アパート経営キャッシュフロー、借入条件次第で手残りが数百万円変わる理由

家賃収入の見込みが立っても、「本当に手元にお金が残るのか」「借入の条件によって結果がどれだけ変わるのか」が分からないまま話を進めるのは、不安を抱えたまま大きな決断を迫られているようなものです。特に相続した土地の活用は後戻りしにくい判断も多く、慎重になるのは当然のことです。
アパート経営を検討し始めると、多くの方が「表面利回り」や「家賃収入」に目を向ける一方、実際に手元に残る現金、つまりキャッシュフローは後回しになりがちです。しかし経営を続けられるかを最終的に左右するのは、この手残りの現金です。
この記事では、キャッシュフローの意味と計算方法を整理したうえで、入居率・家賃水準・借入年数を組み合わせた早見表で、条件次第で手残りがどれだけ変わるかを確認します。あわせて悪化を防ぐ具体的な対策と注意点も解説します。1社の担当者からは聞きにくい「複数の建築会社・借入条件を横断して比較したらどうなるか」という視点や、実際に経営を続けているオーナーの相談データも交えて解説するため、読み終える頃には、自分の条件に近いパターンでの手残りの見込みがイメージでき、複数プランを比較する必要性にも納得できているはずです。
キャッシュフローとは
手元に残る現金のこと
キャッシュフロー(Cash Flow)とは、家賃収入から経費とローン返済額を差し引いたあと、実際に手元に残る現金のことです。帳簿上の利益が黒字でも、手元の現金が不足すれば修繕費や税金の支払いに詰まり、経営が立ち行かなくなることがあります。
この違いが生まれる理由は2つです。1つ目は、実際には現金の支出を伴わない「減価償却費」が会計上の利益を押し下げるため。2つ目は、ローンの元金返済分は経費計上できない一方で現金は確実に出ていくためです。イエウール土地活用の相談でも「利益は出ているはずなのに通帳残高が増えない」という声は少なくありません。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
「相談を受ける際は、まず確定申告書の利益額ではなく、通帳の年間増減額を確認していただくようお伝えしています。この2つが大きく乖離している場合、減価償却費と元金返済のズレが原因であることがほとんどです。」
表面利回りとは性質が異なる
「表面利回り」は年間家賃収入を物件価格で割った数値で、経費や返済額を考慮していません。一方キャッシュフローは経費・税金・ローン返済まで踏まえた「実際に残るお金」です。利回りが高くても借入条件次第でマイナスになる場合があり、逆に利回りがやや低くても自己資金を厚くすれば安定するケースもあります。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
「私が相談を受ける際は、利回りの数字だけでなく、必ず借入年数と自己資金の割合を合わせて確認するようにしています。同じ利回りでもこの2つが違うだけで手残りは大きく変わるためです。」
アパート経営においてキャッシュフローを増やすことが大事な理由
手元に現金がないと余裕のある経営とはいえない
キャッシュフローが薄いままだと、突発的な修繕費や固定資産税の支払いのたびに資金繰りに追われます。直近2年間・累計約2万人の相談データを見ると、資金繰りに不安を抱える相談者の多くは、家賃収入は想定どおりでも返済額・経費の設定が手元資金を圧迫していました。返済期間や自己資金の設定はその会社自身の提案内容そのものであるため、1社の営業担当は指摘しにくく、複数社を横断して見比べる立場だからこそ中立的に指摘できます。
資金に余裕があると経営の選択肢とリスク対応力が広がる
手元資金に余裕があると、2棟目・3棟目への投資展開といった次の選択肢が広がるだけでなく、空室率の上昇や家賃の値下げ、災害による修繕といった不測の事態にも落ち着いて対応できます。逆に手元資金が乏しいままだと、これらのリスクが重なった瞬間に資金繰りが行き詰まる可能性が高くなります。1社の営業目線では「まず建てること」が優先されがちですが、ポータルとして中立的に見ると、建築前の資金計画の段階でこの余裕を織り込めるかどうかが、その後の経営の安定度を大きく左右します。では、実際に複数のリスクが重なっても資金繰りが崩れなかったオーナーは、経営開始の時点でどれくらいの現金を確保していたのでしょうか。イエウール土地活用の相談記録から、その実態を確認してみましょう。
複数のリスクが重なった時期でも資金繰りが崩れなかったオーナーの、経営開始時点の手元資金水準
※直近2年間のイエウール土地活用の相談記録のうち、家賃収入の減少・空室率の上昇・修繕費の増加など複数のリスクが重なった時期を経験しながらも資金繰りが崩れなかったと回答した相談者(集計対象約210件)を分析。経営開始時点の手元資金水準は、家賃収入の3〜6か月分42%、6か月分以上21%、1〜3か月分26%、1か月分未満・ほぼなし11%(相談者本人の申告に基づく)。
【調査結果】資金繰りが崩れなかったオーナーの6割超が、開始時点で家賃収入3か月分以上の現金を確保
複数のリスクが重なった時期でも資金繰りが崩れなかったオーナーのうち、経営開始時点で家賃収入の3〜6か月分程度の現金を確保していた方が42%と最も多く、6か月分以上の方も含めると6割超(63%)が3か月分以上の水準を確保していました。一方、1〜3か月分にとどまっていた方は26%、1か月分未満・ほぼ確保していなかった方も11%存在しており、この差が最終的にリスクを乗り越えられるかどうかを分けていると考えられます。
※直近2年間のイエウール土地活用の相談記録のうち、複数のリスクが重なった時期を経験しながらも資金繰りが崩れなかったと回答した相談者(集計対象約210件)を分析。内訳は家賃収入の3〜6か月分42%、6か月分以上21%、1〜3か月分26%、1か月分未満・ほぼなし11%(相談者本人の申告に基づく)。
担当者
3〜6か月分というと、20戸規模なら数百万円単位の現金になりますが、この水準を確保していた方とそうでない方では、なぜそこまで結果が変わるのでしょうか。石川さん、この差はどこから来るのでしょうか。
アドバイス
私が20年以上見てきた中で言えるのは、空室率の上昇や修繕費の増加といったリスクは、単発では大きな痛手にならないことが多いという点です。問題は、これらが同じ時期に重なったときです。手元資金が3か月分未満だと、1つ目のリスクへの対応で現金が底をつき、2つ目のリスクが発生した時点で追加の借入や高金利のつなぎ資金に頼るしかなくなります。逆に3〜6か月分の余裕があれば、重なった状態でも自己資金の範囲で乗り切れるため、無理な資金調達をせずに済みます。この「重なったときにどこまで自己資金で持ちこたえられるか」が、そのまま経営の安定度の差になっています。
担当者
具体的には、この3〜6か月分の資金は、いつ、どのように確保しておけばよいのでしょうか。
アドバイス
私が相談を受ける際は、建築費用の自己資金とは別枠で、家賃収入の3〜6か月分を「経営専用の予備口座」に確保できるかを契約前に必ず確認しています。目安として、20戸規模で家賃収入が月80万円前後であれば、3か月分でおよそ240万円、6か月分で480万円です。自己資金全体でこの水準まで積み増せない場合は、初年度の返済期間をあえて長めに設定して手元に残る現金を増やす、あるいは繰り上げ返済を1〜2年遅らせて先に予備資金を積むなど、順番を調整する形で確保していただくようにお伝えしています。
実際に、この考え方どおりに資金計画を立てていたオーナーの事例を紹介します。
この事例から読み取れるのは、リスクは単独で来るのではなく重なって発生することが多く、その重なりを乗り切れるかどうかは、建築時点で確保していた手元資金の水準にかかっているということです。
※本体験談は、土地活用を検討・実施された相談者への取材をもとに作成しています。個人が特定できないよう、氏名・詳細な住所等を加工・匿名化しています。掲載している金額は相談者から伺った内容に基づく概算であり、実際の条件により変動します。
まとめ:キャッシュフローを厚くする意味
- 資金に余裕があれば → 次の展開やリスク対応の選択肢が増える
- 資金がぎりぎりであれば → 想定外の支出のたびに経営が不安定になる
- いずれの場合も → 建築前の借入条件の設計段階で差がつく
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
「目安として、家賃収入の3〜6か月分の現金を建築時点で確保できるよう、自己資金や借入年数の設計を見直すことを提案しています。この水準を下回るプランには注意が必要です。」
アパート経営キャッシュフロー、条件が変わると手残りはどう変わるか
ここまでの内容で、キャッシュフローの意味と、それを厚くする重要性は理解できたかと思います。ここからは「自分の条件だとどうなるのか」を具体的な数値で確認していきましょう。以下は、20戸規模のアパートを想定し、入居率(85%/95%)・家賃水準(8万円/10万円/12万円)・借入年数(20年/30年)の組み合わせによる年間キャッシュフローの早見表です。借入額は8,000万円・金利2%の元利均等返済で試算しています。なお、ここで示す金額は20戸の場合の合計値です。所有している土地が小規模で戸数が少ない場合、家賃収入と借入額はおおむね戸数に比例して縮小しますが、管理費の基本料金や火災保険料の一部など、戸数によらず一定額かかる固定費もあるため、戸数の割合でそのまま単純に按分すると実際よりやや良い数字に見えてしまう点には注意してください。目安として、10戸未満の小規模プランでは、早見表の想定(経費率20%)ではなく25%程度で見積もり直すと、実態に近い数値になります。イエウール土地活用の相談記録でも、10戸未満のプランを検討した相談者の経費率は平均で23〜27%程度に収まるケースが多く見られます。
▼条件別・年間キャッシュフロー早見表(20戸想定・借入8,000万円・金利2%)
| 入居率 | 家賃水準 (1戸あたり) |
借入年数 | 年間キャッシュフロー |
|---|---|---|---|
| 85% | 8万円 | 20年 | 約821万円 |
| 85% | 8万円 | 30年 | 約951万円 |
| 85% | 10万円 | 20年 | 約1,147万円 |
| 85% | 10万円 | 30年 | 約1,277万円 |
| 85% | 12万円 | 20年 | 約1,473万円 |
| 85% | 12万円 | 30年 | 約1,603万円 |
| 95% | 8万円 | 20年 | 約974万円 |
| 95% | 8万円 | 30年 | 約1,104万円 |
| 95% | 10万円 | 20年 | 約1,339万円 |
| 95% | 10万円 | 30年 | 約1,469万円 |
| 95% | 12万円 | 20年 | 約1,704万円 |
| 95% | 12万円 | 30年 | 約1,834万円 |
※試算条件:20戸・延べ床面積相当・借入8,000万円・金利2%・元利均等返済、経費(管理費・修繕積立・固定資産税等)を実効収入の20%と想定して算出したシミュレーションです。実際の数値は物件条件・金融機関の融資条件により異なります。
なお、この早見表は20戸規模を前提にしていますが、戸数や借入額が異なる場合でも考え方は同じです。借入額・戸数が半分程度であれば、年間キャッシュフローもおおむね半分程度の水準になるとイメージしてください。重要なのは金額そのものよりも、「借入年数を延ばすと手残りが増える」「入居率・家賃水準が1段階変わると手残りが数十万円単位で動く」という条件間の差の構造です。ご自身の土地面積・戸数に近いプランは、次章の内部リンクからシミュレーターで確認できます。
この表を見ると、同じ家賃収入・同じ入居率であっても、借入年数を20年から30年に延ばすだけで、年間キャッシュフローが130万円前後変わることが分かります。さらに、入居率と家賃水準の条件が重なると、最も条件が厳しいパターン(入居率85%・家賃8万円・借入20年)と、最も条件が良いパターン(入居率95%・家賃12万円・借入30年)の差は年間で1,000万円を超えます。つまり、借入条件・建築プランの組み合わせ次第で、手残りは数百万円単位で変わるということです。
アパート経営キャッシュフロー早見表の見方
早見表の使い方はシンプルです。まず、検討している土地・建物で想定できる入居率を確認します。相場観がまだない場合は、周辺の空室率データや管理会社のヒアリングをもとに、控えめに85%あたりから見ておくと安全です。次に、想定している家賃水準の行を確認し、最後に借入年数の列で自分が希望する返済期間に近い数値を見ます。この3つが交わるセルが、自分の条件に最も近い年間キャッシュフローの目安になります。
\最適な土地活用プランって?/
土地からお探しの方は、まずはご希望のエリア、または現住所をご入力いただければ、最適なプランをご紹介します。
早見表で確認したとおり、借入年数が20年か30年かだけでも年間キャッシュフローは130万円前後変わります。つまり、最初に提示された借入年数・返済条件は、必ずしも「その土地・その計画で組める唯一の条件」ではなく、確認の仕方次第で変わりうる条件だということです。では、実際に複数の建築会社に借入年数・返済条件を確認した相談者のうち、どれくらいの割合が実際に条件を改善できているのでしょうか。イエウール土地活用の相談記録から確認してみましょう。
複数の建築会社に借入年数・返済条件を確認した相談者の、条件改善の有無
※直近2年間のイエウール土地活用の相談記録のうち、複数の建築会社に借入年数・返済条件の見直しを確認した相談者(集計対象約340件)を分析。条件が改善した44%、変化がなかった38%、確認の途中で提案自体を断念した12%、その他6%(相談者本人の申告に基づく)。
【調査結果】複数社に借入年数・返済条件を確認した相談者の4割超が、実際に条件改善に至っている
複数の建築会社に借入年数・返済条件の見直しを確認した相談者のうち、実際に当初の提示内容より有利な条件を引き出せた方は44%でした。一方、38%は確認しても条件に変化がなく、12%は確認を進める過程で当初の建築プラン自体を見送る判断に至っています。半数には届かないものの、複数社に確認した方の4割超が実際に条件を改善できているという事実は、1社の提示条件をそのまま受け入れるのではなく、比較・確認という行動そのものに意味があることを示しています。
※直近2年間のイエウール土地活用の相談記録のうち、複数の建築会社に借入年数・返済条件の見直しを確認した相談者(集計対象約340件)を分析。内訳は条件が改善した44%、変化がなかった38%、確認の途中で提案自体を断念した12%、その他6%(相談者本人の申告に基づく)。
担当者
半数近い方の条件が改善していますが、逆に4割近くは変わらず、1割強は提案自体を断念していますね。変わらなかった方・断念した方には何か共通点があるのでしょうか。石川さん、この差はどこから生まれるのでしょうか。
アドバイス
私が長年見てきた中では、条件が改善した方の多くが「他社ではこういう条件が出ている」という比較材料を持って交渉に臨んでいます。逆に変わらなかった方は、1社の提案を鵜呑みにして条件面の交渉自体をしていないケースが目立ちます。また、提案を断念した方の多くは、比較の過程で当初の想定より自己資金が不足していることに気づき、無理をせず時期を見直した方々です。これは悪い結果ではなく、比較したからこそ早い段階で気づけたと捉えるべきです。
担当者
具体的には、どのタイミングでどんな比較材料を持てばよいのでしょうか。
アドバイス
私が相談を受ける際は、初回の提案を受け取った段階ではまだ契約せず、同じ土地条件で最低2〜3社から借入年数・自己資金・想定家賃を含めたプランを取り寄せるようお伝えしています。この段階で借入年数が20年提案しかない会社に対して「30年での試算も見てみたい」と伝えるだけで、対応が変わるケースを何度も見てきました。
実際に、この進め方どおりに動いた相談者の事例を紹介します。
この事例から読み取れるのは、借入年数や返済条件は「提示されたものをそのまま受け入れるもの」ではなく、複数社を比較材料にすることで交渉の余地が生まれるということです。1社だけのシミュレーションで判断してしまうと、この120万円という差に気づく機会そのものを失うことになります。
※本体験談は、土地活用を検討・実施された相談者への取材をもとに作成しています。個人が特定できないよう、氏名・詳細な住所等を加工・匿名化しています。掲載している金額は相談者から伺った内容に基づく概算であり、実際の条件により変動します。
キャッシュフローの計算方法
早見表で自分の条件に近いパターンを確認できたところで、今度は自分の物件条件で計算する手順を見ていきましょう。手順は「入居率を設定する」「経費を算出する」「計算式に当てはめる」の3ステップです。
入居率を設定する
まず、想定する入居率を設定します。国土交通省の建築着工統計調査等をもとに、周辺エリアの空室率データを確認し、楽観的な数値ではなく、やや厳しめの水準で設定することが大切です。新築時は満室想定で計算しがちですが、経年とともに入居率が低下する前提を織り込んでおく必要があります。イエウール土地活用の相談記録を見ても、建築時に満室想定(入居率100%)で資金計画を立てていた相談者は、5年目以降に「想定より手残りが少ない」という相談に至る割合が、85%前後で試算していた相談者より明らかに高い傾向にあります。
経費を算出する
次に、管理費・修繕積立金・固定資産税・火災保険料などの経費を算出します。目安として、実効収入(家賃収入×入居率)の15〜25%程度が経費として想定されるケースが多く、早見表では中間値である20%を採用しています。この幅の中でも、建物の構造や築年数によって修繕費の割合は変わるため、複数プランを比較する際は経費の内訳まで確認することが重要です。なお、所得税・住民税は個人の所得状況によって税率が変わるため、この計算式には含めていません。目安として、給与収入と合算した課税所得が900万円を超える方は税率が33%以上になるため、早見表の年間キャッシュフローから概算で3割前後を税負担として差し引いて考えると、より実態に近い手残りをイメージできます。正確な金額は、税理士や建築会社の担当者に自分の課税所得を踏まえて確認することをおすすめします。
計算式に当てはめる
最後に、以下の計算式に当てはめます。
この式に、早見表で確認した自分に近い条件の数値を当てはめれば、概算のキャッシュフローを把握できます。より精緻に試算したい場合は、記事末尾で紹介するエクセルの計算テンプレートも活用してみてください。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
「実際に試算をお手伝いする際は、入居率を85%・75%の2パターンで計算していただき、厳しい方の数値でも資金繰りが成り立つかを確認するようにお伝えしています。」
キャッシュフローの悪化を防ぐ方策
ローンの返済期間をできるだけ伸ばす
早見表で確認したとおり、返済期間を延ばすと月々の返済額が下がり、年間キャッシュフローは改善します。ただし、返済期間を延ばすほど総返済額は増えます。目安として、法定耐用年数(木造22年・軽量鉄骨27〜34年)を大きく超える返済期間を選ぶと、建物の資産価値がなくなった後もローンが残る状態になるため、返済期間は法定耐用年数以内に収めることを基準にするとよいでしょう。
自己資金を多めに用意する
自己資金を増やせば借入額そのものが減り、返済額の負担が軽くなります。目安として、自己資金を総額の1割から2割に増やすと、8,000万円の借入であれば借入額が800万円減り、年間の返済額はおよそ20万円軽減されます。手元資金を厚く残しておきたい場合は返済期間の延長、初期の借入負担を抑えたい場合は自己資金の積み増しというように、重視する点に応じて選ぶとよいでしょう。
ローンの繰り上げ返済を行う
経営が軌道に乗り、手元資金に余裕が出てきたタイミングで繰り上げ返済を行うと、その後の返済負担を軽減できます。ただし、手元資金を減らしすぎると、修繕費などの急な支出に対応できなくなるため、繰り上げ返済に回す金額は慎重に見極める必要があります。相談記録を集計すると、繰り上げ返済を実施したオーナーのうち、実施後も家賃収入の3か月分以上の現金を手元に残す範囲で金額を決めていた方が大半を占めていました。
金利を交渉する
借入先によって提示される金利には差があり、0.1〜0.3%程度の違いでも、借入額が大きいアパートローンでは年間の返済額に数十万円単位の差が生じます。ただし、イエウール土地活用では金融機関の紹介・あっせんは行っていません。相談者の方から経過を伺う中で、複数の建築会社のプランを比較した方の多くが、各社が提携する金融機関の金利条件も自然に比較できていたという声をよく耳にします。
自己資金を厚くするか、返済期間を延ばすか、どちらを優先すべきか迷う方はとても多いですよ。
正直なところ、自己資金にはあまり余裕がありません。それでもキャッシュフローを安定させる方法はありますか。
自己資金が厚くできない場合は、返済期間をできるだけ延ばす方向で検討します。具体的にどのくらい借入額・年収の余裕があるか、伺ってもよろしいでしょうか。
借入は8,000万円程度、年収は900万円ほどです。自己資金は500万円くらいしか用意できていません。
その条件であれば、返済期間30年での試算を複数の建築会社に依頼し、あわせて修繕積立の設定額が実勢に見合っているかも確認することをおすすめします。自己資金が少ない分、経費の見積もりを甘くしないことが安定の鍵になります。
自己資金が少なくても、返済期間と経費の見積もりの精度で対応できる部分があるとわかり、安心しました。まずは複数社に30年プランでの試算を依頼してみます。
担当者
自己資金が少ないことを気にされる相談者の方は本当に多いです。ですが、返済期間や経費の設定次第で対応できる余地があるというご相談は、日々よくいただいています。
家賃収入をアップさせる
設備の更新やリフォームによって家賃を引き上げられれば、キャッシュフローは直接改善します。ただし、リフォーム費用をかけすぎると、その投資分を回収するまでの期間が延びます。目安として、投資額を年間の家賃増額分で割った回収年数が5年を超える場合は、その投資が本当に必要かを見直すサインと考えるとよいでしょう。
ここまで、返済期間の調整や自己資金の積み増しなど、キャッシュフロー悪化を防ぐための考え方を解説してきました。では、実際にすでにアパート経営をしているオーナーは、これらの中でどの対策を実際に行っているのでしょうか。イエウール土地活用の相談記録から確認してみましょう。
すでにアパート経営をしているオーナーが、キャッシュフロー悪化を防ぐために実際に行った対策
※直近2年間のイエウール土地活用の相談記録のうち、経営中にキャッシュフロー悪化への対策を実際に行ったと回答した相談者(集計対象約280件)を分析。行った対策の内訳は、返済期間の見直し・借り換え交渉35%、自己資金の積み増し・繰り上げ返済28%、経費の見直し(管理会社変更・修繕計画の見直し等)22%、家賃収入アップ(リフォーム・設備更新)15%(複数回答除く/相談者本人の申告に基づく)。
【調査結果】すでに経営中のオーナーの6割超が、まず「借入条件側」の対策から手を付けている
すでにアパート経営をしているオーナーが実際に行った対策のうち、最も多かったのは返済期間の見直し・借り換え交渉で35%でした。次いで自己資金の積み増し・繰り上げ返済が28%で、この2つを合わせると6割超(63%)が「借入条件そのものを見直す」対策から着手しています。経費の見直しは22%、家賃収入アップ(リフォーム・設備更新)は15%と、投資や実行に時間がかかる対策ほど後回しにされる傾向がうかがえます。
※直近2年間のイエウール土地活用の相談記録のうち、経営中にキャッシュフロー悪化への対策を実際に行ったと回答した相談者(集計対象約280件)を分析。内訳は返済期間の見直し・借り換え交渉35%、自己資金の積み増し・繰り上げ返済28%、経費の見直し22%、家賃収入アップ15%(複数回答除く/相談者本人の申告に基づく)。
担当者
実際に対策を行った方の中では、返済期間の見直し・借り換え交渉が最も多いのですね。自己資金を積み増すより先に、この対策から手を付ける方が多いのはなぜでしょうか。
アドバイス
自己資金の積み増しは、まとまった現金が新たに必要になりますが、返済期間の見直しや借り換え交渉は、新たな持ち出しなしで年間の返済額を下げられる可能性があるためです。特に、経営開始から数年経って返済実績が積み上がった後は、当初より有利な条件を提示されるケースが少なくありません。まとまった現金を用意できるかどうかに関わらずすぐに着手できる対策であることが、多くのオーナーがまずここから手を付ける理由だと考えています。
担当者
具体的には、どのタイミングで、どの金融機関に相談すればよいのでしょうか。
アドバイス
私が相談を受ける際は、経営開始から3〜5年ほど経ち、返済の実績が積み上がったタイミングを目安にお伝えしています。具体的には、まず現在借入をしている金融機関に条件変更の相談を持ちかけ、同時に他の金融機関にも同じ物件条件で借り換えの可能性を確認していただきます。返済実績がない新規融資よりも、実績が積み上がった後の借り換えの方が有利な条件を引き出しやすいケースが多いためです。なお、イエウール土地活用では金融機関の紹介・あっせんは行っていませんが、複数の建築会社のプランを比較する過程で、各社が提携する金融機関の条件も自然に見えてくるという声はよく聞きます。
実際に、この考え方どおりに借り換えを実行したオーナーの事例を紹介します。
この事例から読み取れるのは、返済期間や借入条件は契約時点で固定されたものではなく、経営実績を積んだ後に見直せる余地があるということです。まとまった自己資金を用意できない場合でも、まずこの対策から着手できることが、多くのオーナーに選ばれている理由です。
※本体験談は、土地活用を検討・実施された相談者への取材をもとに作成しています。個人が特定できないよう、氏名・詳細な住所等を加工・匿名化しています。掲載している金額は相談者から伺った内容に基づく概算であり、実際の条件により変動します。
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1 返済期間と自己資金のバランスを複数社で比較する1社の提示条件だけで決めず、最低2〜3社に同条件でプランを依頼し、返済期間・自己資金の組み合わせを比較する。
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2 経費の見積もりを厳しめに設定する修繕積立・管理費を実効収入の20%を下回らない水準で見積もり、想定外の支出に備える。
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3 手元資金の下限ラインを事前に決めておく繰り上げ返済やリフォーム投資を行う際も、家賃収入の3か月分程度は手元に残す下限ラインを決めておく。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
「リフォームで家賃を上げる提案をする際は、投資額を年間の家賃増額分で割った回収年数を必ず算出し、5年以内に回収できる範囲から優先するようお伝えしています。」
アパート経営におけるキャッシュフローの注意点
見通しが甘いと経営に失敗する
建築時点では満室想定・低い経費率で試算し、実際の経営に入ってから入居率の低下や修繕費の増加に直面するケースは少なくありません。特に、1社のシミュレーションだけを信じて楽観的な数値のまま契約すると、この見通しの甘さに気づく機会自体を逃してしまいます。直近2年間のイエウール土地活用の相談データでは、資金繰りの悪化を相談された方のうち、建築時の試算で経費率を15%未満に設定していたケースが半数近くを占めており、当初の想定と実際の支出のズレが要因になっていました。
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1 入居率85%以下でも成立するかを確認する満室想定だけでなく、厳しめの入居率でも資金繰りが成り立つかを事前に確認する。
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2 複数社の試算を突き合わせて前提条件のズレを見つける1社の試算のみを鵜呑みにせず、複数社の前提条件(入居率・経費率)の違いを比較する。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
「複数社の試算書を並べて見る際は、家賃単価より先に入居率と経費率の前提を比較するようお伝えしています。この2つの前提が甘い試算書ほど、見た目のキャッシュフローが良く見えてしまうためです。」
生活費にしてはいけない
アパート経営で得たキャッシュフローを生活費として使ってしまうと、修繕費や税金の支払いが必要になった際に資金が不足します。キャッシュフローはあくまで経営を維持するための予備資金と位置づけ、生活費とは別の口座で管理することが望ましいでしょう。イエウール土地活用の相談記録でも、複数の建築会社を比較した相談者ほど、契約前の段階で「生活費用口座」と「経営用口座」を分ける前提で資金計画を立てているケースが目立ちます。1社の提案だけで話を進めると、目先の融資可否や建築プランの話が中心になり、この口座管理という運用面の話まで踏み込んで確認する機会自体が少なくなる傾向があります。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
「相談を受ける際は、家賃収入用の口座と生活費用の口座を分け、毎月決まった額だけを生活費口座に移す仕組みを作るよう提案しています。」
アパート経営キャッシュフローに関するよくある質問
Q1. 表面利回りと実質利回りは何が違いますか?
表面利回りは、経費を引く前の「年間家賃収入÷投資金額」で算出した割合です。一方、実質利回りは管理費・税金・空室分などの経費を引いた後の、実際の手取り収益率を指します。同じ表面利回りの物件でも、借入条件や経費の設定次第で実質利回り・キャッシュフローは大きく変わるため、表面利回りだけで判断しないことが大切です。
Q2. 早見表は自分の戸数・借入額に当てはめても大丈夫ですか?
早見表は20戸・借入8,000万円を前提にした試算です。家賃収入・借入額はおおむね戸数に比例しますが、管理費の基本料金など戸数によらず一定額かかる経費もあるため、戸数が少ないプランほど経費率をやや高めに見ておくと安全です。正確な数値を知りたい場合は、ご自身の土地・戸数条件で複数の建築会社に試算を依頼することをおすすめします。
Q3. 1社の担当者から提示された条件で契約しても問題ありませんか?
契約自体に問題があるわけではありませんが、記事内で紹介したとおり、複数社を比較したうえで契約した相談者の多くが、当初提示された条件より有利な内容を引き出せています。借入年数・金利・自己資金の組み合わせは会社によって異なるため、1社の提案だけで判断する前に、同じ土地条件で他社の試算も確認しておくと、後悔のない選択につながります。
キャッシュフローの改善でアパート経営を安定させよう
アパート経営キャッシュフローは、家賃収入から経費とローン返済額を引いた「実際に手元に残る現金」です。同じ家賃収入・同じ入居率であっても、借入年数や自己資金の条件次第で年間の手残りは数十万円から、条件が重なれば数百万円単位で変わります。この差に気づくためには、1社のシミュレーションだけで判断せず、複数の建築会社のプランを横断して比較することが欠かせません。
自分の土地・自分の条件でキャッシュフローがどうなるのか、まずは概算を確認し、複数プランを比較することから始めてみましょう。最後に、この記事で確認したポイントを振り返っておきましょう。
- 早見表で自分の条件に近いセルを確認したか
入居率・家賃水準・借入年数の3条件が交わるセルが、自分の手残りの目安になります。 - 経費率・所得税を厳しめに見積もったか
経費は実効収入の20%前後、課税所得が高い方は税負担も概算で織り込みましょう。 - 1社だけで判断せず、複数社のプランを比較したか
借入年数・自己資金の条件は会社によって異なります。比較材料を持つことが、手残りを最大化する近道です。
\最適な土地活用プランって?/
土地からお探しの方は、まずはご希望のエリア、または現住所をご入力いただければ、最適なプランをご紹介します。
より細かく自分で計算したい方は、アパート経営の利回りの計算方法もあわせてご覧ください。