アパート老朽化で建て替えを即決してはいけない理由

神奈川県横浜市(郊外)在住の60代・男性(2026年6月)
「親から相続した築32年のアパートですが、最近空室が目立ち始めました。建て替えるべきなのか、それとも修繕で乗り切れるのか、正直まったく判断がつきません。」
アパート老朽化の判断基準は「築30年」だけでは分からない
「築30年を超えたら老朽化」という単純な線引きだけでは、自分のアパートが本当に対応の必要な段階にあるのかは分かりません。法定耐用年数・空室率・耐震基準という3つの軸を組み合わせて初めて、放置してよい状態なのか、対応を急ぐべき状態なのかが見えてきます。法定耐用年数から見る老朽化ライン
法定耐用年数とは、税務上その建物の価値がゼロになるまでの年数のことです。構造によって年数が大きく異なり、これを超えているかどうかが老朽化を判断する最初の目安になります。▼構造別・法定耐用年数早見表
| 構造 | 法定耐用年数 | 備考 |
|---|---|---|
| 木造 | 22年 | 最も早く耐用年数を迎える |
| 軽量鉄骨造 | 19〜27年 | 厚みにより変動 |
| 重量鉄骨造 | 34年 | 中間の耐用年数 |
| 鉄筋コンクリート(RC)造 | 47年 | 最も長い耐用年数 |
出典:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」をもとにイエウール編集部が作成
法定耐用年数を超えたからといって建物がすぐに使えなくなるわけではありませんが、金融機関の融資判断・保険料・売却時の資産評価に直接影響するため、超過の有無を必ず確認しておく必要があります。木造で築22年、軽量鉄骨で築19〜27年を超えているオーナーは、次の章で解説する修繕・建て替えの比較を早めに検討することをおすすめします。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
相談を受ける際は、まず法定耐用年数の超過年数を確認し、次に金融機関からの追加融資が組みやすいかどうかを一緒に整理しています。耐用年数を10年以上超過している場合は、建築費総額のおおむね2割程度を目安に自己資金を積み増すよう提案しており、その水準まで積み増すことで追加融資の審査を通しやすくなったケースを数多く見てきました。
空室率50%は危険信号
築年数だけでなく、実際の入居状況も老朽化の重要な判断材料です。空室率が一時的に上がることは珍しくありませんが、慢性的に50%を超えている場合は、建物の魅力そのものが低下している可能性が高いといえます。老朽化診断で「要注意」と判定されたオーナーの該当基準の内訳
※直近2年間にイエウール土地活用へ寄せられた老朽化関連の相談のうち、老朽化診断で「要注意」以上と判定された約320件を分析(相談記録分析)。該当した主要因の内訳は、空室率50%超42%・旧耐震基準該当25%・法定耐用年数超過25%・その他(税務相談等)8%。
【調査結果】老朽化診断で「要注意」と判定された理由の内訳
要注意以上と判定された相談者のうち、42%が空室率50%超を主な要因として挙げていました。単独の築年数よりも、空室率の悪化を最初のサインとして相談に至るケースが最も多いという結果です。
※対象:老朽化診断で「要注意」以上と判定された相談者、集計対象約320件(直近2年間・相談記録分析)。該当した主要因の内訳は、空室率50%超42%、旧耐震基準該当25%、法定耐用年数超過25%、その他(税務相談等)8%(単一回答)。
担当者
築年数よりも空室率の悪化を先に気にされる方が多いのですが、この差はどこから来るのでしょうか。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
私が見てきた案件では、空室率が先に悪化し、築年数の超過に後から気づくケースがほとんどでした。設備の陳腐化が家賃相場との乖離を生み、退去が連鎖することで空室率だけが急激に悪化するためです。
担当者
具体的には、どのタイミングで見極めればよいのでしょうか。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
私が相談を受ける際は、空室率が3ヶ月連続で40%を超えた時点を一つの節目としてお伝えしています。この段階で家賃相場との乖離を確認し、5%以内の乖離なら軽微な修繕、10%以上なら建て替えも含めた比較検討に進むよう案内しています。
この事例から読み取れるのは、空室率が節目を超えても、家賃相場との乖離が小さければ建て替えを急ぐ必要はないという判断基準です。
耐震基準3区分で分かる建物のリスク
建物がいつ建築確認を受けたかによって、耐震基準は大きく3つに分かれます。この区分を知らないまま放置すると、耐震性のリスクを見誤ることになります。▼耐震基準3区分
| 区分 | 建築確認の時期 | リスクの目安 |
|---|---|---|
| 旧耐震基準 | 1981年5月31日以前 | 震度6強クラスで倒壊のおそれ |
| 新耐震基準 | 1981年6月〜2000年5月 | 大地震で損傷の可能性あり |
| 2000年基準 | 2000年6月以降 | 現行の耐震性能を満たす |
出典:国土交通省「耐震基準の変遷」をもとにイエウール編集部が作成
旧耐震基準に該当するアパートは、入居者募集の際に告知義務が生じるケースがあるだけでなく、金融機関の担保評価も下がりやすくなります。自分のアパートの建築確認日が分からない場合は、登記簿謄本や検査済証で確認できます。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
建築確認日が分からないという相談者の方には、まず検査済証の有無を確認していただいています。見当たらない場合は自治体の建築計画概要書で調べる方法をお伝えし、それだけで判断の精度が大きく変わったケースを何度も見てきました。
3つの基準を組み合わせた自己診断表
法定耐用年数・空室率・耐震基準の3つを組み合わせると、自分のアパートが「様子見」「要検討」「対応急務」のどの段階にあるかを一次判定できます。▼老朽化自己診断表
| 該当項目数 | 判定 | 目安の対応 |
|---|---|---|
| 0〜1項目該当 | 様子見 | 定期的な点検・修繕計画の確認で十分 |
| 2項目該当 | 要検討 | 修繕vs建て替えの費用比較を始める段階 |
| 3項目すべて該当 | 対応急務 | 早期に専門家へ相談すべき段階 |
まず知りたいことを選んでください
アパート老朽化を放置すると起こる3つのリスク
先ほどの診断で「要検討」以上に該当した場合、放置すると具体的にどのようなリスクが起こるのかを整理します。空室が慢性化し家賃収入が目減りする
老朽化を放置すると、設備の陳腐化により家賃を下げても入居が決まりにくくなり、収支が徐々に悪化していきます。1室の空室が半年続くだけでも、想定家賃収入に対する影響は小さくありません。老朽化を放置した後に実際に直面した問題の内訳
※直近2年間にイエウール土地活用へ寄せられた老朽化放置に関する相談約260件を分析(相談記録分析)。内訳は家賃下落による収支悪化33%、想定外の大規模修繕費用の発生25%、担保評価の下落・借り換え不可25%、耐震診断での危険判定など その他17%。
【調査結果】老朽化放置後に実際に直面した問題の内訳
最も多かったのは家賃下落による収支悪化で33%でした。放置している間に周辺の新築・築浅物件との競争力が下がり、家賃を下げざるを得なくなるケースが目立ちます。
※対象:老朽化を放置した後に何らかの問題に直面したと申告した相談者、集計対象約260件(直近2年間・相談記録分析)。内訳は家賃下落による収支悪化33%、想定外の大規模修繕費用の発生25%、担保評価の下落・借り換え不可25%、耐震診断での危険判定などその他17%(複数回答除く)。
担当者
家賃下落による収支悪化が最も多い理由に挙がるのは、なぜなのでしょうか。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
老朽化した物件は、周辺の新築・築浅物件と設備面で見劣りするようになります。入居希望者は同じ家賃なら新しい物件を選ぶため、老朽化物件は家賃を下げない限り入居者を確保できなくなり、これが収支悪化の入り口になっているケースをよく見ます。
担当者
具体的には、どの段階まで下げたら危険信号なのでしょうか。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
家賃を周辺相場から5%下げても空室が埋まらない状態が3ヶ月続くようであれば、値下げでは解決しないサインだと考えています。この段階まで来たら、私は修繕・建て替えの比較検討に進むようお伝えしています。
この事例から読み取れるのは、家賃を下げても反応が鈍い段階まで来たら、値下げの継続ではなく修繕へ舵を切るべきという判断基準です。
資産価値が下がり担保評価・売却額が下落する
老朽化が進むと、金融機関が算定する担保評価が下がり、追加融資や借り換えの選択肢が狭くなります。将来的に売却を検討する場合にも、査定額に直接影響します。なお、相続で取得したアパートの場合は評価額の変動が相続税にも影響するため、老朽化アパートの相続税対策を見るもあわせて確認しておくと安心です。-
1 定期的に第三者評価を取得する複数社に査定を依頼し、担保評価の下落幅を早期に把握します。
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2 大規模修繕のタイミングを前倒しで検討する評価下落が進む前に外壁・屋根等の修繕計画を見直します。
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3 複数の金融機関の評価基準を比較する評価基準は金融機関ごとに異なるため、1行の回答だけで判断しないことが大切です。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
私はまず既存の借入残高と担保評価の比率を確認するようにしています。評価が想定より下がっている場合は、自己資金を積み増す前提での再計画をご提案しています。
耐震性の劣化が入居者離れと保険料の上昇を招く
旧耐震基準に該当する建物は、入居希望者から敬遠されやすいだけでなく、地震保険料が割高になる傾向があります。耐震診断で危険と判定された場合、入居者への告知義務が生じることもあります。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
旧耐震基準の建物を所有されている方には、自治体の耐震診断補助制度を使って現状を数値化することをお勧めしています。診断で算出されるIs値(構造耐震指標)が0.6以上であれば耐震補強で対応できるケースがほとんどですが、0.3未満まで下がっている場合は補強費用が建て替え費用に近づいてしまうため、その場合は建て替えを軸に検討を進めるようお伝えしています。
アパート老朽化、修繕で十分なケースを建て替えで決めてしまう前に
建て替え商材を扱う会社に相談すると、どうしても建て替え前提の提案になりがちです。ですが、複数社のデータを横断して見ると、修繕だけで十分に収益を回復できるケースが少なくありません。複数社データで見る修繕費用の相場
大規模修繕(外壁・屋根・水回り・共用部の一新など)にかかる費用は、戸数や劣化度合いによって幅がありますが、複数社の見積り実績を横断すると、以下のような相場帯が見えてきます。▼大規模修繕の費用相場(戸数別)
| 戸数 | 大規模修繕の費用目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 6戸程度 | 450万〜800万円 | 外壁・屋根中心の場合 |
| 10戸程度 | 700万〜1,300万円 | 水回り含む全面修繕の場合 |
| 20戸程度 | 1,400万〜2,600万円 | 共用部の一新を含む場合 |
※直近2年間にイエウール土地活用へ寄せられた大規模修繕の見積り実績約1.4万件から集計。外れ値(上位・下位5%)は除外。
同じ戸数・同じ劣化度合いでも、依頼する会社によって見積り額に大きな差が出ることが分かっています。実際に、埼玉県さいたま市・10戸の木造アパートで3社に見積りを依頼したところ、最安620万円・最高1,180万円という約560万円の差が生じたケースがありました。1社だけで判断せず、必ず複数社を比較することが欠かせません。なお、キッチン・浴室・トイレ・外壁塗装など費目別の詳細な単価まで知りたい方は、アパートリフォームの費用相場を項目別に見るもあわせてご確認ください。建て替え費用の相場と資金計画
建て替えの場合は解体費用も含めて資金計画を立てる必要があります。建築費・解体費とも、実際にはエリアによって坪単価が大きく異なります。首都圏は人件費・資材の運搬コストが高く単価が上がりやすい一方、郊外・地方都市は現場までの資材輸送や産業廃棄物の処分場までの距離によって解体費が変動するため、都市部の相場をそのまま自分のエリアに当てはめないよう注意してください。▼エリア別・構造別 建て替え費用相場(延床100㎡あたり目安)
| エリア区分 | 構造 | 建築費目安 | 解体費目安 |
|---|---|---|---|
| 首都圏(東京都特別区・政令指定都市中心部) | 木造 | 2,000万〜2,600万円 | 150万〜250万円 |
| 軽量鉄骨造 | 2,600万〜3,400万円 | 180万〜280万円 | |
| 重量鉄骨造 | 3,200万〜4,200万円 | 200万〜320万円 | |
| 郊外・地方都市 | 木造 | 1,500万〜2,000万円 | 120万〜200万円 |
| 軽量鉄骨造 | 2,000万〜2,600万円 | 140万〜220万円 | |
| 重量鉄骨造 | 2,400万〜3,200万円 | 160万〜260万円 |
※坪単価は首都圏(木造93万円・軽量鉄骨130万円・重量鉄骨148万円)、郊外・地方都市(木造70万円・軽量鉄骨98万円・重量鉄骨112万円)を基準に、延べ床面積×1.3倍(総額)で試算。建ぺい率60%・容積率200%の条件。解体費用の内訳・坪単価の詳細については

アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
建て替えのご相談では、建築費だけでなく解体費・仮住まい費・立ち退き費用まで含めた総額で資金計画を立てるようお伝えしています。建築費のみで判断すると、後から資金不足に陥るケースを何度も見てきました。
築年数帯・空室率帯別 修繕vs建て替え費用比較表
修繕と建て替えのどちらが得かは、築年数と空室率の組み合わせによって変わります。以下は複数社の見積り実績をもとに整理した比較表です。▼築年数帯・空室率帯別 修繕vs建て替え費用比較
| 築年数帯 | 空室率帯 | 修繕費用目安 | 建て替え費用目安 | 有利な選択 |
|---|---|---|---|---|
| 築25〜30年 | 30%未満 | 700万〜1,200万円 | 2,500万〜3,200万円 | 修繕優位 |
| 築30〜40年 | 30〜50% | 1,000万〜1,600万円 | 2,600万〜3,400万円 | 要比較 |
| 築40年以上 | 50%以上 | 1,300万〜2,000万円 | 2,700万〜3,600万円 | 建て替え優位 |
※直近2年間の複数社見積り実績(ハウスメーカー・リフォーム会社・工務店計約1.4万件)をもとにイエウール編集部が作成。有利な選択は費用回収年数を基準に判定。
上記の3区分に厳密に当てはまらない場合も、築年数・空室率が近い区分の数値を目安にできます。たとえば築33年・空室率35%であれば「築30〜40年・空室率30〜50%」の区分を参考にしてください。築40年以上・空室率50%以上のゾーンでも、建物の基礎・躯体に大きな問題がなければ、修繕による収益改善が可能なケースがあります。建て替え商材を扱う1社だけに相談すると、この「修繕で十分なケース」を提示されにくい構造があるため、必ず中立的な立場での比較を挟むことをおすすめします。なお、比較の結果として建て替えを選ぶと判断した場合の具体的な手続きの流れは建て替えの手続きの流れを見るで確認できます。また、修繕・建て替えのどちらも大きな負担に感じる場合は、アパートの売却を検討する場合はこちらや、老朽化を機に相談したオーナーが最終的に選んだ対応の内訳
※直近2年間に老朽化を機に相談され、対応策が確定した約1,620件を分析(相談記録分析)。内訳は修繕(大規模リフォーム)で継続42%、建て替え33%、売却25%。
【調査結果】老朽化を機に相談したオーナーが最終的に選んだ対応の内訳
最終的に建て替えを選んだのは33%にとどまり、42%は修繕による継続を選んでいました。「老朽化=建て替え」という思い込みとは異なる結果です。
※対象:老朽化を機に相談され、対応策が確定した相談者、集計対象約1,620件(直近2年間・相談記録分析)。内訳は修繕(大規模リフォーム)で継続42%、建て替え33%、売却25%(単一回答)。
担当者
建て替えより修繕を選ぶ方が多いのは意外に感じられるかもしれませんが、この差はなぜ生まれるのでしょうか。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
私が見てきた案件の多くは、建物の基礎・躯体に大きな損傷がなく、設備の陳腐化だけが問題でした。建て替えは費用回収に15年以上かかることも多く、修繕で収支が改善するなら投資回収の速さで修繕が有利になります。
担当者
では、修繕で十分かどうかは、具体的にどう見極めればよいのでしょうか。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
修繕費用が想定家賃収入の8年分を超えるかどうかを、私は一つの分かれ目にしています。それを下回るなら修繕を優先し、上回るなら建て替えの資金計画に進むという基準でご提案しています。
築年数や空室率だけでなく、実際にはローンの残債状況も判断に大きく影響します。まずは現状を伺ってもよろしいでしょうか。
正直に言うと、うちのように築35年で空室率45%くらいだと、もう修繕では厳しいのでしょうか。周りは建て替えを選ぶ人が多い気がして不安です。
築35年・空室率45%は先ほどの表でいう「要比較」ゾーンにあたるため、決して手遅れではありません。具体的な数字を伺えれば試算できますが、現在のローン残債と、建物の基礎・躯体に傾き等の症状がないかを教えていただけますか。
残債はあと400万円ほどで、傾きなどの症状は特に感じていません。10戸のうち4戸空室で、家賃は周辺相場より1割ほど下げても決まりにくい状態です。
残債が少なく躯体に問題がないなら、10戸規模で概算1,200万円前後の大規模修繕を行い、水回り・外観を一新するだけでも入居付けは十分改善が見込めます。残債400万円と合わせても、建て替え費用の半分以下で収まる計算です。
建て替えしかないと思い込んでいましたが、うちの状態なら修繕という選択肢もあるとわかり、だいぶ気持ちが楽になりました。まずは複数社の見積りを比較してみます。
担当者
うちはもう建て替えしかないと思い込んでいたご相談者が、比較の結果を知って安心されるケースは、日々の相談の中でも本当によくあります。
まず知りたいことを選んでください
アパート老朽化で建て替えるなら、立ち退き料を甘く見てはいけない
建て替えを選んだ場合、見落とされがちなのが入居者への立ち退き料です。立ち退き料の相場を調べると「戸数×家賃6ヶ月分」という計算式がよく紹介されています。これは、立ち退きにより転居する入居者が新しい住まいを見つけるまでの家賃負担を、目安として家賃6ヶ月分で補償するという考え方に基づく簡易な概算式です。よくこの計算をしておけば大丈夫と書かれていることが多いのですが、実際にはこの計算式で見積もれるのは家賃差額の補償部分だけで、引っ越し費用や交渉が長引いた場合の追加費用までは含まれていません。この単純計算だけを鵜呑みにして資金計画を立てると、実際の総額との差に驚くことになりかねません。立ち退き料の内訳
立ち退き料は家賃相当額だけでなく、引っ越し費用・営業補償・移転先の斡旋にかかる費用など、複数の項目の積み上げで構成されます。▼立ち退き料の内訳(1戸あたり目安)
| 項目 | 金額目安 | 内容 |
|---|---|---|
| 引っ越し費用 | 10万〜20万円 | 運送費・敷金礼金相当額 |
| 家賃差額の補償 | 20万〜60万円 | 移転先の家賃が高い場合の差額数ヶ月分 |
| 営業補償(店舗の場合) | 50万〜150万円 | 休業期間の逸失利益補償 |
| 移転先斡旋・慰謝料的性格の費用 | 10万〜30万円 | 交渉の状況により変動 |
| 合計目安(居住用1戸) | 40万〜110万円 | 店舗が入る場合はさらに上振れ |
複数社データに基づく相場レンジ
建て替えを選んだオーナーが直面した立ち退き交渉の結果内訳
※建て替えを確定させたオーナーのうち、立ち退きを伴うケースは相談記録のみでは十分なサンプル数を確保できないため、調査会社を通じたインターネットアンケートで補完(回答者約150人・直近1年)。内訳は当初想定の1.5倍以上に増加50%、想定通り29%、想定より安く済んだ21%。
【調査結果】立ち退き料が当初想定からどれだけ変動したか
半数にあたる50%が当初想定の1.5倍以上に増加したと回答しています。「戸数×家賃6ヶ月分」という単純計算のまま資金計画を立てると、想定外の資金不足に直面する可能性が高いことが分かります。
※対象:建て替えを確定させ、立ち退きを経験したオーナー。該当者が少なく相談記録のみでは十分なサンプル数を確保できないため、調査会社を通じたインターネットアンケートで補完(回答者約150人・直近1年)。内訳は当初想定の1.5倍以上に増加50%、想定通り29%、想定より安く済んだ21%。
担当者
半数のケースで想定より膨らんでしまうのは、どのような理由からなのでしょうか。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
私の経験では、高齢の入居者や長期入居者ほど転居先探しに時間がかかり、その分の家賃補償が積み増しになる傾向があります。想定より膨らむ主な原因は、交渉期間の長期化そのものです。
担当者
具体的には、どのように資金計画に織り込めばよいのでしょうか。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
私は相談を受ける際、当初見積もりの1.5倍を上限の想定額として資金計画に組み込むようお伝えしています。あらかじめ余裕を持たせておくことで、交渉が長引いても着工スケジュールに影響が出にくくなります。
この事例から読み取れるのは、立ち退き料は当初見積もりどおりに収まらないことを前提に、あらかじめ上振れ分を資金計画へ織り込んでおくことの重要性です。
交渉で失敗しないためのポイント
立ち退き交渉は感情的な対立が生じやすい場面です。詳しい進め方や法的な正当事由の考え方は
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1 早期に交渉を開始する着工予定日から逆算し、半年以上前から交渉に着手します。
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2 資金計画に上振れ幅を織り込む当初見積もりの1.5倍程度を上限の想定額として確保します。
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3 専門家を交えて交渉を進める当事者同士だけで進めず、第三者を挟むことで感情的な対立を避けやすくなります。
アドバイス
石川 龍明(アパートメントクリエーター・賃貸経営リスクコンサルタント)
交渉に入る前に、入居者一人ひとりの居住年数と生活状況を整理してから方針を立てるようお伝えしています。一律の金額提示ではなく、個別事情に応じた提案が交渉の長期化を防ぎます。
まず知りたいことを選んでください
まとめ|老朽化への対応は「診断→比較→相談」の順で進める
築年数だけで老朽化を判断せず、空室率・耐震基準まで含めた自己診断を行うこと。修繕と建て替えを複数社データで比較し、思い込みで建て替えを即決しないこと。立ち退き料を含めた総額で資金計画を立てること。この3点を押さえるだけで、後悔のない判断に大きく近づきます。 イエウール土地活用では、特定の1社の営業目線ではなく、複数のハウスメーカー・リフォーム会社・工務店と接点を持ち、横断してプラン比較できる中立的な立場から、修繕・建て替え・売却のどれが自分にとって合理的かを一緒に整理できます。
まず知りたいことを選んでください
よくある質問(FAQ)
Q0. アパートは築何年から老朽化とみなされますか。
構造によって異なります。法定耐用年数は木造22年・軽量鉄骨19〜27年・重量鉄骨34年・RC造47年が目安です。ただし築年数だけでは判断できず、空室率50%超・旧耐震基準(1981年5月以前)への該当も合わせて確認することをおすすめします。
Q1. アパート老朽化の判断基準は、どれか1つだけ該当していれば対応が必要ですか。
1項目のみの該当であれば、多くの場合はすぐの対応は不要で、様子見が目安になります。ただし2項目以上に該当する場合は、修繕と建て替えの費用比較を始めることをおすすめします。
Q2. 老朽化アパートに入居者がいる状態でも、建て替えの検討は進められますか。
入居者がいる段階でも資金計画・プラン検討自体は進められます。ただし着工には立ち退きが完了している必要があるため、早めに交渉のスケジュールを組み込んでおくことが大切です。
Q3. 判断基準に複数該当しても、修繕だけで対応を先延ばしにすることは可能ですか。
建物の基礎・躯体に大きな損傷がなければ、修繕で収益を改善しながら先延ばしにできるケースもあります。ただし耐震診断で危険と判定された場合は、先延ばしが入居者の安全リスクに直結するため注意が必要です。
Q4. 老朽化アパートは複数社に相談すると、どの程度費用感にばらつきが出ますか。
本文で紹介したとおり、同条件でも1社目と2社目で500万円以上の差が出るケースがあります。特に大規模修繕は工法・仕様の選び方で幅が生まれやすいため、必ず複数社を比較することをおすすめします。
Q5. 老朽化を放置していても、入居者がいれば当面は問題ありませんか。
現時点で満室であっても、担保評価の下落や耐震性の劣化は進んでいる可能性があります。次の更新のタイミングまでに、一度は老朽化診断を受けておくことをおすすめします。
