アパートローンのシミュレーション|月返済額を今すぐ計算+「借りられるか」の判断基準まで解説

「シミュレーターを使ってみたんですが、どの金利を入力すればいいかわからなくて。不動産会社に聞いたら『今は変動金利が有利ですよ』と言われたんですが、それを信じていいものかどうかも判断できませんでした」(埼玉県さいたま市・郊外在住・58歳・男性)

アパートローンのシミュレーションを試したものの、「出てきた数字が自分にとって現実的かどうか」がわからない。それがいちばん多い悩みです。

原因は明確です。「返済額を計算すること」と「その返済額で経営が成り立つか判断すること」は、まったく別のスキルです。シミュレーターは前者しかやってくれません。後者を自分でできるようにするのが、この記事の役割です。

2024年3月に日銀がマイナス金利を解除し、同年7月に政策金利が0.25%へ、2025年1月にさらに0.5%へと段階的に引き上げられました。アパートローンの変動金利はすでに0.3〜0.8%程度上昇した金融機関も出ています。「今の低金利のうちに借りよう」という判断が正しいかを含め、この記事ではシミュレーションの数字をどう読むか、金利と期間の選び方、そして「返済できるか」の最終判断まで一気通貫で解説します。

目次
この記事を監修した人
吉崎誠二
監修 吉崎 誠二(よしざき せいじ)

不動産エコノミスト/社団法人住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産エコノミスト 宅地建物取引士 早稲田大学大学院 修了
30回+/年
講演実績
10冊+
著書
1997年〜
業界経験
専門領域
不動産市場予測 市場サイクル理論 賃貸住宅経営・収益分析 CRE(企業不動産)戦略 データ分析・メディア監修 企業・団体向け研修

不動産エコノミストとして市場予測・データ分析・企業コンサルを手がける第一人者。テレビ東京「WBS」やラジオNIKKEI出演、著書10冊以上、年間30回以上の講演実績を持つ。不動産市場を数字と理論で読み解き、実践的な視点で解説します。

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まず、下のシミュレーターで月返済額を出してください。

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シミュレーションで出た「月返済額」を正しく読む方法

月返済額が出たら、次の計算を必ずしてください。シミュレーターが出す数字は「月に何円返すか」であり、「その返済で経営が成り立つか」ではないからです。

最初に確認するのは「返済比率」です。返済比率とは、毎月の家賃収入(満室時)に対する月返済額の割合です。

返済比率の計算式

返済比率(%)= 月返済額 ÷ 月家賃収入(満室時)× 100

計算例①:月家賃収入30万円・月返済額12万円 → 返済比率 40%

計算例②:月家賃収入30万円・月返済額16万円 → 返済比率 53%(危険水域)

返済比率金融機関の目線実態での判断
40%以内 ◎ 審査に通りやすい ◎ 空室・修繕費・管理費を引いてもプラスになりやすい。理想水準
40〜50% ○ 審査は通るケースが多い △ 空室が出ると赤字になる可能性がある。修繕費の積立ができないリスク
50%超 ✕ 多くの銀行で審査通らない ✕ 満室でも赤字になるケースがある。経営として成立しない水準

「返済比率50%以内」という数字は金融機関の審査基準として広く使われていますが、これをクリアしていれば安全、ではありません。なぜかを説明します。

  1. 空室率の現実:2023年住宅・土地統計調査(総務省)によると、全国の賃貸住宅の空室率は18.8%。新築でも入居までに2〜4ヶ月かかるケースがあります。返済比率50%で計算していると、空室1戸が出た瞬間に手元キャッシュが底をつきます。
  2. 修繕費の積立不足:アパートは築10〜15年で外壁・屋根・給湯器などの大規模修繕が必要になります。費用の目安は年間家賃収入の10〜15%。返済比率が50%近いと、この積立に回す余裕がありません。
  3. 変動金利の上昇リスク:金利が1%上昇すると、3,000万円・30年借入の場合、月返済額は約1.7万円増加します。返済比率が50%ギリギリの計画は、金利上昇1本で一気に経営危機になります。

実手取りキャッシュフロー(毎月)

月家賃収入(満室)× 入居率(85%目安)= 実収入

実収入 − 月返済額 − 管理委託費(家賃の5〜8%)− 修繕積立(月2〜5万円)= 実手取りキャッシュフロー


計算例(月家賃30万円・月返済12万円・管理費1.8万円・修繕積立3万円)

30万円 × 85% = 25.5万円 − 12万円 − 1.8万円 − 3万円 = 8.7万円/月

👨‍💼 専門家のアドバイス
吉崎誠二 吉崎 誠二 不動産エコノミスト
住宅・不動産総合研究所 理事長

※宅地建物取引士・早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了・年間30回以上の講演実績

返済比率の計算で私がよく見るミスは、家賃を「満室想定」のまま使ってしまうことです。実態として、首都圏のアパートでも平均入居率は85〜90%前後。地方では70%台も珍しくない。さらに入退去時の原状回復費(1室あたり10〜30万円)も見落とされがちです。

シミュレーションを行う際は、まず家賃収入を80〜85%で計算し直してください。そこで返済比率が50%を超えるようであれば、借入額か返済期間の見直しが必要です。これをやらずに契約してしまったオーナーが、築5〜7年で経営に詰まるパターンを私は何十件も見てきました。
月返済額が出たら、まず「入居率85%で計算した返済比率」を確認する。それが40%以内なら安心ラインです。

アパートローンのシミュレーションで「どの金利を入力するか」で結果が数百万円変わる

金融機関の種別と金利の現実(2025年時点)

アパートローンの金利は「同じ銀行でも人によって違う」のが実態です。以下の相場は「属性が普通の個人オーナーが受けられる標準的な金利帯」として参照してください。

金融機関の種別変動金利(目安)固定金利(目安)特徴と注意点
メガバンク
(三菱UFJ・三井住友・みずほ)
1.7〜2.5%程度 3.0〜3.8%程度 審査が最も厳格。年収700万円以上・土地評価額が高い・建物は大手ハウスメーカー施工が条件になりやすい
地方銀行・信用金庫 2.2〜3.5%程度 3.5〜4.5%程度 地元の土地・物件に詳しく、メガバンクで通らないケースでも対応可。ただし金利はやや高め
信託銀行 2.0〜3.5%程度 3.2〜4.5%程度 富裕層向け。資産管理・相続との連携を重視。大口借入(1億円超)に強い
ネット系銀行
(オリックス銀行・SBJ銀行等)
2.9〜4.0%程度 3.5〜4.5%程度 属性がやや弱い・自営業でも審査が通りやすい反面、金利は高め
ノンバンク・信販系 3.5〜5.0%程度 4.0〜5.5%程度 最後の選択肢。審査は通りやすいが金利が高く、総返済額が大きく膨らむ

出典:各金融機関の公開情報・イエウール土地活用の2024〜2025年成約事例をもとにイエウール編集部が作成。実際の適用金利はオーナーの属性・物件評価・借入金額により異なります。

「どこで借りるか」の絞り込み方
1
まずハウスメーカー・工務店に「提携金融機関」を聞く

大手ハウスメーカーは複数行と提携しており、一般より優遇金利が出ることがあります。施主として個人で交渉するより金利が低い場合が多いです。

2
複数行に「事前相談」を入れて審査感度を測る

本審査の前に担当者レベルで相談すると「うちでは難しいかも」「これくらいの条件なら通りやすい」という感触を教えてもらえます。この段階では信用照会が入らないため、複数行に同時相談しても問題ありません。

3
本審査は「通りやすそうな金融機関」から順番に申し込む

本審査の申込みは信用情報に記録され、短期間に多数申し込むと審査に不利になることがあります。事前相談で感触を絞ってから1〜2行に絞って申し込むのが基本戦略です。

👨‍💼 専門家のアドバイス
吉崎誠二 吉崎 誠二 不動産エコノミスト
住宅・不動産総合研究所 理事長

※宅地建物取引士・早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了・年間30回以上の講演実績

金利の交渉で見落とされがちなのが「預金・取引実績」です。メインバンクとして長年取引がある金融機関は、一般顧客より0.2〜0.5%程度優遇してくれることがあります。特に地方銀行は関係重視なので、普段から口座を持っている地銀に最初に相談する価値があります。

また、自己資金(頭金)を物件価格の20〜30%以上入れることができると、金利交渉の余地が広がります。借入額が減るだけでなく、金融機関から見た担保評価が改善するためです。
関連記事:アパートローンの金融機関比較
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アパートローンの金利とは?相場や低金利で借りるコツを徹底解説 アパートローンは、通常の住宅ローンとは違い土地活用などでアパート経営を行うために借り入れるローンになります。本記事では、アパートローンの金利相場や低金利で借りるためのコツなどを詳しく解説しています。

2024〜2025年の金利上昇が、シミュレーションに与える具体的な影響

2024年3月、日本銀行は17年ぶりにマイナス金利政策を解除しました。その後、同年7月に政策金利を0.25%に引き上げ、2025年1月にさらに0.5%へと段階的に上げています。

借入条件金利2.0%の場合金利2.5%の場合金利3.0%の場合
3,000万円・30年 月約11.1万円
総額約3,985万円
月約11.8万円
総額約4,258万円
月約12.6万円
総額約4,547万円
5,000万円・30年 月約18.5万円
総額約6,641万円
月約19.6万円
総額約7,063万円
月約21.0万円
総額約7,578万円
8,000万円・35年 月約26.5万円
総額約1.11億円
月約28.3万円
総額約1.19億円
月約30.3万円
総額約1.27億円
変動金利を選ぶ前に確認:アパートローンには住宅ローンの保護ルールがない 住宅ローンの変動金利には「5年ルール(5年間は返済額変わらず)」「125%ルール(返済額は現在の125%まで)」があります。しかしアパートローンはビジネスローンの性質があるため、これらのルールが適用されないケースがほとんどです。金利が上がれば翌月から返済額がダイレクトに増加します。必ず契約前に確認してください。
👨‍💼 専門家のアドバイス
吉崎誠二 吉崎 誠二 不動産エコノミスト
住宅・不動産総合研究所 理事長

※宅地建物取引士・早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了・年間30回以上の講演実績

2013〜2023年の約10年間は超低金利が続き、変動金利が圧倒的に有利でした。しかし2024年以降の環境は変わっています。私が講演でよく使う数字ですが、アパートローンで変動金利を選んだオーナーの中で、金利上昇シナリオを計算して選んでいた人はおそらく3割以下。残り7割は「今が低いから」という理由だけで選んでいます。

今から借りるなら、必ず金利+1.0〜1.5%のシナリオを計算してから判断してください。

固定金利と変動金利、アパートローンはどちらを選ぶべきか

比較項目変動金利固定金利
金利水準(2025年目安)1.7〜3.5%程度3.0〜4.5%程度
月返済額の変動金利上昇で増加するリスクあり完済まで変わらない(安定性◎)
向いている借入期間20年以内・繰り上げ返済前提25〜35年の長期借入
金利上昇時のリスク返済額が増加し返済比率が悪化影響なし
金利が下がった場合返済額が下がり有利恩恵を受けられない
変動金利を選ぶ前の必須チェック
1
現在の金利+1.0%で返済比率を再計算する

現在2.0%の変動金利を想定しているなら、3.0%でシミュレーションし直してください。その返済比率が50%以内なら変動でも許容範囲です。

2
5年ごとの「繰り上げ返済計画」を立てる

変動金利を選ぶなら、家賃収入のうち月3〜5万円を繰り上げ返済用に積み立てておくと、金利上昇リスクへのバッファーになります。

3
「5年ルール」「125%ルール」の適用有無を確認する

アパートローンでは住宅ローンの保護ルールが適用されないケースがほとんどです。金利が上がれば翌月から返済額が変わります。必ず契約前に確認してください。

👨‍💼 専門家のアドバイス
吉崎誠二 吉崎 誠二 不動産エコノミスト
住宅・不動産総合研究所 理事長

※宅地建物取引士・早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了・年間30回以上の講演実績

多くのオーナーが見落としているのが、アパートローンでは住宅ローンの保護ルールが使えないという点です。2024年7月の利上げ後、実際に返済額が増えて慌てていたオーナーの相談を複数受けました。変動か固定かを選ぶ前に、まずこの仕組みを理解してください。
金利はシミュレーションの入力値の中で最も結果を左右します。「今の数字」だけでなく「金利が1%上がった場合」も必ずセットで試算してから判断してください。

返済期間は「物件の構造」で上限が決まる|シミュレーションで期間を間違えると計画自体が崩れる

金融機関がローン期間をどう決めるか(法定耐用年数の仕組み)

構造法定耐用年数新築でのローン上限(目安)主な特徴
木造(W造)22年20〜25年低コスト・建てやすい。ローン期間が短く月返済額が高くなりがち
軽量鉄骨造(骨格材3mm以下)19年15〜20年法定耐用年数が最も短い。月返済額が最も高くなる構造
軽量鉄骨造(骨格材3〜4mm)27年25〜30年積水ハウスのシャーメゾン等。30年ローンが組めると月返済を抑えやすい
重量鉄骨造(S造・骨格材4mm超)34年30〜35年ダイワハウス等の主力構造。コストと耐久性のバランスが良い
RC造(鉄筋コンクリート造)47年35〜40年最も耐久性が高く、長期ローンが組みやすい。月返済を最も抑えられる構造
👨‍💼 専門家のアドバイス
吉崎誠二 吉崎 誠二 不動産エコノミスト
住宅・不動産総合研究所 理事長

※宅地建物取引士・早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了・年間30回以上の講演実績

構造とローン期間の関係は、収益計画の根幹に影響します。木造22年・30年ローンでシミュレーションを立てていた方が、金融機関の審査で「25年しか組めない」と言われて月返済が想定より4〜5万円高くなり、計画を全面見直しになったケースを何度も見てきました。ハウスメーカーに相談する前に、まず自分の土地で建てる物件がどの構造になるかを確認し、それに対応したローン期間でシミュレーションするのが正しい順番です。

中古アパートは「残存耐用年数」が壁になる

残存耐用年数の計算式

残存耐用年数 = 法定耐用年数 − 経過年数

例①:築15年の木造アパート → 22年 − 15年 = 残存7年

例②:築20年のRC造マンション → 47年 − 20年 = 残存27年

例③:築25年の木造(耐用年数超過)→ 残存0年(融資困難)

物件残存耐用年数借りられる期間の目安注意点
築5年の木造17年15〜20年月返済が高くなる。利回りが高い物件でないと採算が合いにくい
築15年の木造7年7〜15年(銀行次第)審査が厳しく、月返済が非常に高くなる。自己資金が多い場合のみ検討価値あり
築25年の木造(超過)0年融資自体が難しい多くの金融機関で融資不可。現金購入かノンバンクのみ
築20年のRC造27年25〜35年まだ長期ローンが組みやすい
築30年のRC造17年15〜25年(銀行次第)大規模修繕が近いケースが多い。修繕積立の確認が必須
中古アパート購入前の必須確認事項
1
建物謄本で構造と建築年月日を確認する

不動産登記の建物謄本で「種類・構造・床面積・建築年月日」が確認できます。購入前に必ず取得し、残存耐用年数を自分で計算しておきましょう。

2
想定する金融機関に「何年まで融資できるか」を事前確認する

同じ築年数・構造でも、金融機関によってローン期間の上限が5〜10年異なるケースがあります。物件を決める前に複数行に「融資可能期間の目安」を確認してください。

3
修繕履歴と大規模修繕の時期・費用を確認する

購入後すぐに大規模修繕が必要になるケースがあります。屋根・外壁・給排水管・エレベーター等の費用は1棟あたり500〜2,000万円規模になることも。過去の修繕履歴と次回修繕の見積もりを必ず確認してください。

👨‍💼 専門家のアドバイス
吉崎誠二 吉崎 誠二 不動産エコノミスト
住宅・不動産総合研究所 理事長

※宅地建物取引士・早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了・年間30回以上の講演実績

中古アパートの落とし穴として私がよく指摘するのが、表面利回りの高さにつられて築古の木造を掴まされるパターンです。利回り12%と聞いて飛びついたが、銀行は7年しかローン期間を認めず、月返済が跳ね上がり、さらに購入翌年に屋根と給排水管の交換で800万円かかった。こういうケースは珍しくありません。

中古物件は「表面利回り」ではなく、修繕費・ローン期間制約・空室率を全て織り込んだ実質的なキャッシュフローで評価してください。表面利回り10%でも実質利回りが3〜4%台になる物件は山ほどあります。

返済期間の違いで月返済額・総コスト・キャッシュフローはどう変わるか

借入3,000万円・金利2.5%(元利均等返済)での比較です。「月返済を下げたい(期間を伸ばす)」か「総コストを下げたい(期間を縮める)」かは、毎月のキャッシュフローとのトレードオフです。

返済期間月返済額(目安)総返済額(目安)利息総額(目安)適した構造
15年約20.0万円約3,598万円約598万円軽量鉄骨(19年)
20年約15.9万円約3,818万円約818万円木造(22年)
25年約13.4万円約4,028万円約1,028万円軽量鉄骨(27年)
30年約11.8万円約4,258万円約1,258万円重量鉄骨(34年)
35年約10.7万円約4,492万円約1,492万円RC造(47年)
期間の長短はキャッシュフローと総コストのトレードオフ。まず「この物件でどの構造・何年まで借りられるか」を銀行に確認してから、シミュレーションの期間を設定してください。
👨‍💼 専門家のアドバイス
吉崎誠二 吉崎 誠二 不動産エコノミスト
住宅・不動産総合研究所 理事長

※宅地建物取引士・早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了・年間30回以上の講演実績

私が収益不動産のオーナーによくお伝えするのは、「返済期間は長めに設定して、繰り上げ返済で短くする」戦略です。長期で組んでおけば月返済が下がり、キャッシュフローが生まれる。そのキャッシュフローで繰り上げ返済を積み立て、5〜10年後にまとめて返済する。この戦略のほうが、最初から短期で組んで月返済に追われるよりも精神的・財務的な余裕が生まれやすいです。

シミュレーション結果の「最終判定」はキャッシュフロー計算で行う

全コストを引いた「実手取りキャッシュフロー」が毎月プラスかどうかが唯一の判断基準

返済比率が40%以内でも、「実際に毎月手元に残るお金がプラスかどうか」を確認するまで、そのシミュレーションは未完成です。

コストの種類目安見落としやすいポイント
月返済額シミュレーターの数字そのまま変動金利は上昇する可能性あり
管理委託費家賃収入の5〜8%
(月家賃30万円なら1.5〜2.4万円)
自主管理で省けるが、入居者対応・集金・修繕手配を全て自分でやる必要がある
修繕積立金月2〜5万円(棟単位)
または建物価格の1%/年
積み立てなければ大規模修繕時に一括での持ち出しが必要。築10〜15年で外壁・屋根の改修費が500〜1,500万円になることも
固定資産税・都市計画税年間家賃収入の3〜5%
(月換算で1〜2万円)
月次計算に月割りで組み込んでおかないと、支払い月に手元が突然厳しくなる
火災保険料年間10〜25万円
(月換算で約1〜2万円)
築年数・構造・延床面積で大きく変わる
空室損失満室家賃の15〜20%
(月家賃30万円なら4.5〜6万円)
「今は満室だから」は計算に入れない理由にならない
入退去時費用1室あたり10〜30万円
(月割りで1〜3万円)
原状回復費・クリーニング費・鍵交換費など。退去後に必ず発生

実手取りキャッシュフローの計算式(フル版)

月家賃収入(満室)× 入居率(85%)= 実収入

実収入 − 月返済額 − 管理委託費 − 修繕積立 − 固定資産税(月割)− 火災保険(月割)− 入退去費(月割)

実手取りキャッシュフロー


計算例(月家賃30万円・月返済12万円)

25.5万円 − 12万円 − 1.8万円 − 3万円 − 1.5万円 − 1.5万円 − 1万円 = 4.7万円/月

最低ラインは「月3万円以上のプラス」 手取りキャッシュフローがゼロ近辺では、空室が1ヶ月続くだけで赤字になります。最低でも月3万円以上、理想は月5万円以上のプラスを確保できるかをシミュレーション後に必ず確認してください。

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👨‍💼 専門家のアドバイス
吉崎誠二 吉崎 誠二 不動産エコノミスト
住宅・不動産総合研究所 理事長

※宅地建物取引士・早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了・年間30回以上の講演実績

私がセミナーで必ず聞くのは「固定資産税を月割りで計算に入れていますか?」という質問です。実際に計算していた方は受講者の1割にも満たない。固定資産税は年4回の分割納付ですが、月次のキャッシュフロー計算には必ず月割りで組み込んでおかないと、支払い月に突然手元が厳しくなります。

それと、修繕積立は後回しにされがちですが、これをしていないと築10年の大規模修繕時に800〜1,500万円の持ち出しが一度に来ます。そのとき追加でローンを組もうとしても、既存の残債がある状態では審査が厳しくなる。最初から積み立てておくのが唯一の正解です。

アパートローンのシミュレーションでよくある質問

シミュレーターで出た数字と、実際に銀行に審査を出したときの数字が違うのはなぜですか?

シミュレーターは「入力した金利・期間・借入額」で機械的に計算するだけです。銀行の実際の審査では、以下の要素が追加で考慮されるため、提示される条件がシミュレーターの前提と異なります。

  1. 適用金利の違い:シミュレーターに入力した金利と、銀行が実際に提示する金利(属性・担保評価次第)が違う。変動2.0%で試算したのに審査結果は2.8%だったというケースはよくあります。
  2. 保証料・事務手数料の未計上:保証料(借入額の1〜2%が一般的)や融資手数料(3〜5万円程度)はシミュレーターに含まれません。総支払額はシミュレーターより数十〜数百万円多くなります。
  3. 他の借入との合算:住宅ローン・カーローン等が残っている場合、合算した返済比率で審査されます。アパートローン単体しか計算しないシミュレーターとは結果が変わります。
👨‍💼 専門家のアドバイス
吉崎誠二 吉崎 誠二 不動産エコノミスト
現実の審査との乖離を最小化したいなら、金利はシミュレーターに自分の属性に近い金融機関の標準金利を入力し、保証料・手数料として借入額の2〜3%を別途加算して試算することをお勧めします。さらに実際の審査結果は現在の金利より0.5%程度高いと仮定して計算しておくと、後から驚くことが減ります。
元利均等返済と元金均等返済、アパートローンではどちらが向いていますか?

アパートローンを含む投資用不動産ローンでは、元利均等返済を選ぶ方が圧倒的に多いです。理由はキャッシュフローの安定性にあります。

比較項目元利均等返済元金均等返済
返済額の変化完済まで一定(計画しやすい)当初が最も高く、徐々に減少
初期の月返済額低め高め(元利より高い)
総返済額多い(利息が多くかかる)少ない(元本が早く減る)
向いているケースキャッシュフロー重視総コスト重視・当初から返済余力がある

3,000万円・2.5%・30年の場合、元金均等の初月返済は約16.0万円(元利均等の11.8万円より4.2万円高い)。この差額が毎月のキャッシュフローを圧迫するため、収益物件では元利均等を選ぶのが現実的です。

シミュレーションの結果、採算が合わないとわかった場合はどうすればいいですか?

採算が合わない原因は必ず以下のどれかに当てはまります。原因を特定してから対策をとることが大切です。

  1. 借入額が多すぎる:自己資金を増やして借入額を減らす。建物のグレードを下げる。建物規模を縮小する。
  2. 返済期間が短い(構造起因):建物の構造を変更する。たとえば木造からRC造に変えることで、ローン期間を延ばして月返済を下げられる場合があります。建築費は上がりますが、月返済額が下がりキャッシュフローが改善するケースがあります。
  3. 想定家賃収入が高すぎる:ハウスメーカーの提示する想定家賃が楽観的すぎるケースがあります。実際の周辺相場と比較し、85〜90%程度でシミュレーションし直してください。
  4. 物件・立地が収益に合っていない:「この土地でアパートを建てても採算が合わない」という場合もあります。駐車場経営・土地売却・他の土地活用との比較が必要です。
👨‍💼 専門家のアドバイス
吉崎誠二 吉崎 誠二 不動産エコノミスト
シミュレーションが合わないと感じたとき、最も重要な変数は実は「建築費」です。同じ建物規模でも、ハウスメーカーによって建築費が20〜30%変わることがあります。複数社に見積もりを依頼し、最もコストパフォーマンスの良いプランを選ぶだけでシミュレーションが改善するケースは少なくありません。

まとめ|シミュレーションを「判断」に変える3ステップ

アパートローンのシミュレーションを「数字を出して終わり」にしないために、この記事でお伝えした内容を3ステップで整理します。

アパートローンのシミュレーション 3ステップ
1
シミュレーションで月返済額を出したら、まず返済比率を計算する
月返済額 ÷ 月家賃収入(満室)× 100 が40%以内かを確認。金利は「現在の相場金利+1.0%」の両方で試算し、上昇シナリオでも40%以内に収まることを確認してください。
2
管理費・修繕積立・固定資産税・空室損失を引いた「実手取りキャッシュフロー」で最終判断する
月3万円以上のプラスが安全ラインの目安。ここがマイナスになる計画は、満室でも経営が成り立たないことを意味します。
3
採算の見通しが立ったら、複数の専門家・ハウスメーカーにプランを依頼する
建築費・提携金利・提案プランは会社によって大きく異なります。最低3社から見積もりと金融機関の提案を受けて比較することで、同じ条件でも月2〜5万円のキャッシュフロー改善につながるケースが多いです。

シミュレーションはゴールではなく、「この計画で進んでいいか」を確認するための道具です。返済比率・実手取りキャッシュフロー・建物構造によるローン期間制約の3つを理解したうえで専門家に相談することで、数字の根拠を持った交渉ができます。

「自分の場合、いくら借りられるか」「この返済計画で本当に採算が合うか」は、複数社のプランを比較することでしか見えてきません。まずシミュレーターで概算を出し、この記事の判断基準と照らし合わせてから、次のステップに進んでください。

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返済比率・キャッシュフロー・ローン期間の3つが揃って初めて「この計画で進める」が言えます。シミュレーションは出発点。次は専門家と一緒に具体的な数字を詰めてみてください。

\ この記事の編集者 /

イエウール土地活用編集部

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