アパートローン相続で相続放棄しても逃げられない負担とは

神奈川県横浜市(郊外)在住の50代・女性(2026年6月)
「父が急に亡くなり、経営していたアパートのローンが2,800万円ほど残っていることを、遺品整理をしていて初めて知りました。相続放棄すればこの借金からは逃げられると思っていたのですが、兄が父の連帯保証人(ローンの返済が滞ったときに、本人に代わって返済する義務を約束した人)になっていたと聞いて、それも違うのかもしれないと不安になっています。」
親族が経営していたアパートのローンが、ある日突然、自分の問題になる。多くの方が、遺産分割協議(相続人全員で、誰がどの財産・借金を引き継ぐかを話し合って決める手続き)をしている最中に「実はローンが残っている」と知らされ、何から確認すればよいのか分からないまま時間だけが過ぎていきます。「相続放棄をすればローンから逃げられるのではないか」「団信に入っていれば大丈夫なのか」「このまま経営を続けるべきか、売ってしまうべきか」。同じような状況にある方から、こうした疑問を数多くいただいてきました。
この記事では、アパートローンが相続の対象になるかどうかという基本的な仕組みから、相続放棄をしても消えない負担、名義変更の具体的な流れ、そして相続後に経営を続けるべきか売却すべきかを自分のケースで判断する方法まで、実際の相談データと専門家の解説を交えて解説します。読み終えたときには、自分が次に何をすべきかの見通しが立っている状態を目指します。
この記事で分かること
- アパートローンが相続対象になる仕組みと、団信の有無で結果がどう変わるか
- 相続放棄をしても連帯保証人の債務が消えない理由
- 名義変更(債務引受)の流れと、金融機関の審査で見られるポイント
- 相続後に経営を続けるべきか、売却すべきかを自分のケースで判断する早見表(こちらから確認できます)
アパートローンは相続対象になる
イエウール土地活用に寄せられる「アパートローン相続」に関する相談の中で、最初のご質問として特に多いのが「経営していた本人が亡くなったのだから、ローンも一緒になくなるのでは」というものです。結論から言うと、これは誤解です。アパートローンの残債は、被相続人(亡くなった方)の「マイナスの財産」として、原則どおり相続の対象になります。まずはこの前提を正しく理解したうえで、団信の有無・相続放棄の可否という2つの重要な分岐を確認していきましょう。
マイナスの財産として相続する
相談者の方々とお話ししていると、「プラスの財産(預貯金や不動産)だけ受け取って、マイナスの財産(借金や未払金)は都合よく除外できないか」という前提でご相談に来られる方が少なくありません。しかし相続の仕組み上、アパートローンのようなマイナスの財産は、プラスの財産と切り離すことができず、相続人は両方を同時に引き継ぎます。
| プラスの財産(例) | マイナスの財産(例) |
|---|---|
| 預貯金、有価証券、アパート(建物・土地)、自動車など | アパートローンの残債、未払いの固定資産税、葬式費用の未払分など |
相続税の計算上は、プラスの財産からマイナスの財産(アパートローン残債を含む)を差し引いた金額が課税対象になります。つまり、ローンが残っていること自体は、相続税の観点では負担を軽くする要素にもなります。ただし、これはあくまで税金の計算上の話であり、「返済義務そのものがなくなる」という意味ではない点に注意が必要です。
ここで見落とされがちなのが、相続したアパートそのものの評価額(プラスの財産としての価値)は、その後どの土地活用会社のプランを選ぶかによっても変わってくるという点です。イエウール土地活用に寄せられる相談の中では、同じ築年数・同じ間取りのアパートでも、修繕範囲や設備更新の提案内容が会社によって大きく異なり、結果として将来の収益見込み(ひいては資産としての評価)に差が出るケースを数多く見てきました。相続税の申告自体は税理士の領域ですが、「相続したアパートを今後どう活かすか」という判断は、1社の提案だけで決めてしまうと選択肢を狭めてしまいます。
監修:沖野元氏(公認不動産コンサルティングマスター)「相続財産がアパート1棟だけであれば判断はまだシンプルですが、実務では自宅や他の収益物件と合わせて複数の財産・債務が絡むケースが大半です。まずはアパートローン単体ではなく、財産・債務の全体像を一覧化することを最初にお勧めしています」
団信に加入していればローンを相続しない
相談を受けていて最も明暗が分かれると感じるのが、「団体信用生命保険(団信)」の有無です。団信は、債務者が死亡した際に保険金でローン残債が完済される仕組みで、団信が有効であれば、ローンそのものは相続の対象から外れます。ただし、団信が完済してくれるのはあくまで「ローンの残債」であり、ローンが完済されて負債のなくなったアパート自体は、通常どおりプラスの財産として相続の対象になります。
相続の相談窓口という立場上、住宅ローンの相続相談と見比べる機会が多いのですが、住宅ローンでは団信加入が事実上必須であるのに対し、アパートローン(事業性の融資)は住宅ローンと異なり団信への加入が任意になっている金融機関が多いという違いがあります。「ローンを組んだのだから当然団信も付いているはず」と思い込んでしまうと、実際には団信未加入で残債がそのまま相続されるケースに直面し、想定外の負担になることがあります。
【調査結果】親族のアパートローンを相続した方の団信加入状況
イエウール土地活用が外部調査会社に委託して実施した「アパートローン相続に関する意識調査」(以下、本調査)によると、「団信に加入していたためローンが完済された」と回答した方は35%にとどまり、「団信に未加入で残債をそのまま引き継いだ」と回答した方が42%と最も多い結果になりました。
※本調査の対象:親族が経営していたアパートローンを相続した経験がある40〜60代の男女110人(インターネットアンケート・調査期間2026年6月1日〜6月10日)。アパートローン相続という条件は該当者が少なく、イエウール土地活用の相談記録のみでは十分なサンプル数を確保できないため、本調査で補完しています。以下、本記事内の「本調査」は同一の110人パネルに複数の設問を尋ねたものです。回答の内訳は、団信で完済された35%、団信未加入で残債を引き継いだ42%、団信の有無を把握していなかった16%、その他7%(小数点以下の四捨五入により合計が100%にならない場合があります)。
アドバイス
沖野 元(公認不動産コンサルティングマスター)
「団信は住宅ローンと違って『加入して当然』のものではなく、金利を抑えるためにあえて団信なしを選んだ経営者も少なくありません。契約時の書類の細部まで覚えていないご本人も多いのが実情です。確認方法はシンプルで、ローンを借り入れている金融機関の窓口に死亡の事実を伝え、団信の加入状況を照会すること。通帳や返済予定表、契約書の控えがあれば数営業日で回答が得られますし、契約書が見つからなくても相続人であることを伝えれば照会は可能です。私が相談を受ける際は、この照会を最初の一歩としてお伝えしています。」
実際に、団信の有無を早い段階で確認したことで、その後の判断がスムーズに進んだ方の例を見てみましょう。
この事例から読み取れるのは、団信の有無という1つの事実を早期に確認できるかどうかで、その後の資金計画・遺産分割協議の進め方が大きく変わるという点です。逆に確認が遅れると、団信の有無が分からないまま遺産分割の話し合いを進めることになり、無用な混乱を招きます。
※インタビュー実施時期 / 2026年5月・対象ユーザー層 / アパートローンの相続を経験した一般の個人オーナー様・接点獲得方法 / 当メディア独自のアンケート調査およびオーナーコミュニティを通じた一般公募により、利害関係のない第三者のオーナー様と直接接点を構築・取材方法 / Web会議システムを用いた編集部による約40分間の1対1オンライン口頭インタビュー
アパートローンだけ相続放棄はできない
「ローンだけ相続放棄して、アパートなどのプラスの財産は受け取りたい」という都合の良い選択はできません。相続放棄は、プラスの財産とマイナスの財産のすべてを放棄する手続きであり、一部だけを選んで放棄することは認められていません。
さらに注意したいのが、亡くなった方のローンについて、相続人の誰かが「連帯保証人」になっていたケースです。連帯保証人自身が相続放棄をしても、その方が自分自身の意思で引き受けた連帯保証人としての返済義務は消えません。これは、連帯保証債務が相続財産そのものではなく、保証契約という別の法律関係に基づく義務だからです。
「相続放棄をした」=「亡くなった方に関する金銭的な責任は一切なくなった」ではありません。連帯保証人になっていた場合、相続放棄という手続きとは別の理由で、返済義務が残り続けます。
【調査結果】相続放棄を検討した方が抱いていた誤解
本調査の回答者110人のうち、「相続放棄を検討したことがある」と回答した66人に絞って質問したところ、58%が「相続放棄をすればローンの返済義務から完全に逃れられると思っていた」と回答しました。
※本調査の回答者110人のうち、アパートローンを相続した経験があり、かつ相続放棄を検討したことがある40〜60代の男女66人に絞った設問(同一調査内の別設問)。回答の内訳は、相続放棄で返済義務から完全に逃れられると思っていた58%、自分が連帯保証人になっていることを把握していなかった24%、連帯保証人の分は残ると最初から理解していた12%、その他6%。
アドバイス
「相続放棄」という言葉自体が、一般的には「すべての関わりを断ち切る手続き」という強いイメージで語られがちだからだと感じています。実際、相続放棄はプラス・マイナス双方の相続財産を放棄する手続きであり、その言葉のイメージ通りに機能します。ただし、連帯保証債務は「相続財産」ではなく、保証人ご本人が生前に個別に結んだ「保証契約」に基づく別の法律関係です。相続放棄という1つの手続きが、性質の異なる2つの債務(相続財産としてのローンと、個人の保証契約)の両方を消してくれると誤解してしまう、という構造だと理解しています。
この誤解が実際にどのような不安につながるのか、専門家と相談者のやり取りを見てみましょう。
相続放棄については、連帯保証人になっているかどうかで結論が変わります。まず確認いただきたいのは、ご自身、あるいはご家族の誰かが連帯保証人として契約書にサインしているかどうかです。
正直に言うと、兄が連帯保証人になっていることは分かったのですが、私自身は関係ないと思っていました。連帯保証人本人以外の相続人にも、何か影響はあるのでしょうか。
良い質問です。連帯保証人としての義務は、あくまでその契約にサインしたご本人にのみ生じます。お兄様以外の方が連帯保証人になっていなければ、あなた自身が保証債務を負うことはありません。ただし、お兄様が相続放棄をした場合、ローン本体の返済義務は他の相続人に移りますので、そこは分けて考える必要があります。なお、お兄様が「保証人としての義務からも逃れたい」という場合は、相続放棄では外れませんが、金融機関との交渉で保証人を交代する、あるいは新しい名義人の信用力次第で保証契約自体を見直してもらえる可能性はあります。自己判断で放置せず、早い段階で金融機関に相談することが何より重要です。
連帯保証人になっていない私には影響がないこと、そして兄についても交渉の余地があることが分かって、少し肩の荷が下りました。まずは兄と一緒に金融機関に確認してみます。
実際に、相続放棄と連帯保証人の関係に不安を抱えながら相談に来られた方が、どのような経緯で不安を解消されたのか、実例を見てみましょう。
このケースで注目したいのは、「相続放棄をするかどうか」という二択で考えるのではなく、連帯保証人の存在を前提に、経営継続・共同相続・売却という複数の選択肢を並べて比較した点です。最初の思い込み(相続放棄で解決する)のまま突き進んでいたら、より不利な結果になっていた可能性があります。
※インタビュー実施時期 / 2026年5月・対象ユーザー層 / アパートローンの相続と連帯保証人の問題に直面した一般の個人オーナー様・接点獲得方法 / 当メディア独自のアンケート調査およびオーナーコミュニティを通じた一般公募により、利害関係のない第三者のオーナー様と直接接点を構築・取材方法 / Web会議システムを用いた編集部による約45分間の1対1オンライン口頭インタビュー
なお、「アパートローンは相続税対策になる」と言われることがありますが、これは借入金によって相続税評価額を圧縮できる仕組みを指しています。ただし、アパート経営そのものは投資であり、入居率が下がれば節税効果以上に返済負担が重くのしかかります。節税目的だけでローンを組む・組ませることには慎重な判断が必要です。より詳しい仕組みは、アパートの相続で必要な6つの基礎知識で解説しています。
アパートローンを相続(名義変更)する方法
団信でローンが完済されなかった場合、相続人がローンの名義(債務者の地位)を引き継ぐには、金融機関の承諾を得た正式な手続きが必要です。名義変更は、大きく分けて3つのステップで進みます。
アパートローンの連帯保証人を確認する
まず、既存のローンに連帯保証人が付いているかどうかを確認します。連帯保証人がいる場合、原則としてその方がローンの名義(債務)を相続するのが自然な流れです。遺産分割協議の際には、ローン付きのアパートも含めて、誰がどの財産と債務を引き継ぐかを明確に取り決めておく必要があります。
金融機関の審査を受けて債務の引継ぎをする
金融機関の承諾なしに、勝手にローンの名義を変更することはできません。相続人が名義変更を申し出ると、金融機関は改めて審査を行います。ここで見られるのは、大きく分けて「アパート自体の収益性」と「相続人(新しい債務者)の返済能力」の2点です。
【調査結果】アパートローンの名義変更審査の結果
イエウール土地活用に寄せられた相談のうち、アパートローンの相続に関連して名義変更を金融機関に申請した相談者86件を分析したところ、一度の申請でそのまま承認されたケースは51%にとどまり、追加の収支資料や連帯保証人の追加などの条件付きで承認されたケースが32%ありました。
※対象:直近2年間にイエウール土地活用へ相談があり、アパートローンの名義変更(債務引受)を金融機関に申請したことが確認できた相談者86件(相談記録分析)。回答の内訳は、一度で承認51%、追加書類提出や連帯保証人追加等の条件付きで承認32%、否認・借り換え等の再構築が必要になった12%、その他5%。
アドバイス
沖野 元(公認不動産コンサルティングマスター)
「私が支援する際は、審査前に必ず直近3期分の確定申告書と家賃入金明細を整理してもらいます。金融機関はアパートの空室率と相続人自身の年収の両方を見ているため、収支が赤字気味であれば、審査前に管理会社を見直すだけで印象が変わることもあります。感覚で臨むのではなく、数字を整えてから申請することが、条件付き承認と一発承認を分ける差になります。」
審査が条件付き承認・否認になった場合でも、それだけで手詰まりになるわけではありません。イエウール土地活用では、名義変更の審査状況に応じて、既存プランのリフォームによる収益改善(リフォスム経由での比較)と、売却による負担軽減の両方を同じ窓口で並行して比較できます。金融機関の窓口だけで話を進めると、その金融機関の融資基準の範囲でしか選択肢が見えませんが、複数の土地活用会社・売却・リフォームを横断して比較できる立場だからこそ、審査が思うように進まない場合の代替案まで含めてご案内できます。
前述の相談記録86件をもう一歩踏み込んで見ると、「一度で承認」された相談者と「条件付き承認・否認」だった相談者の間には、相談時点での行動に傾向差がありました。
| 一度で承認された相談者(44件) | 条件付き承認・否認だった相談者(42件) | |
|---|---|---|
| 審査申請前に収支資料を整理していたか | 約7割が事前に整理済み | 約3割にとどまる |
| 複数の土地活用会社に相談していたか | 約6割が複数社比較を経ていた | 約2割にとどまる |
※相談記録86件(前述の名義変更審査86件と同一母集団)を、審査結果別に分類して集計した参考値。相談時の状況ヒアリング内容に基づく社内集計であり、外部監査は受けていません。
この傾向が示しているのは、「審査に通るかどうか」は金融機関側の基準だけで決まるものではなく、申請する側がどれだけ事前準備をしていたかにも大きく左右されるという点です。1社だけに相談していると、その会社の視点でしか収支の整え方を教わる機会がありませんが、複数社を比較する過程で、収支の見せ方や優先すべき修繕箇所についての助言を複数得られること自体が、結果的に審査準備の質を上げているのではないかと考えています。
債務者変更登記申請を行う
金融機関の承諾が得られたら、司法書士を通じて管轄の法務局に「債務者変更登記」を申請します。この手続きは、不動産の名義そのものを相続人に変更する「相続登記」が完了していることが前提になるため、相続登記と債務者変更登記をあわせて司法書士に依頼すると、手続きがスムーズです。親のアパートを相続する流れも、あわせて確認しておくとよいでしょう。
名義変更ができない・返済が滞った場合はどうなるか
ここまで手順を説明してきましたが、「もし名義変更の審査に通らなかったら」「遺産分割協議が長引いて返済が止まってしまったら」という不安を持つ方も少なくありません。結論から言うと、名義変更が決まらない間も、ローンの返済自体は待ってくれません。返済が滞ると、金融機関からの督促、それでも解消されない場合は残債の一括返済請求、さらに進むと任意売却や競売という段階に至る可能性があります。
「遺産分割協議が長引いたら、その間の返済はどうしていたのか」という点も気になるところだと思います。前述の相談記録86件のうち、遺産分割協議が3ヶ月以上長引いたケースは23件ありました。その間の返済対応の内訳を見ると、相続人の一人が一時的に立て替えていたケースが13件、被相続人名義の口座が凍結される前に引き出した資金で対応していたケースが6件、金融機関に相談し一定期間の返済猶予を受けられたケースが4件でした。「協議が長引く=即座に滞納する」というわけではなく、多くの場合は相続人間または金融機関との調整によって、返済自体は継続できているというのが実態です。ただし、口座凍結前の資金確保や、早い段階での金融機関への相談が、これらの対応を可能にしている前提でもあるため、事前準備の章で触れた口座の一本化・金融機関への早期相談が、ここでも活きてきます。
連帯保証人を立てられず名義変更の審査が通らない場合でも、必ずしも即座に一括返済を求められるわけではありません。まずは金融機関に状況を伝え、返済計画の見直しや、後述する売却という選択肢も含めて早めに相談することが、最も悪い事態を避ける近道です。「相談すると不利になるのでは」と連絡を先延ばしにすることが、結果的に選べる選択肢を狭めてしまいます。監修の沖野元氏も「返済の目処が立たないまま連絡もせずに滞納が続くケースを最も避けてほしい。督促の段階であれば返済条件の見直しや任意売却などまだ選べる手段が複数残っているが、競売まで進むと選択の幅が一気に狭まる」と指摘しています。
「連帯保証人になれる人が身内にいない」という状況は珍しいことではありません。前述の相談記録86件のうち、連帯保証人を新たに立てられなかったケースは12件ありました。その後の経過を見ると、金融機関との交渉により単独名義のまま承認されたケースが3件、親族以外の第三者に保証人を依頼して承認に至ったケースが5件、承認に至らず売却へ方針転換したケースが4件という内訳でした。件数としては多くありませんが、「連帯保証人がいない=即座に行き詰まる」わけではなく、実際には7割強のケースで名義変更か売却かのどちらかの形で解決に至っている、というのが実態です。
アパートローン相続で事前にやっておくべき準備
この章で分かること
ここまでは相続が発生した後の対応を中心に説明してきましたが、まだ相続が発生していない、あるいはこれから起こりうるという段階であれば、事前にできる準備があります。
遺言状を作成してもらう
誰がアパート(とローン)を相続するかを、生前に遺言で明確にしておくことで、相続発生後の話し合いが格段にスムーズになります。遺言状がない場合、遺産分割協議がまとまるまでローンの返済も宙に浮いた状態になりやすく、これが相続人間のトラブルの火種になりがちです。遺言状の準備を含めた相続全体の基礎知識は、アパートの相続で必要な6つの基礎知識で詳しく解説しています。
家賃収入が入る口座とローン返済口座をまとめる
アパートの所有者が亡くなると、その方名義の口座は一時的に凍結されます。家賃の入金口座とローンの返済口座が別々になっていると、口座凍結中に返済が滞ってしまうリスクがあります。生前のうちに口座を一本化しておく、あるいは家族に口座情報を共有しておくだけでも、いざというときの混乱を大きく減らせます。
あらかじめ金融機関に相談する
相続が発生する前の段階で金融機関に相談しておくと、現在の経営状況について評価を受けられるほか、実際に相続が発生した際の名義変更もスムーズに進みやすくなります。「まだ相続していないから相談できない」と考えず、早めに動くことが結果的に家族の負担を減らします。
アドバイス
沖野 元(公認不動産コンサルティングマスター)
「実際に相談を受けた際は、まず現経営者ご本人と後継予定者に同席してもらい、金融機関の担当者を交えた三者面談を勧めています。生前にこの場を一度でも設けておくと、相続発生後の手続きが驚くほどスムーズになったケースを何度も見てきました。」
なお、事前準備の段階では「このままアパートを引き継ぐ前提」で考えがちですが、経営を続けるか売却するかは、実際に相続した後の状態(団信の有無・空室率・築年数など)を踏まえて判断すべき事柄です。次の章で、その判断基準を具体的に整理します。
経営を続ける前提で準備を進めたい方は、複数の土地活用会社が作成したプランを比較して、将来の相続に備えることができます(売却も視野に入れたい方は、後述の判断早見表もあわせてご確認ください)。
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土地からお探しの方は、まずはご希望のエリア、または現住所をご入力いただければ、最適なプランをご紹介します。
アパートローン相続後、続けるか売るか判断する早見表
ここまでで、団信・連帯保証人・名義変更という手続き面の疑問は解消できたはずです。ただ、多くの方が本当に知りたいのは、その先にある「自分はこのアパートの経営を続けるべきか、それとも手放すべきか」という判断ではないでしょうか。ここからは、そのための考え方を整理します。
| チェック項目 | 継続向きのサイン | 売却検討向きのサイン |
|---|---|---|
| 団信の有無 | 団信でローンが完済され、負債のない状態で相続できた | 団信未加入で、まとまった残債をそのまま引き継ぐ |
| 連帯保証人 | 連帯保証人を確保でき、名義変更審査の見通しが立っている | 連帯保証人になれる人がおらず、審査通過に不安がある |
| 現在の空室率 | 空室率が低く、家賃収入で返済を十分にまかなえている | 空室率が高く、固定費(税金・保険・管理費)が家賃収入を圧迫している |
| 築年数 | 築年数が浅く、当面大規模修繕の予定がない | 木造で築30年前後、鉄骨造・RC造で築35〜40年前後にさしかかり、大規模修繕や建て替えの検討時期が近い |
4項目のうち「継続向きのサイン」に3つ以上当てはまる場合は、経営継続に向いている可能性が高いといえます。逆に「売却検討向きのサイン」に2つ以上当てはまる場合は、無理に継続するより売却を含めて検討したほうが、結果的に負担が少なくなるケースが多く見られます。判断に迷う場合は、どちらか一方に決め打ちせず、両方の選択肢を並行して情報収集することをおすすめします。
なお、この早見表は木造・鉄骨造・RC造のいずれにも共通する考え方です。構造ごとに法定耐用年数(木造22年、鉄骨造27〜34年、RC造47年など)が異なるため、大規模修繕の検討時期は構造に応じて読み替えてください。また、複数棟をまとめて相続した場合は、1棟ずつこの早見表に当てはめて判断することをおすすめします。棟によって団信の有無や築年数が異なることが多く、まとめて一つの結論を出そうとすると判断を誤りやすいためです。
この判断が難しいのは、あなただけではありません。イエウール土地活用は、土地活用会社と不動産売却の両方の選択肢を横断してご案内できる立場にあります。ハウスメーカー1社に相談すると、その会社が扱う建築プランの範囲でしか話が進まないことが多いのですが、活用と売却のどちらも選択肢として並べて考えられる相談窓口は限られています。実際、土地活用に関するご相談をいただく中でも、最終的に売却も含めて比較検討したいという声を数多くいただいています。
また、イエウールは土地活用・売却の比較だけでなく、リフォーム比較の「リフォスム」、不動産売却の情報サイトなど、同じグループ内で住まいに関する複数のサービスを展開しています。たとえば「経営は続けたいが、大規模修繕までは踏み切れない」というケースでは、建て替えではなくリフォームでの延命という選択肢を同じグループ内の情報と合わせて検討できるのも、単独の建築会社や不動産売却サイトにはない強みです。土地活用の比較サイトの中には、活用プランの比較にとどまり、売却やリフォームまで含めた横断的な提案ができないところも少なくありません。相続後の選択肢を1か所で幅広く比較したい場合は、こうした複数サービス連携の有無も確認してみるとよいでしょう。
「複数社を比較すると具体的にどれくらい違うのか」を実感しにくいという声もよくいただくため、実際にイエウール土地活用を通じて3社のプランを比較検討した相談者(築22年・木造アパート8戸・空室率約2割を相続したケース)の提案内容を、個人が特定できない範囲で整理したものを紹介します。
| 提案会社 | 提案内容 | 概算費用 | 想定家賃収入への影響 |
|---|---|---|---|
| A社 | 建て替え(新築木造アパートへ) | 約6,800万円 | 家賃収入 約1.4倍見込み |
| B社 | 水回り・外壁を中心とした大規模修繕 | 約950万円 | 空室率2割→1割程度に改善見込み |
| C社(売却査定) | オーナーチェンジ物件として売却 | 売却額目安 約4,200万円 | (該当なし) |
※提案内容・金額は、イエウール土地活用に寄せられた複数の相談事例をもとに、個人・企業が特定できないよう加工して再構成した参考例です。実際の提案内容・金額は物件の状態や地域、時期によって異なります。
このケースでは、建て替え(A社)・修繕による延命(B社)・売却(C社)という3つの方向性が、費用も効果もまったく異なる形で並びました。1社にしか相談しなかった場合、最初に話を聞いた会社の提案(たとえば建て替え)だけを前提に検討を進めてしまい、実際にはより費用対効果の高い選択肢(この例では修繕による延命)があることに気づけない、というケースが少なくありません。複数の提案を横並びで比較できることそのものが、ポータルを経由する意味だと考えています。
【調査結果】相続後にアパートをどうしたか
本調査の回答者110人に、相続後の対応を尋ねたところ、「そのまま経営を継続した」が48%と最も多く、「売却した」が37%、「まだ結論を出せていない」が15%という結果になりました。決して、継続一択・売却一択と決めつけられるテーマではないことがうかがえます。
※本調査の回答者110人(同一調査内の別設問)。回答の内訳は、そのまま経営を継続した48%、売却した37%、まだ結論を出せていない15%。
アドバイス
沖野 元(公認不動産コンサルティングマスター)
「私が相談を受けていて感じるのは、決め手になっているのは団信の有無よりも、実は空室率と築年数の組み合わせだということです。負債がなくても老朽化が進んでいれば継続の負担は重くなりますし、逆に残債があっても収益が安定していれば継続を選ぶ方は多いです。1つの数字だけで判断せず、早見表の4項目を総合的に見ることをお勧めしています。」
正直に言うと、築28年で空室が3割ほどある状態です。私のようなケースは、続けるより売ったほうがよいのでしょうか。
空室率3割は、たしかに軽視できない水準です。ただ、それだけで即売却と判断するのは早いです。最寄り駅からの距離や設備の古さが原因で、立地そのものが直せない場合を除けば、リフォームによる差別化で改善する余地があります。私が同じような相談を受けた際は、まず大規模なリフォーム費用をかける前に、水回り設備の更新など優先度の高い箇所から着手し、それでも改善が見えない場合に売却も選択肢に入れる、という順序をお勧めしています。いきなり大きな投資判断をする必要はありません。
いきなり売却を決めなくてもよいと分かって安心しました。まずは水回りの見直しから相談してみます。
実際に、判断早見表と同じような考え方で継続を選んだ方と、売却を選んだ方、それぞれの事例を見てみましょう。
2つの事例から読み取れるのは、団信の有無・空室率・築年数という同じ4項目を確認しても、状況によって結論がまったく逆になるという点です。だからこそ、自分のケースを早見表に当てはめて確認する作業を省略しないことが大切です。
※インタビュー実施時期 / 2026年5月〜6月・対象ユーザー層 / アパートローンを相続した一般の個人オーナー様・接点獲得方法 / 当メディア独自のアンケート調査およびオーナーコミュニティを通じた一般公募により、利害関係のない第三者のオーナー様と直接接点を構築・取材方法 / Web会議システムを用いた編集部による約40〜60分間の1対1オンライン口頭インタビュー
早見表に当てはめてみて、「継続向き」に近いと感じた方は複数の土地活用会社のプランを比較することから、「売却検討向き」に近いと感じた方はまず売却額の目安を知ることから始めるとよいでしょう。どちらの結論に近いかによって、次に確認すべき情報は変わります。以下の2つから、ご自身の状況に近い方を選んでください。
ここで「ローンが残っている状態でも、本当に売却できるのか」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。本調査で「売却した」と回答した41人(前述の37%)に絞って確認したところ、売却の意思決定をした時点でローンが完済されていなかった方は63%にのぼりました。多くの場合、売却額でローン残債を完済し、残った金額を相続人で分けるという形で決着しており、ローンが残っていること自体が売却の障害にはなっていません。ただし、売却額がローン残債を下回る場合は、その差額を自己資金で補う必要があるため、売却額の目安を早めに確認しておくことが重要です。
活用・売却を含めた土地・アパートの使い道全般をどこに相談すればよいか迷う場合は、土地活用の相談先もあわせてご覧ください。
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ローンが残っていても、アパート一棟の売却額の目安を無料で確認できます。まずは今の資産価値を知ることから始めてみましょう。
アパートローン相続でよくある質問
まとめ|アパートローン相続は「放棄すれば終わり」ではない
アパートローンは、亡くなった方のマイナスの財産として、原則どおり相続の対象になります。団信に加入していればローンは完済されますが、加入していなければ相続人がそのまま引き継ぐことになります。そして、最も誤解されやすいのが、相続放棄をしても連帯保証人としての義務は消えないという点です。まずはこの前提を正しく押さえたうえで、名義変更の手続きを進める必要があります。
そのうえで最も重要なのは、手続きを終えたその先にある「経営を続けるべきか、売却すべきか」という判断です。団信の有無・連帯保証人の有無・空室率・築年数という4つの視点で自分のケースを早見表に当てはめれば、迷ったまま立ち止まる必要はありません。
不安なまま先延ばしにするよりも、今の状況を整理して、複数の選択肢を比較することが、後悔しない判断につながります。まだ早見表で自分のケースを確認していない方は、続けるか売るか判断する早見表から始めてみましょう。すでに確認した方は、判定結果に合わせて次の一歩に進んでください。