが、収支計画の数字をどう決めればいいのか分からない。テンプレートに項目を埋めるだけで、本当に審査に通るのか不安なまま提出することになりそうだ。』
実は、事業計画書は「何を書いたか」だけでなく「どう書いたか」で、金融機関からの評価が大きく変わります。同じ物件・同じ年収の相談者でも、事業計画書の作り方ひとつで融資可能額に差が出るケースは珍しくありません。この記事は、複数のハウスメーカー・建築会社の事業計画書を横断的に見てきたイエウール土地活用の立場から、事業計画書に何を記載すべきかという基本に加えて、審査担当者が実際にどこを見ているか、そして自分の場合の収支がどの程度になりそうかまでを、具体的な数字とともに解説します。読み終える頃には、自分の事業計画書のどこを見直せばよいかが判断できる状態になっているはずです。
担当者
概算の収益感覚をつかんだら、次は事業計画書に何を書くべきか、順番に見ていきましょう。
アパート経営の事業計画書、なぜ提出が必要なのか
事業計画書とは何を示す書類か
事業計画書とは、アパート経営という事業の内容・収支見込み・返済計画を金融機関に説明するための書類のことです。不動産投資であっても、金融機関からすればアパート経営は「賃貸業」という事業への融資であり、事業として成り立つかどうかを判断する材料として提出を求められます。
アパートローンの審査では、申込者個人の属性(年収・勤続年数・資産状況)に加えて、事業計画書に記載された収支計画の実現性が重視されます。イエウール土地活用に寄せられる相談の中でも、事業計画書の作成段階でつまずく方は少なくありません。理由は主に2つあります。1つは記載すべき項目が多岐にわたること、もう1つは「どの程度具体的に書けば審査担当者を納得させられるか」の基準が分かりにくいことです。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
私が相談を受ける際は、まず事業計画書を「自分のための経営シミュレーション」として作るようお伝えしています。金融機関に提出するための書類だと考えると項目を埋めることが目的になりがちですが、自分自身が納得できる数字になっているかを先に確認したほうが、結果的に審査担当者にも伝わる計画書になります。
なぜアパートローンの審査で提出を求められるのか
金融機関がアパートローンの審査で事業計画書を求める理由は、融資額が高額かつ返済期間が長期にわたるためです。数千万円規模の借入を20〜35年かけて返済する計画に対して、金融機関は「本当にその収支計画どおりに返済が続けられるか」を事前に確認する必要があります。個人の属性審査だけでは、その物件固有の収益性までは判断できません。
イエウール土地活用の相談窓口でも、複数の金融機関に相談された方から経過をお伺いする中で、事業計画書の内容次第で提示される融資条件が変わったという声をよく耳にします。属性が同程度でも、計画書の実行性・具体性によって金融機関側の評価が分かれるということです。実際に、直近2年間の相談記録を見ると、複数の金融機関に事業計画書を提出した相談者のうち、提示された融資可能額に差が出たと申告した方は約6割にのぼります。1つの金融機関の回答だけで判断せず、複数のハウスメーカー・建築会社の事業計画書を比較しながら申し込むことが、結果的に有利な条件を引き出すことにつながっています。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
実際に相談を受けた際は、まず「この計画は融資期間中ずっと成立し続けるか」という視点で数字を見るようにしています。初年度だけでなく、空室率が上がった場合や金利が上昇した場合にも耐えられる計画になっているかどうかが、長期審査における実質的な論点です。
アパート経営の事業計画書、審査担当者が見ているポイント
事業計画書に記載項目をすべて埋めても、審査に通るとは限りません。審査担当者は、書かれている内容そのものよりも「この計画は本当に実行できるか」という視点でチェックしています。ここでは、審査担当者が実際にどこを見て否決・減額の判断をしているかを、具体的な観点ごとに解説します。
実行性のある計画になっているか
「実行性」とは、記載された収支計画が絵に描いた餅ではなく、実際の市場条件に照らして達成可能かどうかを指します。例えば、周辺の家賃相場が月8万円のエリアで月10万円の家賃収入を前提にした計画書は、根拠が示されない限り実行性が低いと判断されます。同様に、入居率を常に100%で試算している計画書も、審査担当者からは楽観的すぎると見られやすくなります。
審査担当者は、家賃設定・入居率・修繕費の見積もりなどが、その物件が立地するエリアの実態と乖離していないかを確認します。乖離が大きいほど「この申込者は市場を調査せずに数字を作った」という印象を与え、評価が下がります。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
目安として、私は入居率を95%程度で試算し、そこからさらに90%まで下がった場合でも返済が継続できるかを二段階で確認するようお伝えしています。1つの数字だけで判断せず、悪化した場合の試算まで添えることで、実行性のある計画として評価されやすくなります。
記載内容に「ぼかし」がないか
「賃貸需要が見込めるため安定した収益が期待できます」といった抽象的な表現だけで説明を済ませている事業計画書は、審査担当者から見ると「具体的な根拠を示せていない」という評価になります。どのようなデータ・調査に基づいてその判断をしたのかが書かれていない計画書は、記載項目が揃っていても評価が伸びません。
特にリスク要素(空室リスク・金利上昇リスク・修繕費の変動など)について触れずに、良い面だけを強調した計画書は、審査担当者に「リスクを理解していないのではないか」という懸念を持たれやすい点に注意が必要です。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
私が計画書を確認する際は、リスク要素を1つも記載していない計画書はむしろ差し戻すようにしています。空室率が5ポイント悪化した場合、金利が1%上昇した場合の2パターンだけでも試算を添えると、記載内容の信頼度が大きく変わります。
収支の根拠が数字で示されているか
審査担当者が最も重視するのは、収支計画の数字ひとつひとつに根拠があるかどうかです。家賃であれば周辺相場の調査資料、建築費であれば施工会社の見積書、金利であれば実際に提示された条件など、数字の出所が明確であるほど計画書の信頼性は高まります。
アパートローン否決・減額の理由として申告された内訳(根拠不足が最多)
※対象:直近2年間でアパートローンの否決・減額を経験したと申告した相談者、集計対象約140件。要因の内訳は「収支計画の数字の根拠不足」41%、「返済比率の高さ(既存借入との合算)」27%、「物件の収益性への懸念」19%、「その他(信用情報等)」13%(複数回答除く/相談者本人の申告に基づく)。
【調査結果】アパートローンが否決・減額された理由の内訳
イエウール土地活用の相談記録を分析したところ、事業計画書を提出したにもかかわらず希望どおりの融資を受けられなかった相談者のうち、約4割は「収支計画の数字に根拠が示されていなかったこと」が主な要因だったと申告しています。
※対象:直近2年間でアパートローンの否決・減額を経験したと申告した相談者、集計対象約140件。要因の内訳は「収支計画の数字の根拠不足」41%、「返済比率の高さ(既存借入との合算)」27%、「物件の収益性への懸念」19%、「その他(信用情報等)」13%(複数回答除く/相談者本人の申告に基づく)。
担当者
石川さん、根拠不足がここまで大きな要因になるのはなぜなのでしょうか。
アドバイス
私が見てきた中では、根拠のない数字は「申込者が都合よく作った数字」として扱われてしまうためです。金融機関は同種の物件を数多く審査しているので、相場から外れた数字はすぐに見抜かれます。根拠を示すことは、数字そのものの説得力だけでなく、申込者が市場をきちんと調査しているという姿勢の証明にもなります。
担当者
具体的には、どの数字にどんな根拠を添えればよいのでしょうか。
アドバイス
私が指導する際は、最低でも3点セットを揃えるようお伝えしています。家賃は「周辺の賃貸情報サイトで抽出した類似物件3〜5件の家賃相場」、建築費は「施工会社から取得した見積書の総額」、金利・返済額は「金融機関から実際に提示された条件」です。この3点があるだけで、計画書の説得力は大きく変わります。
3点セットという基準があると分かりやすいですね。抽象的な「根拠を示す」よりも、何を揃えればいいかが明確になりました。
実際に、この3点セットを整えたことで融資条件が改善した相談者もいます。埼玉県さいたま市在住の40代男性は、当初「周辺相場で月9万円」とだけ記載していた家賃欄を、類似物件4件の賃貸情報を根拠として添える形に修正しました。
※本事例は、イエウール土地活用の相談窓口にご相談いただいた方から、後日ヒアリングした内容をもとに再構成した想定事例です。金融機関への相談・交渉はご本人が独自に行われたものであり、個人が特定できないよう一部内容を加工しています。融資条件は金融機関・個別の審査状況により異なります。
審査に通らなかった場合、事業計画書のどこを見直すべきか
一度審査に通らなかった場合も、事業計画書自体を白紙に戻す必要はありません。イエウール土地活用の相談窓口では、否決・減額を経験した相談者の再申込みを継続してヒアリングしていますが、見直しの効果が出やすいのは「数値の正確性」「事業内容の伝わりやすさ」「競合物件の調査量」の3点に絞って手を入れたケースです。逆に、記載項目を増やしてページ数だけを厚くした計画書は、再審査でも評価が変わりにくい傾向にあります。
- 数値の正確性を見直す
前回の否決理由が「根拠不足」だった場合、家賃・建築費・金利のどれに根拠資料が欠けていたかを特定し、そこだけを補強します - 事業内容が伝わる書き方に直す
「単身者向け」「安定収益」といった一言で終わらせず、項目ごとに1〜2文の理由を追記して細分化します - 競合物件の調査量を増やす
周辺エリアの類似物件を追加で調べ、家賃・入居率の前提が周辺相場と大きくずれていないかを再確認します
再申込みで融資を受けられた相談者が実際に見直した項目(最多は数値の精度)
※対象:直近2年間で一度否決・減額を経験した後、事業計画書を修正して再申込みを行い、融資を受けられたと申告した相談者、集計対象約80件。見直した項目の内訳は「数値の正確性(根拠資料の追加・数値修正)」48%、「事業内容の伝え方」27%、「競合物件の調査量」17%、「その他(相談先の変更等)」8%(複数回答除く/相談者本人の申告に基づく)。
【調査結果】再申込みで見直された項目の実態
再申込みで融資を受けられた相談者のうち約半数は、記載項目を増やすのではなく「数値の正確性」だけを見直していました。次に多いのが事業内容の伝え方の見直しで、競合物件の調査量を増やしたケースはそれに続きます。
※対象:直近2年間で否決・減額から再申込みを経て融資を受けられたと申告した相談者、集計対象約80件(複数回答除く/相談者本人の申告に基づく)。
担当者
石川さん、記載項目を増やすより数値の正確性だけを直したほうが評価が変わるのは、なぜなのでしょうか。
アドバイス
私が見てきた中では、記載項目を増やす修正は「量で誠意を見せよう」という発想になりがちで、審査担当者からすると論点が増えるだけで根本的な疑問が解消されていないことが多いです。一方で、否決の原因になった数値だけをピンポイントで直す修正は、審査担当者が最初に引っかかった論点に直接答える形になるため、同じ担当者が見ても「疑問が解消された」と評価しやすくなります。
担当者
具体的には、どの数字から優先して見直せばよいのでしょうか。
アドバイス
私が再申込みの相談を受ける際は、まず金融機関から伝えられた否決理由を一言一句メモしてもらい、その理由に対応する数字だけをピンポイントで直すようお伝えしています。理由が「収益性への懸念」であれば家賃根拠の追加、「返済比率の高さ」であれば自己資金の積み増しや借入額の見直しといった具合に、理由と修正箇所を1対1で対応させることが、再申込みの成功率を上げる一番の近道です。
実際に、この「理由と修正箇所を1対1で対応させる」考え方で再申込みに成功した相談者もいます。
この事例から読み取れるのは、否決理由が分かっている場合、関係のない項目まで手を広げる必要はないという点です。原因になった箇所だけを的確に直すほうが、審査担当者にとっても「何が変わったのか」が伝わりやすくなります。
※本事例は、イエウール土地活用の相談窓口にご相談いただいた方から、後日ヒアリングした内容をもとに再構成した想定事例です。金融機関への申込み・交渉はご本人が独自に行われたものであり、個人が特定できないよう一部内容を加工しています。融資条件は金融機関・個別の審査状況により異なります。
否決の連絡を受けた直後は、焦って別の金融機関にすぐ申し込みたくなる方も多いのですが、まずは慌てずに否決理由を確認することが先決です。
正直なところ、一度否決された金融機関にもう一度申し込む意味はあるのでしょうか。別の金融機関を探したほうが早い気もしています。
どちらも選択肢としてはありますが、判断基準が異なります。否決理由が「数値の根拠不足」のように事業計画書側の問題であれば、同じ金融機関に再申込みしても改善の余地があります。一方、「エリアの融資方針」のように金融機関側の方針が理由であれば、別の金融機関を探すほうが合理的です。まずは否決理由がどちらに当てはまるかを切り分けてください。
なるほど、うちの場合は「収支計画の根拠不足」と言われたので、事業計画書側の問題ですね。ちなみに、直し終えてからどのくらい期間を空けて再申込みすればいいのでしょうか。
私がお伝えしている目安は1〜3ヶ月です。修正が不十分なまま急いで再申込みすると、また同じ理由で否決されるリスクがあります。根拠資料を揃え終えたタイミングで申し込むのが基本ですが、あわせて別の金融機関にも並行して相談しておくと、選択肢を狭めずに済みます。
同じ金融機関に出し直すべきか迷っていましたが、理由の切り分け方が分かって迷いがなくなりました。まずは根拠資料を揃えて、並行して他の金融機関にも相談してみます。
担当者
「同じ金融機関に出し直していいのか」というご相談は、イエウール土地活用の窓口でも本当によくいただきます。否決理由を確認せずに焦って動いてしまう方が多いので、まずは理由の切り分けから始めることをお勧めしています。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
私が再申込みの相談を受ける際は、まず前回の否決理由を金融機関に確認できているかを聞きます。理由が分からないまま作り直しても、同じ箇所でつまずくことが多いためです。
アパート経営の事業計画書、作り方の3つの選択肢
公的機関のテンプレートを活用する
日本政策金融公庫などが公開している事業計画書のテンプレートを使う方法です。記載すべき項目があらかじめ整理されているため、必要事項の抜け漏れを防ぎやすいというメリットがあります。初めて事業計画書を作成する方は、まずこのテンプレートで全体像を把握してから、自分の物件情報を当てはめていくとスムーズです。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
実際に相談を受けた際は、テンプレートはあくまで骨組みとして使い、収支欄には必ず前述の3点セット(家賃根拠・建築費見積・金利条件)を追記するようお伝えしています。テンプレートを埋めただけで終わらせないことが重要です。
具体的には、テンプレートの収支欄に金額だけを書いて終わらせず、以下のように「金額+根拠の出所」をセットで追記します。
▼収支欄への追記例
| 3点セット | テンプレートの収支欄への追記例 |
|---|---|
| 家賃根拠 | 「月額家賃8.8万円(根拠:周辺エリアの類似物件4件の家賃相場が8.6万〜9.3万円のため、中央値付近に設定)」 |
| 建築費見積 | 「建築費6,200万円(根拠:施工会社から取得した見積書No.2026-0614の総額に基づく)」 |
| 金利条件 | 「借入金利2.0%・返済期間25年(根拠:金融機関から提示された事前審査回答書の条件に基づく)」 |
このように、金額の後ろに「(根拠:〇〇)」の一文を添えるだけで、審査担当者から見た数字の信頼性が大きく変わります。根拠資料(賃貸情報サイトの掲載ページ、見積書、事前審査回答書など)は、事業計画書本体とは別に添付資料としてまとめておくと、審査担当者が確認しやすくなります。
金融機関が用意したフォーマットを使う
融資を申し込む金融機関が独自のフォーマットを用意している場合は、そのフォーマットを使うのが最も確実です。金融機関ごとに重視する項目(自己資金比率・エリア特性・耐用年数など)が異なるため、指定フォーマットに沿って作成することで、審査担当者が確認したい情報を過不足なく伝えられます。
相談者の中には、複数の金融機関に同時に相談される方もいます。その場合、金融機関ごとにフォーマットが異なるため、1つの事業計画書を使い回すのではなく、各金融機関の様式に合わせて調整することが望ましいとされています。イエウール土地活用が複数のハウスメーカー・建築会社とやり取りする中で見えてきた傾向として、地方銀行・信用金庫は物件のエリア特性や地域内の賃貸需要を詳しく記載するフォーマットが多く、メガバンク・政策金融機関は自己資金比率や既存借入との返済比率を重視するフォーマットが多い傾向があります。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
私が相談を受ける際は、ベースとなる収支計画は1つ作った上で、金融機関ごとのフォーマットに転記する形をお勧めしています。数字の一貫性を保ちながら、様式だけを使い分けるのが効率的です。
エクセル・パワーポイントで自作する
指定のフォーマットがない場合や、より詳細な説明を加えたい場合は、エクセルやパワーポイントで自作する方法もあります。自由度が高い反面、記載すべき項目を自分で漏れなく揃える必要があるため、初めて作成する方にはやや難易度が高い方法です。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
自作する場合、私は最低限「プロフィール」「資産状況」「物件概要」「収支計画」「返済計画」の5項目が漏れていないかをチェックリスト形式で確認するようお伝えしています。項目の抜け漏れは、それだけで審査担当者への印象を下げてしまいます。
事業計画書に記載するべき内容と、収支計画の出し方
プロフィール・資産状況・物件概要
事業計画書には、大きく分けて次の項目を記載します。
- 申込者のプロフィール
職業・年収・勤続年数・不動産経営の経験の有無を記載します - 資産状況
預貯金・金融資産・既に所有している不動産の評価額を記載します - 物件概要
所在地・土地面積・構造・戸数・工期など、建築する物件の基本情報を記載します - 賃貸物件のコンセプト
ターゲットとする入居者層(単身者・ファミリー等)と、その根拠を記載します
これらの項目は、金融機関が申込者の返済能力と物件の妥当性を総合的に判断するための基礎情報です。項目自体は多くの解説記事で紹介されていますが、重要なのは「なぜその数字・その物件を選んだのか」という理由を添えることです。理由のない記載は、審査担当者にとって単なる自己申告にしかなりません。
自営業者や、自己資金があまり多くない状態で申込みを検討している場合は、資産状況の欄がやや不利に見えやすい点に注意が必要です。この場合は、資産状況の数字を大きく見せようとするのではなく、事業内容の安定性(取引先数・売上の継続年数など)や、返済比率を抑えた借入計画を別途示すことで、実行性を補強する書き方が有効です。イエウール土地活用の相談窓口でも、自己資金が少ない相談者ほど、収支計画の根拠を厚くすることで評価が改善したという声を多く聞きます。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
私が確認する際は、「単身者向け」と書かれていたら、周辺に大学・企業がある、駅から徒歩10分以内であるといった裏付けを一緒に確認します。ターゲット設定の根拠が示されているかどうかで、計画の説得力は大きく変わります。
収支計画、いくらの数字を入れればいいか
ここが、事業計画書の中で最も審査担当者に見られる部分です。抽象的な説明ではイメージが湧きにくいため、木造アパート一棟を想定した収支計画の具体例を見てみましょう。
※以下の数値はあくまで一般的な想定例です。実際の収支は、立地条件・建築費・金融機関の融資条件などによって大きく異なります。
▼木造アパート一棟(8戸・延べ床面積160坪)を想定した年間収支の例
| 項目 | 金額(年間) | 備考 |
|---|---|---|
| 家賃収入(満室想定) | 768万円 | 家賃8万円×8戸×12ヶ月 |
| 空室損失(入居率90%想定) | ▲76.8万円 | 満室想定の10%を控除 |
| 実効家賃収入 | 691.2万円 | 家賃収入-空室損失 |
| ローン返済額 | ▲420万円 | 借入6,000万円・金利2.0%・返済期間25年・元利均等返済の概算 |
| 必要経費(管理費・修繕積立・固定資産税等) | ▲130万円 | 家賃収入の概ね15〜20%を目安に計上 |
| 年間手残り収支(概算) | 約141万円 | 実効家賃収入-ローン返済額-必要経費 |
■ 数値の前提条件
家賃収入は周辺の賃貸相場(家賃8万円・8戸)を想定した仮の数値/ ローン返済額は借入6,000万円・金利2.0%・返済期間25年・元利均等返済で試算した概算値(月次返済額の概算係数を用いて算出)/ 必要経費は管理費・修繕積立金・固定資産税等を含む一般的な目安であり、物件の築年数・構造によって変動します/ 減価償却費を活用することで税務上の所得を抑えられる場合がありますが、本試算には反映していません。詳しくは減価償却でアパート経営の税金を抑える方法で解説しています。 実際の収支は個別条件により大きく異なります。
このように、家賃収入・空室損失・ローン返済額・必要経費を分けて示すことで、審査担当者は「どの前提条件が変わると収支がどう動くか」を把握しやすくなります。金額だけを一行で示すのではなく、内訳を分解して見せることが、実行性のある計画書の条件です。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
目安として、私は必要経費を家賃収入の15〜20%で計上するようお伝えしています。この範囲より低く見積もっている計画書は、審査担当者から「経費を過小評価しているのではないか」と見られやすいので注意が必要です。
事業計画書の作成に迷ったときの相談先
ここまでの内容を踏まえても、自分の物件・属性でどう数字を組み立てればよいか判断がつかない場合は、無理に一人で完成させようとせず、専門家に相談する方法もあります。ハウスメーカーや建築会社の担当者、賃貸経営に詳しいコンサルタントは、多くの事業計画書を見てきた経験から、金融機関に評価されやすい書き方を把握しています。
イエウール土地活用では、複数のハウスメーカー・建築会社を比較しながら、事業計画書の作成を専門家に相談することができます。1社だけの意見に頼らず、複数社の視点を取り入れることで、記載内容の妥当性を客観的に確認しやすくなります。実際に、会社ごとに事業計画書のフォーマット・家賃設定の考え方には差があり、1社目のフォーマットでは弱かった項目が、別の会社のフォーマットでは自然に補強できたというケースも珍しくありません。
また、アパート経営という選択肢だけにこだわらず、土地の売却や他の活用方法と比較したうえで判断したい場合は、活用・売却・保有を横断して相談できる窓口を利用する方法もあります。イエウール土地活用は、土地活用(イエウール土地活用)だけでなく、不動産売却(イエウール)、外壁塗装(ヌリカエ)、リフォーム(リフォスム)など複数のサービスと連携しており、事業計画書の作成段階で「そもそもアパート経営が最適か」という一歩手前の相談にも対応できる立場にあります。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
私が相談を受ける際は、1社だけの計画書を鵜呑みにせず、少なくとも2〜3社の収支計画を比較するようお伝えしています。会社によって家賃設定や必要経費の見積もり方に差があるため、比較することで数字の妥当性が判断しやすくなります。
事業計画書作成時の注意点
最後に、事業計画書を作成するうえで注意しておきたい2点を紹介します。
また、事業計画書のページ数が多すぎると、審査担当者が要点を把握しづらくなります。目安として8ページ程度に収め、詳細な根拠資料は別添とする形が読みやすいとされています。作成後も、金利動向や周辺相場の変化に応じて3〜5年ごとに見直すことで、実態に合った計画を保てます。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
実際に相談を受けた際は、計画書を作成した年から3年後に一度見直すことをお勧めしています。金利や周辺相場は数年単位で変わるため、当初の計画のまま放置すると、次の融資交渉や借り換えの際に説明がしづらくなります。
まとめ:事業計画書を審査に通りやすくする書き方
- 家賃・建築費・金利の3点には、必ず根拠資料を添える
- 入居率は95%と90%の二段階で試算し、悪化時の耐性を示す
- 収支は内訳を分解して見せ、金額だけの一行で済ませない
- 自分で判断がつかない場合は、複数社の事業計画書を比較しながら専門家に相談する
事業計画書は、金融機関への提出書類である以前に、自分自身がこのアパート経営で本当にやっていけるかを確認するための資料でもあります。まずは自分の場合の収支感覚をつかみ、そのうえで根拠のある数字に落とし込んでいくことが、審査に通りやすい事業計画書への一番の近道です。