アパートの修繕費はいくら?築年数でわかる金額の目安と「払えない」時の対処法

アパートを保有していて、「そろそろ外壁や屋根が傷んできた気がするけれど、修繕費が一体いくらかかるのか見当もつかない」「入居者が退去したけれど、原状回復費はどこまで自分が払うものなのか分からない」と感じていませんか。
修繕費は、アパート経営を続けるうえで避けて通れない支出です。しかも金額の幅が非常に大きく、数万円で済む修繕もあれば、大規模修繕で数百万円単位になることもあります。「思っていたより高額で払えるか不安」というお悩みは、決して珍しいものではありません。
修繕費について検索すると、費用の種類や一般的な相場を紹介する記事は数多く見つかります。しかし、それだけでは「結局、自分の物件は今いくら備えればいいのか」「想定より高額になったとき、どう判断すればいいのか」までは分かりません。この記事が他の解説記事と違うのは、単なる相場の紹介にとどまらず、①築年数・構造・戸数規模から自分の物件が今どのフェーズにいるかを判定できる、②イエウール土地活用に寄せられた相談実績・複数社比較データという一次情報に基づいている、③想定より高額・払えない場合の出口まで判断材料を示している、という3点です。
この記事では、アパートの修繕費を「原状回復」「予防修繕」「大規模修繕」の3つのフェーズに整理したうえで、自分の物件が今どのフェーズにいるのかを築年数・構造・規模から把握できる早見表、修繕費を誰が負担すべきかの判断基準、確定申告時の取り扱い、そして想定より高額になった・払えなくなった場合の具体的な選択肢まで、まとめて解説します。
アパートの修繕費、まず自分の物件はどのフェーズ?
「アパートの修繕費」と一口に言っても、実は性質の異なる3つの支出が混在しています。この3つを切り分けずに相場だけを見てしまうと、自分の物件にとって今必要な金額が分からず、不安ばかりが募ってしまいます。
| 分類 | 発生タイミング | 費用目安(10戸規模) |
|---|---|---|
| 原状回復費 | 入居者の退去のたび | 1室あたり数万円〜20万円程度 |
| 予防修繕費 | 3〜5年に1回程度 | 1回あたり数万円〜数十万円 |
| 大規模修繕費 | 10〜15年に1回程度 | 1回あたり数百万〜数千万円 |
ただし、この目安は10戸規模を前提にしたものです。5戸程度の小規模物件と20戸規模の物件とでは、予防修繕・大規模修繕にかかる総額は大きく変わります。自分の物件の戸数に近い列を確認してみてください。
| 分類 | 5戸規模 | 10戸規模 | 20戸規模 |
|---|---|---|---|
| 原状回復費(1室あたり) | 数万円〜20万円程度 | 数万円〜20万円程度 | 数万円〜20万円程度 |
| 予防修繕費(1回あたり) | 30万円〜80万円程度 | 50万円〜150万円程度 | 100万円〜300万円程度 |
| 大規模修繕費(1回あたり) | 300万円〜800万円程度 | 500万円〜1,500万円程度 | 1,000万円〜3,000万円程度 |
※国土交通省「賃貸住宅の計画的な維持管理及び修繕の実施について」における共用部・外壁等の修繕範囲の考え方をもとに、イエウール土地活用に寄せられた戸数別の見積もり相談データ(直近2年間・集計対象約210件)から中央値付近のレンジを算出しています。構造・立地・工事範囲によって実際の金額は変動します。
原状回復費は1室あたりの単価そのものは戸数によって変わりませんが、予防修繕費・大規模修繕費は建物全体の外壁面積や共用設備の数に比例して増えるため、戸数が2倍になれば費用もおおむね比例して増えると考えておくとよいでしょう。
さらに、木造・鉄骨造・RC造という構造の違いによっても、修繕サイクルと金額は変わってきます。以下の早見表とタイムラインで、自分の物件の築年数と構造を当てはめてみてください。
| 築年数 | 木造 | 鉄骨造 | RC造 |
|---|---|---|---|
| 築5年 | 原状回復中心 | 原状回復中心 | 原状回復中心 |
| 築10年 | 予防修繕(外壁・給排水) | 予防修繕(屋根・外壁) | 予防修繕(防水・タイル) |
| 築15〜20年 | 1回目の大規模修繕 | 1回目の大規模修繕 | 1回目の大規模修繕 |
| 築30年 | 2回目の大規模修繕・設備更新 | 2回目の大規模修繕・設備更新 | 2回目の大規模修繕・設備更新 |
アドバイス
私が相談を受ける中でよくお伝えするのは、「今すぐ大きな金額が必要というわけではなくても、自分の物件が今どのフェーズにいるかを早めに把握しておくことが最大の防御策になる」ということです。大規模修繕は突然やってくるものではなく、予防修繕を怠った結果として前倒しで発生するケースが非常に多いのです。
ここで気になるのが、「大規模修繕の見積もりは、なぜ当初の想定より高くなってしまうことが多いのか」という点です。実はこの背景には、予防修繕を先送りにしてきた結果、劣化が想定以上に進行していたというケースが少なくありません。予防修繕を怠ると、本来なら軽微な補修で済んだはずの箇所が、大規模修繕のタイミングで全面的なやり替えが必要な状態にまで悪化してしまうためです。この因果関係を、イエウール土地活用に寄せられた相談実績から確認してみましょう。
大規模修繕の見積もりが当初想定より高くなった要因の内訳
※イエウール土地活用に寄せられた、大規模修繕を実施したオーナー向けの相談記録分析(直近2年間・集計対象約190件)。見積もり金額が当初の想定を上回ったと回答した方に、最も大きな要因を尋ねた結果の内訳。「想定外の追加工事(配管の腐食・シロアリ被害等)」38%、「資材・人件費の高騰」29%、「修繕範囲の見誤り(当初は部分修繕の想定だったが全面修繕が必要と判明)」21%、「その他」12%。
約4割が「想定外の追加工事」を理由に挙げているという結果を受けて、この差がどこから生まれるのか、専門家に聞いてみました。
担当者
約4割の方が「想定外の追加工事」で費用が膨らんでいるのですね。これは予防修繕を先送りにしてきたことと関係があるのでしょうか。
アドバイス
関係があるケースが多いです。外壁のひび割れや屋根の防水層の劣化を放置すると、そこから雨水が浸入し、内部の下地や配管まで傷んでしまいます。表面上は多少の汚れ程度に見えても、内部で腐食が進んでいるケースは珍しくなく、大規模修繕の段階で解体してみて初めて「想定外の追加工事」として発覚するのです。つまり、追加工事の多くは偶発的なトラブルというより、予防修繕を先送りにした結果の顕在化だと考えています。
担当者
では、先送りにしないためには、具体的にどのタイミングで何をすればよいのでしょうか。
アドバイス
私が相談を受ける際は、築10〜12年のタイミングで一度、外壁・屋根・給排水管の状態を専門家に見てもらうことをお勧めしています。この時点で軽微な補修(部分的な外壁の打ち直しや配管の洗浄など)を済ませておくと、その後の大規模修繕で発覚する追加工事の範囲を大きく縮小できます。目安として、見積もり総額の1〜2割を予備費として確保しつつ、築10〜12年時点の点検を先に済ませておくという2段構えの備え方を、実務ではよくお伝えしています。
実際に、このタイミングでの点検・予防修繕を行ったオーナーの事例を見てみましょう。
この事例から読み取れるのは、予防修繕を後回しにせず築10〜14年のタイミングで一度専門家に点検してもらうことが、大規模修繕時の想定外コストを抑える具体的な行動として機能するという点です。
※本体験談は、イエウール土地活用にご相談いただいたオーナー様への編集部取材をもとに作成しています。個人が特定できないよう氏名等を加工・匿名化しており、掲載している費用・時期はご本人から提供いただいた情報に基づきます。
まず知りたいことを選んでください
修繕費は誰が払う?負担区分の判定基準
入居者の退去後に発生する原状回復費が、自分(オーナー)と入居者のどちらの負担になるのかを知りたい方も多いのではないでしょうか。この判断基準は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」に沿って整理できます。
改正民法(2020年4月施行)第623条でも、賃借人の原状回復義務は「通常損耗・経年変化を除く」ことが明文化されています。つまり、原則として通常の劣化はオーナー負担、入居者の使い方に起因する損傷は入居者負担という整理です。
複数のオーナーからお話を伺う中でよく見られるのが、「退去時の修繕費はすべて敷金で相殺できる」という思い込みです。実際には経年劣化分はオーナー負担となるため、敷金だけでは足りず追加でオーナーが負担するケースが一定数あります。逆に、入居者に請求できる範囲を必要以上に広く解釈してトラブルになるケースも見られます。どちらの立場からも判断基準を正しく知っておくことが、退去精算のトラブル回避につながります。
大規模修繕費と税務(修繕費か資本的支出か)
ここまで、負担区分という「誰が払うか」の論点を整理してきました。ここからは、修繕費が発生した後の「確定申告でどう処理すべきか」という論点に移ります。特に大規模修繕のように金額が大きくなる支出は、経費として一括計上できるのか、それとも数年〜数十年かけて償却すべきなのか、判断に迷う方も多いのではないでしょうか。
大規模修繕を行った場合、その支出は税務上「修繕費」として全額をその年の経費にできる場合と、「資本的支出」として減価償却しなければならない場合とに分かれます。この判断を誤ると、確定申告時に税務署から指摘を受けるリスクがあります。
| 区分 | 目安となる基準 | 会計処理 |
|---|---|---|
| 修繕費 | 1件20万円未満、またはおおむね3年以内の周期で行う原状回復的な工事 | その年の全額を経費計上 |
| 資本的支出 | 建物の価値・耐久性を高める増改築・グレードアップ | 減価償却により数年〜数十年かけて経費化(木造22年・RC造47年など構造ごとの耐用年数に応じる) |
修繕費が一時的に大きく計上されている申告は、税務署が内容の妥当性を確認するため注視する傾向があります。工事の発注前から「なぜ修繕費(または資本的支出)として計上するのか」を説明できる状態を整えておくことが重要です。高額な工事や判断に迷うケースでは、発注前に税理士へ相談することをお勧めします。
修繕費が想定より高額・払えないときの選択肢
ここまでの内容で、自分の物件のフェーズや負担区分は把握できたはずです。しかし実際に見積もりを取ってみたら、想定していた積立額を大きく超えていた、というケースも少なくありません。イエウール土地活用では、こうした「見積もりが想定より高額で払いきれるか不安」というオーナーが実際どのように対処したか、相談実績をもとに調査してみました。
【調査結果】修繕費が積立額を超えた際の資金調達方法
イエウール土地活用の相談記録分析(直近2年間・集計対象約150件、修繕費が積立額を上回ったと回答したオーナーが対象)によると、最も多い対処法は「積立金の一部取り崩し+追加借入の組み合わせ」で34%でした。
| 対処法 | 割合 |
|---|---|
| 積立金の取り崩し+追加借入の併用 | 34% |
| アパートローンの借り換え・追加借入のみ | 27% |
| 自己資金の追加投入 | 24% |
| その他(一部売却・工事範囲の縮小など) | 15% |
※対象:直近2年間にイエウール土地活用へ相談された方のうち、大規模修繕の実施時に見積額が積立額を上回ったと申告した約150件。複数回答は除く。自己申告に基づく集計。
想定より高額になった場合、選択肢は大きく3つに分かれます。どれか1つが正解というわけではなく、物件の収益性や保有目的によって適切な選択は変わります。
| 選択肢 | メリット | デメリット | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 借入(アパートローンの追加・借り換え) | 手元資金を温存できる | 返済負担が増え、収支計画の見直しが必要 | 物件の収益性が高く、返済余力がある場合 |
| 一部売却・買い替え | 修繕負担そのものを手放せる | 売却タイミングによっては希望価格に届かない場合があるほか、入居中の部屋がある場合は立ち退き料が発生し、その分手取りが目減りすることがある | 築年数が古く今後も修繕費がかさむ見込みの場合 |
| 保有継続(工事範囲の見直し・時期分散) | 支出のタイミングを調整できる | 先送りにより一部劣化が進行するリスクがある | 緊急性の低い工事を含む場合 |
特に注意したいのが、一部売却・買い替えを選ぶ場合のコストです。入居者がいる状態で物件を手放す、あるいは建て替えのために退去してもらう必要がある場合、オーナー都合の解約となるため、入居者に対して立ち退き料を支払うのが一般的です。この立ち退き料は交渉次第で金額が大きく変わるため、「修繕費が払えないから売却すればよい」と単純に考えると、想定外の追加負担に直面することがあります。立ち退き料の相場や交渉の進め方については、アパートの建て替え・売却にかかる立ち退き料の考え方で詳しく解説しています。
アドバイス
私がオーナーの方によくお伝えするのは、「1社の見積もりだけで借入や売却を判断しないでほしい」ということです。修繕費の見積もりは業者によって数十万円単位で差が出ることが珍しくありませんし、売却の適正価格も1社の査定だけでは分かりません。複数の選択肢を横断して比較したうえで判断することが、後悔しない意思決定につながります。
とはいえ、「自分の場合は保有と売却のどちらが向いているのか」は、一般論だけでは判断しきれません。実際に同じような不安を抱えていた相談者と専門家のやり取りを見てみましょう。
修繕費のことでお悩みとのことですが、よろしければ今の状況を伺えますか。
正直に言うと、大規模修繕の見積もりが想定の倍近い金額になってしまい、このまま保有し続けていいのか自信が持てません。私のような小さい物件のオーナーでも、まだ持ち続けて大丈夫なのでしょうか。
それは不安になりますよね。ただ、保有を続けるべきかどうかは物件によって答えが変わりますので、いくつか教えてください。今の家賃収入と、修繕費を除いた年間の収支、それとローンの残債はどのくらいでしょうか。
年間の家賃収入は約480万円で、修繕費を除いた年間収支は120万円ほどのプラスです。ローンの残債は800万円くらい残っています。
その内容であれば、年間収支がプラスで残債も家賃収入の2年弱程度なので、借入で修繕費をまかなっても返済負担が収支を圧迫しにくいケースだと考えられます。私が同じような相談を受けたときは、こうした場合はまず借入での対応を軸に検討し、売却は「今後10年以内にさらに大規模な設備更新が控えている」など将来の支出が重なる場合に選択肢として上げるようにお伝えしています。
なるほど、収支と残債のバランスで判断できるのですね。ただ、今後の設備更新のことまでは正直考えられていませんでした。そのあたりも含めて相談できる窓口はあるのでしょうか。
はい。借入・売却・保有継続のどれか1つに絞る前に、今後10〜15年で想定される設備更新の時期まで含めて横断的に見立てを出してもらうことをお勧めします。今回のケースであれば、まず借入での対応を軸にしつつ、次回の大規模修繕(築30年前後)までに他の選択肢も含めて再検討する、という時間軸で考えると整理しやすいと思います。
今回だけでなく、その先の設備更新まで見据えて考えればいいと分かり、だいぶ気持ちが軽くなりました。まずは借入での対応を軸に、次の修繕のタイミングも見据えて相談してみます。
担当者
「このまま保有していいのか」というご相談は、実際に日々多く寄せられています。多くの方が今回の修繕費だけで判断しようとしがちですが、次回・次々回の修繕まで見据えて相談される方ほど、納得のいく決断ができている印象があります。
まず知りたいことを選んでください