アパート建築費は高騰してる?今後の予想と建築費を抑える方法も紹介

ここ数年、電気・ガスをはじめ身の回りの多くのものが値上がりしていますが、アパート建築費もここ数年で大きく高騰しています。「今建てるのは損なのでは」と不安になるのは当然のことです。
本記事では、公的データをもとにアパート建築費高騰の実態と原因を整理したうえで、今後の見通し、そして費用を抑えるための具体的な方法まで解説します。読み終える頃には、今の土地でアパートを建てるべきタイミングかどうかを判断する材料が揃っているはずです。
【シミュレーター設置】私のアパート建築費は?
アパート建築費についての基礎知識を知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

アパート建築費は、この10年でどれだけ上がった?
国土交通省の「建設工事費デフレーター」(2015年度=100)を見ると、建築費関連の指数は2021年ごろから大幅に上昇し、高止まりが続いています。
▼建設工事費デフレーターの推移(2015年度=100)
| 時期 | 建設総合 | 木造住宅 | 鉄筋造(RC) |
|---|---|---|---|
| 2015年度(基準) | 100.0 | 100.0 | 100.0 |
| 2021年度頃 | 約110〜115 | 約108〜113 | 約110〜115 |
| 2025年12月 | 133.2 | 130.9 | 134.9 |
出典:国土交通省「建設工事費デフレーター」(2015年度基準・2026年3月e-Stat更新分)をもとにイエウール編集部が作成。2021年度頃の値は同統計の年度推移から近似したものです。
民間の建築費指数(一般財団法人建設物価調査会調べ)では、木造住宅の指数がRC造を上回る逆転現象も起きており、2015年時点で坪70万円だった木造アパートが、現在は坪100万円前後の水準まで上がっている試算になります(坪単価70万円×指数上昇率約1.4〜1.5倍で試算)。
※上記は指数をもとにした簡易試算(前提条件:2015年坪単価70万円・指数上昇率約1.4〜1.5倍)です。実際の坪単価は構造・地域・仕様グレードにより異なるため、目安としてご参照ください。
この建築費指数、実際の見積もりにそのまま使っていい?
建築費指数の試算は「相場感をつかむ出発点」として使うものです。個別の見積もり金額の正誤判定には使えません。前面道路の幅員や地盤改良工事の有無によって、同じ坪数・構造でも数百万円単位の差が出るためです。
- 相場感の把握に使う
今のエリア・構造の坪単価がどの水準にあるかを大まかにつかむために使う - 見積もりの妥当性チェックに使う
提示された坪単価が相場から極端にかけ離れていないか確認する材料にする - タイミング判断の材料にする
指数が下落傾向にあるかどうかで、着工時期を急ぐべきか待つべきかの判断材料にする
※宅地建物取引士・早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了・年間30回以上の講演実績
「建築費指数は『今のコスト水準』を知るための道具であり、契約すべきかどうかを決める道具ではありません。
指数だけを見て「高いから待とう」と判断すると、待っている間に金利や家賃相場が変わり、かえって不利になるケースもあります。
指数と合わせて、自分の土地の収支シミュレーションまで確認してから判断することをおすすめします。」
アパート建築費が高騰した5つの理由
なぜここまでアパート建築費が上がり続けているのでしょうか。主な要因を5つに整理しました。
建築資材の高騰
アパート建築費高騰の大きな要因は建築資材の高騰です。2021年の「ウッドショック」を境に木材価格が世界的に上昇し、その後も高止まりが続いています。
ウッドショックとは、アメリカでの住宅需要急増や中国での木材需要拡大をきっかけに、2021年前後に世界的な木材価格上昇が起きた現象です。
この影響で木造アパートの建築費は一時的に急騰し、現在も上昇分の多くが価格に残ったままとなっています。
職人不足による人件費の上昇
建築費が上がり続けているもう一つの要因は、職人の慢性的な人材不足です。国土交通省が2026年2月に公表した公共工事設計労務単価は全国全職種の加重平均で25,834円と、14年連続で上昇しています。
出典:国土交通省「公共工事設計労務単価」(2026年3月適用分・2026年2月17日公表)をもとにイエウール編集部が作成。前年度比は単純平均+4.5%・加重平均+3.9%。
電気代・燃料費の上昇
電気代・燃料費の高騰も建築費が高くなる要因の一つです。資材の運搬にはガソリン・軽油代がかかり、加工には電気を使うため、これらのコストが上がれば建築費にも転嫁されます。
ウクライナ情勢による資源高
ウクライナ情勢を背景としたロシアとの関係悪化も、建築費高騰の要因の一つです。ロシアは2022年3月に日本を含む「非友好国」向けの木材輸出を一部禁止しており、世界各国が代替調達に動いたことで資源価格全体が押し上げられました。その後の中東情勢の緊張も原油価格を通じて資材輸送コストに影響を与えています。
円安による輸入コストの増加
円安も建築費の値上がりに拍車をかけています。円安は輸出には有利ですが輸入には不利に働き、建築資材の多くを輸入に頼る日本にとって影響は避けられません。2026年に入っても、日米の金利差を背景とした構造的な円安傾向が続いています。
「円安は輸出企業だけの話」と思われがちですが、実態は異なります。建築資材の多くを輸入に頼るアパート建築でも、円安がそのままコスト増につながっています。今後の着工計画では、為替動向も含めて建築会社に確認しておくことが重要です。
※宅地建物取引士・早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了・年間30回以上の講演実績
「建築費高騰の要因は資材・人件費・為替と複数重なっており、どれか一つが解消しても劇的には下がりません。
特に人件費は職人不足という構造的な問題のため、短期的な改善は見込みにくい要因です。
「いつか下がるはず」と待つより、今の水準でどこまで収支が成立するかを試算するほうが現実的です。」

アパート建築費は今後どうなる?見通しを解説
現在高騰しているアパート建築費は、今後安くなるのでしょうか。高騰要因ごとに今後の見通しを整理します。
木造の建築費上昇は落ち着く見込み
アパートの建築費は構造によって変動要因が異なります。木造アパートは木材価格の影響を強く受けるため、木材相場の動向が今後の鍵になります。
アメリカの高金利政策による住宅着工戸数の減少などを背景に、木材需要は以前ほどの急拡大局面ではなくなっています。建築費が高騰した要因は木材価格だけではないため劇的な値下がりは考えにくいものの、木造アパートの建築費上昇ペースは今後緩やかになると見込まれます。

円安の解消で高騰が止まる可能性
円安が解消されれば輸入コストが下がり、建築資材も安くなると考えられます。日本銀行は2025年12月に政策金利を0.75%に、2026年6月には1.00%まで引き上げましたが、市場では「利上げをしても円安が止まらない」という状態が続いています。
「利上げすれば円高に戻る」と思われがちですが、日米の金利差や日本の財政不安を背景に、専門家の間では2026年も急激な円高は見込みにくいという見方が優勢です。円安の解消を前提に着工時期を計画するのは避けたほうが安全です。
建築費の劇的な値下がりを待つよりも、今の水準で収支が成立するかどうかを先に確認するほうが現実的な判断につながります。金利・家賃相場も同時に変動するため、建築費だけを見て判断を先送りするとかえって不利になることもあります。
- 今の坪単価で収支が成立するか
現在の建築費水準のまま試算しても利回りが確保できるかを確認する - 金利上昇の影響を織り込んでいるか
今後さらに金利が上がった場合の返済額まで試算しておく - 値下がりを前提にしていないか
建築費・為替の値下がりを待つ計画は、想定より長期化するリスクがある
※宅地建物取引士・早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了・年間30回以上の講演実績
「為替や金利は専門家でも先行きを正確には読めません。
『下がってから建てよう』という判断は、待っている間に金利や資材費がさらに動くリスクを抱えることになります。
複数社の見積もりを取り、今の条件でシミュレーションしたうえで判断することをおすすめします。」
アパート建築費を抑える4つの方法
建築費が高騰する中でも、工夫次第で費用を抑えることは可能です。ここでは代表的な4つの方法を紹介します。
複数社から相見積もりを取る
建築会社によって坪単価は大きく異なります。1社だけに依頼するのではなく、複数社に見積もりを依頼して比較することが費用を抑える第一歩です。2社の見積もりが近い金額であれば、一方にもう一方の見積書を見せて交渉する方法もあります。

設計施工一括方式を選ぶ
同じ会社に設計と施工をまとめて発注する「設計施工一括方式」も費用を抑える有効な方法です。
▼設計方式による設計料の違い
| 方式 | 設計料の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 設計施工一括方式 | 工事費の1〜3%程度 | ハウスメーカーなど社内に一級建築士が在籍する会社に多い |
| 設計施工分離方式 | 工事費の5〜8%程度 | 設計と施工を別会社に発注。小規模な工務店に多い |
※本表は公的な統計データではなく、業界一般の実務慣行として整理した目安です。実際の設計料は会社・規模により異なります。

設備・仕上げのグレードを見直す
一般的なアパートは躯体4割・仕上げ4割・設備2割程度で構成されます。躯体は建物の骨組みにあたるため費用を抑えるのは難しい一方、外壁材のグレードを見直したり、有名メーカーにこだわらず同等品質のジェネリック家電を採用したりすることで、仕上げ・設備部分の費用は抑えやすくなります。

プロパンガスを採用する
都市ガスではなくプロパンガスを採用するのも有効な方法です。プロパンガス会社は都市ガスとの競争上、エアコンを無料で設置してくれるケースが多く、戸数分必要になる設備費用を抑えられます。
- 複数社比較を面倒がらない方
最低でも2〜3社の見積もりを比較することで数百万円単位の差が出ることもある - 設備・仕上げにこだわりが少ない方
有名メーカーへのこだわりがなければ費用を抑えやすい - 設計施工一括方式の会社を検討できる方
設計料の差だけでも数十万〜百万円単位の差になる
※宅地建物取引士・早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了・年間30回以上の講演実績
「建築費を抑える工夫は、躯体以外の『仕上げ・設備・設計料』に集中させるのが基本です。
躯体を安くしすぎると将来の修繕費がかさみ、結果的に総コストが増えることもあります。
削っていい部分とダメな部分を、見積もり段階で建築会社に確認してください。」

まとめ|今すぐできる3つの確認アクション
アパート建築費は資材・人件費・為替など複数の要因が重なって高騰しており、短期間で劇的に下がる見込みは薄いのが実情です。だからこそ、今の水準で収支が成立するかどうかを早めに確認することが、後悔しない判断につながります。
- 建築費シミュレーターで概算を確認する
自分の土地の条件で、現在の坪単価水準ではどの程度の建築費になるかを把握する - 複数社に見積もりを請求する
最低2〜3社を比較し、坪単価・設計料の妥当性を確認する - 専門家に土地の収支を相談する
建築費だけでなく、家賃相場・金利まで含めた収支で判断する
建築費が気になって一歩を踏み出せずにいるなら、まずは自分の土地でどこまでの収支が見込めるかを知ることから始めてみてください。